不動産相談

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

賃貸事例 1210-R-0108
火災による建物焼失後の借地における駐車場経営と借地権の存否

 借地人が、借地上の建物が火災で焼失したあと、土地を駐車場にしたまま、建物を再築しないでいたら、借地権は消滅するか。借地人の駐車場経営は、契約の解除原因になるか。このような場合、土地の管理業者としては、地主に対しどのようなアドバイスをするのが適当か。

事実関係

 当社は媒介業者兼管理業者であるが、このたびある地主から、「市街地にある土地約60㎡を借地人に貸しているが、その借地人が数年前に借地上の建物(店舗)を焼失したため、それ以来、その土地を駐車場として他人に貸している。そのため、借地人には早く建物を建てるように言っているのだが、「資金がない」の一点張りで(ただし、保険は下りている)、なかなか建物を建てようとしないので困っている。」との相談を受けた。
 そこで、当社から借地人に建物を建てない本当の理由を聞いたところ、どうもホンネとしては、多大な資本を投下し、「店舗」を再築し営業を再開するよりは、「駐車場」として利益を上げていた方が楽だからだというのである。
 なお、本件の借地契約は、旧借地法時代の契約で、その「目的」は当然のことながら「建物(店舗)所有」となっており、期間は20年で、残存期間はあと5年となっている。

質問

  •  借地人がこのまま建物を建てなかったら、借地権が消滅するというようなことはないか。
  •  このような借地人の行為は、契約の解除原因になるか。
  •  当社としては、貸主(地主)に対し、どのようなアドバイスをするのが適当か。

回答

1.   結 論
 質問1.について ― 賃料が支払われている限り、原則として借地権が消滅するということはない。
 質問2.について ― 契約の解除原因になるとは考えにくい。
 質問3.について ― 借地人が、どうしても「資金」の関係で店舗の再築ができないと言うのであれば、このまま期間満了まで駐車場経営を継続させるのもやむを得ないと考えられるが、期間満了後においては、「駐車場経営」を目的とした期間20年の賃貸借契約の締結や更新はできないということを、事前に借地人に伝えておくという方向で、あらかじめ弁護士などの法律の専門家とも相談するようアドバイスするのが適当であろう。
2.   理 由
について
 土地の賃貸借契約は、貸主が借主に対し土地を使用・収益させ、それに対し借主がその対価(賃料)を貸主に支払うことを約することにより成立する契約であるから(民法第601条)、現に借主が賃料を支払っている限り、原則として借地権が消滅することはない。
 ただ、本件の土地の場合には、借地上に建物が建っていないので、第三者に対し借地権を対抗することができない(借地借家法第10条)。したがって、もし地主が本件の土地を第三者に売却してしまった場合には、借地人はその第三者に対し借地権の存在を主張することができなくなる。
について
 本件の場合は、賃貸借の目的を「建物(店舗)所有」としているので、借地人がこのまま「駐車場経営」を続けるということになると、一種の契約違反(用途違反)をしていることになる。
 しかし、そのような状況に陥った原因が、火災による建物の焼失ということにあるので、いかに火災保険金が下りているといっても、ただちに営業を再開することができるかどうかはかなり難しい問題がある。したがって、借地人が当分の間は「駐車場経営」をしていたとしても、それが契約の当事者間の信頼関係の破壊につながるとは考えられないので、本件の契約期間内においては賃貸借契約はそのまま存続すると考えられる。
について
 契約期間の満了後においても、「建物所有」を目的にしながら、「駐車場経営」が許されるかどうかについては、「借地権」という権利の性質上難しいと考えられるし、また、貸主からの更新拒絶という問題もあるので、期間満了後の問題については、弁護士などの法律の専門家に相談してもらうことが適当であろう。

参照条文

民法第601条(賃貸借)
 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
借地借家法第10条(借地権の対抗力等)
 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
 前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から2年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。
、④ (略)

監修者のコメント

 建物所有目的の土地賃貸借契約である以上、建物を建てないで使用することは、契約違反である。ただ、契約違反だとしても借地借家関係について確立した判例理論である「信頼関係破壊」の程度に至っていない限り、解除は認められない。
 本ケースでも過去の諸事情を検討し、当事者間の信頼関係が破壊されているといえるか判断しなければならない。
 いずれにせよ、契約期間中に建物が焼失(滅失)しても、借地権は消滅しないが、残存期間はあと5年というのであり、期間満了時においても現状どおりであれば、地主からの更新拒絶に「正当の事由」が認められる可能性が高い。

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