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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

売買事例 1208-B-0157
瑕疵担保責任期間を短期間にした場合の瑕疵発見に伴う期間延長の申入れの可否

 当社はビルを解体したあとの土地の売買の媒介をしたが、その際売主の希望により、瑕疵担保責任の期間を2か月と定めた。ところが、その2か月が経過する前に買主が地中埋設物の調査をしたところ、従前のビルの基礎周辺に多数のコンクリート塊が発見されたため、買主は他の場所にもコンクリート塊が存在する可能性が高いということで、売主に対し瑕疵担保責任の期間を1か月延長するように申し入れたが、売主が拒否した。
 このような場合の買主の期間延長の申入れは正しいか。媒介業者としては、どのように対応したらよいか。

事実関係

 当社は媒介業者であるが、ある企業が本社ビルを解体したあとの土地を売却したいということで、当社に売却依頼があった。そこで当社は、以前からビル用地を探していた同業者がいたので、その業者に客付けをしてもらい商談に入った。商談は順調に進み、売買契約が成立したが、瑕疵担保責任の期間については、売主の希望で引渡し後2か月間ということになった。そのため、買主としては新たなビルの設計は到底間に合わないので、とりあえずビルの配置計画だけを決めたうえで、2か月が経過する前に従前のビルの基礎があったと思われる部分の土地を掘削し、地中埋設物についての調査をした。ところが、その周辺から従前のビルを解体した際に残置されたと思われるコンクリート塊が多数発見された。
 そこで当社は、その撤去費用を売主に負担してもらうことで話をつけたが、その合意に至った時期が瑕疵担保責任の期間が切れる直前だったため、買主から「調査はまだ終っていないので、瑕疵担保責任の期間をあと1か月延長してもらいたい」という申し入れがなされた。しかし、これに対し売主は、「瑕疵担保責任の期間は契約で2か月と定められている。延長はできない」と回答した。そのため、すでに発見されているコンクリート塊の撤去費用についての合意も書面化できずに終ってしまった。

質問

  •  買主が1か月の期間延長を申し入れた理由は、「基礎の周辺だけでもこれだけのコンクリート塊が残っている以上、他の場所にもコンクリート塊が残っている可能性が高い」というものであるが、この買主の期間延長の申入れは認められるか。
  •  このように売主・買主双方の主張が異なる場合、媒介業者としてはどのように対応したらよいか。

回答

1.   結 論
   質問1.について ― 認められない。ただ、本件の場合に、たとえば他の場所にもコンクリート塊が残置されているという解体業者の証言があり、そのことについて売主が知っているというような場合には、売主に対し、瑕疵担保責任とは別の責任追及(説明義務違反=債務不履行等)が可能であろう。
   質問2.について ― 瑕疵担保責任の問題は、本来売主の問題なので、貴社(媒介業者)が今回のコンクリート塊の存在について何らかの事情を知っているのでない限り、当事者間で解決すべき問題である。したがって、貴社としては、その後の処理については弁護士などの法律の専門家に入ってもらい、できれば話し合いで解決するようアドバイスする程度でよいと考える。
2.   理 由
    ⑴⑵について
 本件の売買は消費者契約ではないので、2か月間という瑕疵担保責任の期間の特約は有効と解される。したがって、買主はその2か月の間に瑕疵を発見し、売主に対しその損害賠償等の請求をすることが必要となる(後記【参照判例】参照)。
 ただ、本件のように、ビルを解体したあとの土地の取引で、瑕疵担保責任の期間を比較的短期に定めた場合には、往々にして今回のような問題が起り得るので、売買の目的物の一部に瑕疵が発見された場合に、他の部分にも同様の瑕疵が存在し得ると考えてもおかしくはない。しかし、この瑕疵担保責任の問題は、もともと当事者間の問題であるから、媒介業者としては、上記【回答】1.⑵にあるように、その処理を弁護士などの法律の専門家に委ねるというのが適当であろうし、もし上記【回答】1.⑴で述べたような事実があるのであれば、売主の瑕疵担保責任の問題とは別の責任追及も可能なので、それらの問題も含めて弁護士等の法律の専門家に委ねるというのが正しい対応であろう(民法第572条)。

参照判例

最判平成4年10月20日民集46巻7号1129頁
     本条3項に定める1年の期間制限は除斥期間であり、民法570条による瑕疵担保責任としての損害賠償請求権を保存するには、裁判上で権利行使する必要はないが、少なくとも、売主に対し、具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の算定の根拠を示すなどして、売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要がある。

監修者のコメント

 本ケースで、売主が多数の地中埋設物の存在を「知っていた」とか「容易に知り得た」ときは、売主の説明義務違反(債務不履行)の問題になり得る。しかし、瑕疵担保責任の問題として、その期間の特約を契約締結後に変更したい、すなわち期間を延長したいと買主が申し入れることは認められないと解すべきである。売買に際して当事者の権利がどうなるかは、売買代金決定の大きな要素であるが、売主の無過失責任である瑕疵担保責任がいつまで存続するかは、売主にとって重大な事柄である。それゆえ2か月と特約し、買主もそれに合意したにもかかわらず、その期間が経過するころ1か月延長してくれということを認めるのであれば、何のために期間を限定したのか分からなくなる。もし、買主が「そのような瑕疵の存在を知らなかったから」というのであれば、そもそも瑕疵担保責任は「隠れた」瑕疵のみが問題となり、買主が知っていた瑕疵については売主の責任が生じないのであるから、瑕疵担保責任をそもそも論ずる余地がなくなってしまう。
 瑕疵担保責任の特約期間の経過によって、売主を全面的に免責させることが信義則あるいは正義公平の観点から認められるべきでないケースにおいては、たとえば信義則上の説明義務違反とか詐欺による意思表示の取消し、あるいは錯誤無効などの他の法律構成で気の毒な買主を救済すべきである。

より詳しく学ぶための関連リンク

“スコア”テキスト丸ごと公開! 「瑕疵担保責任(瑕疵担保責任の期間と内容)」

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