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売買事例 0807-B-0073掲載日:2008年7月
親子の利益相反行為と特別代理人の選任
夫の死亡により、その妻(親権者)と子供(未成年者)が共同相続した不動産を売却するが、家庭裁判所が選任した特別代理人が契約日に出席できない。ついては、その特別代理人に他の代理人を選任してもらい、その者に未成年者の代理行為をさせても問題ないか。
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当社は媒介業者であるが、相続物件の売買の媒介をすることになった。
その物件は、所有者である夫が死亡し、その妻と生後間もない子供が相続(持分2分の1ずつの共同相続)したことになっているが、まだ相続の登記はなされていない。
妻は、その子供が相続した持分も含めて物件を売却し、将来の生活費や子供の養育費に充てるつもりで、家庭裁判所から特別代理人の選任を受けたようであるが、肝心の特別代理人が契約日に出席できない。 |
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このような場合、特別代理人に任意代理人を選任してもらい、その者に未成年者の代理人として売買契約を締結してもらうことが考えられるが、そのような方法をとっても問題ないか。 |
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回答 |
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1. |
結論 |
問題がある。というより、そもそも本件の売買契約においては、特別代理人が代理をする必要はなく、親権者である母親が子供(未成年者)の代理をすればよい。なぜならば、本件の売買契約は利益相反行為にはならず、本件の特別代理人も、母親(親権者)と子供(未成年者)との遺産分割協議のための特別代理人だからである。 |
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2. |
理由 |
(1) |
親権を行う父または母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない(民法第826条第1項)。 この「親権を行う者」は、本件の場合は母親であるから、その者から家庭裁判所に特別代理人の選任を請求することになる(後記【参考様式】参照)。 |
(2) |
ところで、この「親権を行う父または母とその子との利益が相反する行為」というのは、判例によれば、利益相反かどうかは、取引の相手方にわかるものでなければならないので、行為の動機を問わず、行為の外形によって判断される。その結果、行為の動機が子を害するものであっても、外形的に現れていなければ、利益相反行為には該当しない、とされている(最判昭和42年4月18日民集21巻3号671頁)。したがって、本件のように、子の所有財産(持分)を親が代理して売るのは、(外形上は)売主はあくまでも子であるから、(動機上は)その代金を親がみずからの借金の返済に充てるためであったとしても、利益相反行為にはならないということになる。 |
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「利益相反行為」の意味については、【質問】に象徴されるように、意外にも誤解されている。利益相反行為になるかどうかの判断基準については、行為の外形から客観的に利益が相反しているか否かを判断すべきとする見解(「外形標準説」という。)が通説・判例であり、この考え方によれば親権者の主観的意図やその効果を具体的に判断すべきではないということになる。そして、たとえば、子の財産を親権者に移転する場合、親権者が自分の債務の担保として、子を代理して子の不動産に抵当権を設定する場合などのように、親権者に利益で、子が不利益を受ける場合は明らかに利益相反行為に当たる。しかし、親権者が子と共同相続した不動産を売却する場合に、子の持分を代理人として売却することは、そもそも利益相反行為ではない。子の財産を親権者が買う場合と異なり、第三者に売却する場合に一方の当事者の一部の者の代理人になることは、いわば第三者に対する味方側になることであって利益相反行為にはならず、したがって、特別代理人の選任も必要がない。このことが、案外誤解されている。 |