位置指定道路に関しては、幅員の復元を求められたり、掘削同意を得ることが困難であったり、通行権に問題が生じたりすることがあり、トラブルが発生しがちで、当センターへの相談も非常に多くなっています。
買主甲が居宅の再建築(建替え)を行うために建築確認申請をしたところ、敷地接面道路の位置指定線が、当該物件の敷地まで届いていないことが判明した。甲は媒介業者乙に対して、物件の買取りと損害賠償を請求した。
① 乙は媒介にあたり道路位置指定図を入手していたが、現地との照合を怠っていた。
② 甲は再建築に際し、役所の建築指導課より「建築確認取得の際はA〜G(図参照)から『通路使用承諾書』を取得するように」との指導をされ、7年前の物件購入時に乙が行った道路に関する説明に誤りがあることに気付き、乙に対して上記の請求をした。
乙は即刻非を認め、位置指定線の延長により甲が建物を建築できるようにするため、役所の指導に基づき、ア)私道の舗装、イ)L字溝の設置、ウ)位置指定線延長に関するA〜Gの合意の取得等諸手続を乙の負担で行い、解決した。
建築基準法第42 条第1 項第5 号に規定する特定行政庁が指定した道路(以下「位置指定道路」という。)に関する次の記述のうち、適切なものを一つ選びなさい。
1.右図の位置指定道路にメジャーを当てて計測したところ、幅員Wは4.0m、延長Lは30m、隅切りは1辺2mであったので、この位置指定道路には問題点がないと判断した。
2.位置指定道路が、共有私道である場合、位置指定道路の一部のアスファルト舗装を修復する行為は、共有者の一人が単独で行うことができる。
3.位置指定道路は、土地を建築物の敷地として利用するため、特定行政庁が認めた道路であり、建築物へ出入りするための通行は公道と私道の区別はなく、私道の所有者の承諾がなくても、歩行、自転車による通行および車による通行を制限されることはない。
4.位置指定道路について共有持分を有する地番1-2の所有者が、下図のとおり敷地を地番1-2-1と地番1-2-2に分割する場合、位置指定道路の埋設管(上・下水道、ガス管)から下図の点線で示した地番1-2-2への引込みが当然に可能である。
●問題のねらい
位置指定道路の調査、持分と利用権限の理解を深めます。
答え:2
1.不適切
位置指定道路の調査は、市役所建築指導課等で、位置指定図または位置指定申請図面の写しを入手し、位置指定図等に示された幅員、延長、隅切りと現地の状況を照合する必要があります。特定行政庁が認めた幅員は必ずしも4.0m とは限らず4.5m、5.0mの幅員指定もあります。また、位置指定道路の延長は、右図のとおり、現況の道路状の途中までの場合があります。その先の網掛け部分は、単なる通路状の土地であり、奥の土地(1-1、1-3)は、位置指定道路に接道しているとは断定できません。
2.適切
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます(民法第249条)。また、共有物の現状を維持する行為(舗装の修復等)は、各共有者が単独で行うことは可能です(同法第252条ただし書)。なお、実務上は、他の共有者にあらかじめ工事内容等を通知することにより、無用の混乱を避けるべきです。
3.不適切
道路位置指定は、道路(私道)を建築基準法上の道路とするための行政処分であり、その効力として、道路内に建築物を建築したり、その道路を変更または廃止することが制限されます(建築基準法第44条、第45条)。したがって、一般の第三者もその私道を通行するのに障害がなくなりますが、これは道路位置指定という行政処分によって受ける公法上の反射的利益であって、道路位置指定によって、一般の公道と同等の通行が認められるわけではありません。当該位置指定道路の所有者が通行を妨害することが、その態様いかんによって、権利濫用、不法行為となり得ますが、通行についてその所有者の了解を取ることが、紛争の未然防止にとって必要です。
4.不適切
位置指定道路に埋設された上水道、下水道、ガス管は、それぞれの事業者側の配管である場合と、土地所有者の私設管の場合があります。いずれであっても配管の容量が新たな引込み管による消費量等をカバーできるか否か、私設管の場合は、その所有者の同意が必要です。
○位置指定道路は、築造当時から図面と異なる場合があります。
○外観上は位置指定道路に接道しているように見えても、図面上は接道していない場合があります。(図面が優先されます)
○図面どおり築造されていても、私道の気楽さから、時の経過と共に、勝手気ままに利用され、図面とは似ても似つかなくなっていることがあります。
○必ず図面と現地を照合します。…メジャー等を使用し、下記図面と現地を照合してください。
・位置指定図、または位置指定申請図面の閲覧、コピー
・位置指定道路の認定日、認定番号
・現地確認:道路幅員、全長の確認
*図面にある境界ポイントは現地に存在しているか?
*そのポイント間の長さは図面通りか?
○対象となる私道が所在する役所の建築を担当する部署(建築指導課・建築調査係・他)へ行き、位置指定図を閲覧、コピーすることができます。 位置指定図、あるいは位置指定申請図(申請当時のもの)には、その位置指定された私道の長さや幅員、その他が詳しく記載されています。
参考
※法施行前に指定された建築線について
建築基準法の前身である「市街地建築物法」に基づいて指定された建築線(指定建築線)で、その建築線間の距離が4m以上のものは、現在も位置指定道路と見なされます。
区内の一部の地域には通称「告示建築線」と呼ばれる指定建築線がありますが、これは当時の行政官庁が市街地所形成上必要と認めたところに一括で指定したものです。告示建築線についても、その建築線間の距離が4m 以上のものは、その建築線の位置に道路位置指定がされたものとみなされます。(建築基準法附則第5項)。