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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
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賃貸事例 1302-R-0112
借地人の倒産による借地上の建物の競売と借地権等の行方

 借地人(会社)の経営がおもわしくなく、賃料の不払いが続いているため、借地上の建物が競売に付されるのではないかと心配である。
 このような場合、借地上の建物が競売になったら、土地の権利や借地権はどうなるのか。地主は、この際本件の土地を他人に貸したくないと言っているが、そのようなことは可能なのか。

事実関係

 当社は賃貸の媒介業者兼管理業者であるが、当社が管理をしている物件の中に、法人に貸している土地がある。しかしその法人(会社)は、経営がおもわしくなく、賃料の不払いが続いていることからも、このままではその法人(会社)が所有している借地上の建物(ビル)が競売に付されてしまうのではないかと心配である。

質問

  •  このような場合、借地上の建物が競売に付されたら、土地の権利や借地権はどうなってしまうのか。
  •  地主(借地権設定者)としては、この際、その土地については他人に貸したくないと言っているが、そのようなことは可能なのか。

回答

1.   結 論
 質問1.について ― 土地の権利すなわち所有権については変らないが、借地権については、競売によって借地権付の建物所有権が競落人に移転することになるので(後記【参照判例】参照)、借地権の譲渡がなされ、借地権者が変わることになる。
 ただ、この借地権の譲渡には地主(借地権設定者)の承諾が必要なので(民法第612条)、もし地主が承諾をしないということになれば、競落人は、借地借家法第20条の規定に基づいて、裁判所に地主の承諾に代わる許可の裁判を求めることになろう。もちろん、地主があらかじめ担保権者に対し、その旨の「承諾書」を提出している場合は別である。
 質問2.について ― 可能である。なぜならば、地主が、競売の開始決定がなされる前に、借地人の賃料の不払い等を理由に借地契約を解除することができれば、競売に際し、土地と建物が切り離されることになるので、その結果、土地は売却されず、地主に戻ることになるからである。ただし、この場合は、借地権の付いていない建物だけを競落する者が現れない可能性が高いことから、土地上に建物が残置される可能性が高く、また逆に、借地契約が解除されているにもかかわらず、何かの手違いで、借地権付の建物として競売の開始決定がなされた場合には、地主(借地権設定者)の方から執行異議の申立(民事執行法第182条)を行う必要が出てくるなど、面倒な問題が生じることは覚悟しておく必要があろう。ただ、その場合においても、本件の場合は賃料の不払いによる契約解除であるから、借地人からの建物の買取り請求に対しては、拒否することは可能である(最判昭和33年4月8日民集12巻5号689頁)。とは言っても、現実に土地上に建物(ビル)が残置された場合には、借地人(会社)が倒産している以上、最終的には、地主がみずからの費用で建物を撤去せざるを得なくなるので、その前に借地人(会社)との間で話し合いを行い、建物をそれなりの価額で買い取った上で解体するということが適切と思われる。
 なお、もう1つの方法としては、借地人が借地権付の建物を第三者に譲渡するとか、間もなく競売に付される、あるいはすでに競売に付されてしまったというような場合に、地主(借地権設定者)の方から、その借地権付建物の譲渡を受ける旨の申立てを裁判所にすることにより、本件の土地を第三者に貸さないようにすることも可能である(借地借家法第19条第3項、第20条第2項)。

参照条文

民法第612条(借地権の譲渡及び転貸の制限)
 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
借地借家法第19条(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
、② (略)
 第1項の申立てあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。
借地借家法第20条(建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可)
 第三者が賃借権の目的である土地の上の建物を競売又は公売により取得した場合において、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡を承諾しないときは、裁判所は、その第三者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、借地条件を変更し、又は財産上の給付を命ずることができる。
 前条第2項から第6項までの規定は、前項の申立てがあった場合に準用する。
 第1項の申立ては、建物の代金を支払った後2月以内に限り、することができる。
 民事調停法(昭和26年法律第222号)第19条の規定は、同条に規定する期間内に第1項の申立てをした場合に準用する。
 (略)
民事執行法第182条(開始決定に対する執行異議)
 不動産競売の開始決定に対する執行異議の申立てにおいては、債務者又は不動産の所有者(不動産とみなされるものにあっては、その権利者。以下同じ。)は、担保権の不存在又は消滅を理由とすることができる。

参照判例

 最判昭和40年5月4日民集19巻4号811頁(要旨)
 建物を所有するために必要な敷地の賃借権は、右建物所有権に付随し、これと一体となって一の財産的価値を形成しているものであるから、建物に抵当権が設定されたときは敷地の賃借権も原則としてその効力の及ぶ目的物に包含されるものと解すべきである。

監修者のコメント

 借地上の建物が競売に付され、建物と賃借権を競落人が取得した場合に、土地所有者(賃借権設定者)がその譲渡を承諾しないときは、回答のとおり、裁判所の地主の承諾に代わる許可の制度があるが、その申立は競落代金を支払ったのち2か月以内にしなければならず、しばしばこの期限を徒過してしまうケースがある。
 また、この許可申立があった場合、地主が自分が建物と賃借権の譲渡を受けたいというのであれば、その旨の申立をすることができることとなっており(借地借家法第19条第3項、第20条第2項、旧借地法第9条の2第3項、第9条の3第2項)、これを地主の「介入権」といい、これが認められることもある。質問において、地主が他人に貸したくないということであれば、この方法もある。

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