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賃貸事例 1302-R-0114掲載日:2013年2月
床暖房付中古住宅の賃貸借において、付帯設備表の床暖房の「機能保証」欄を空欄にしたまま媒介した場合の将来の修理費用の負担
当社は、床暖房のある築15年の戸建住宅の賃貸借の媒介をしたが、その際、付帯設備表の中の床暖房は「有」としたが、「機能保証」の欄は空欄のままにしてしまった。そのため、入居後貸主と借主との間で、将来床暖房が故障した場合の補修問題についてトラブルになった。ついては、①将来の故障については、誰が修理費用を負担することになるか。②床暖房の耐用年数が過ぎ、経年劣化で故障した場合には、修理費用は誰が負担することになるか。③トラブルの原因は媒介業者の対応ミスにあるが、媒介業者も費用負担をすることになるか。媒介業者としては、どのように対応したらよいか。
事実関係
当社は賃貸の媒介業者であるが、先日築後15年が経過した戸建住宅の賃貸借の媒介をした。その際当社は、付帯設備表に記載する設備のうち、「床暖房」について設備は「有」としたが、「機能保証」の欄を空欄のままにしてしまった。そのため、入居後になって貸主と借主との間で、将来床暖房が故障した場合の補修問題についてトラブルになった。それは、将来発生する設備の故障ということになると、設備の一層の老朽化により、その費用負担が高額になる(設備の更新が必要になる場合がある)ために、貸主がその「機能保証」をすることを拒んだからである。
質問
- このような場合、付帯設備表の「機能保証」欄をそのまま空欄にしておいたら、将来発生する床暖房の故障に対し、その修理費用は誰が負担することになるか。
- 本件のトラブルの原因は、当社が付帯設備表の床暖房について「機能保証」をするかどうかを貸主に確認し、その有無を付帯設備表に記載しておかなかったために生じたものであるが、本件のトラブルの話し合いの中で、貸主が機能保証をしないと主張した場合には、当社がその保証(つまり、「費用負担」)をすることになるか。当社としては、どのように対応したらよいか。
回答
1. | 結 論 | |
⑴ | 質問1.について ― 故障の発生等に関し、借主に使用上の故意・過失等がない限り、原則として貸主が負担することになると解される(民法第606条)。 | |
⑵ | 質問2.について ― 結論⑴で述べたとおり、貸主にはその将来の故障に対する修繕義務があることは否定できないが、本件のトラブルの原因をつくったのは他ならぬ貴社であるから、当事者に多少の過失があるにしても、その将来の修理費用について、貴社も応分の負担をすべきことも否定できないであろう。 | |
2. | 理 由 | |
⑴ | ~⑵について 本件のトラブルの原因は、確かに媒介業者が床暖房の将来の修理について貸主の意向を確認し、その結果を付帯設備表に記載しておかなかったことにあるのであるが、いずれにしても付帯設備表には機能保証「無し」とは書かれていないので、貸主は借主に対し床暖房設備付の物件を貸したことには変わりなく、結論で述べたとおり、将来の設備の修理については貸主が行うべきである(民法第606条)。しかしその場合に、本件のトラブルの原因をつくった媒介業者も媒介業者としての注意義務を果していないので、応分の負担をすべきことは、結論で述べたとおりである。 |
参照条文
○ | 民法第606条(賃貸物の修繕等) | |
① | 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。 | |
② | (略) |
監修者のコメント
本ケースでは、付帯設備表に「床暖房」(有り)の記載があり、「機能保証」について(なし)との記載はなかった、という事実が重要と考える。そして、床暖房があるという物件の賃貸借において床暖房が故障した場合は、反対の特約がない限り、賃貸人が修繕義務を負っているという前提で解釈しなければならない。
本ケースで賃貸人が媒介業者に「床暖房については機能保証しない」旨を告げていたという場合は、媒介業者の説明義務違反といえるが、そうでなければ媒介業者の義務違反は、かなり軽微であろう。賃借人が床暖房を重視して借りたというのであれば、機能保証欄の空白について賃借人にも落度があるということができよう。