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賃貸事例 1208-R-0104掲載日:2012年8月
オフィスビルの賃貸借における一部解約(一部返室)の可否
オフィスビルの賃貸借で、4フロアを一括借りしている借主が、1フロアだけを返室(一部解約)したいと申し入れたが、貸主が拒否した。このような貸主の主張は正しいか。このような場合、賃貸管理業者としてはどのように対応すべきか。
事実関係
当社は賃貸の媒介業者兼管理業者であるが、当社が管理しているオフィスビルの賃貸借について、借主から一部解約の申入れがなされた。具体的には、そのビルの3階から6階までの4フロアを借りている会社が、1フロアだけを解約したいというのである。ところが、貸主は1フロアだけの解約は認めないと言っている。
なお、本件の賃貸借契約書には、賃貸借物件の表示として、各フロア200㎡の貸室が4フロアまとめて表示され、その4フロアをまとめ「本物件」と称し、そのうえで解約申入れ条項において、「借主は、本物件の賃貸借契約を解約する場合には、6か月前までに貸主に申し出ることにより契約を終了させることができる。」と定められている。つまり貸主は、解約ができるのは「本物件」すなわち「4フロア」であるから、1フロアだけの解約はできないというのである。
質問
- このような場合、賃貸管理業者としてはどのように対応したらよいか。そもそも貸主が主張している「1フロアだけの解約は認めない」という主張は正しいか。
回答
1. | 結 論 | |
法的には正しい。しかし、それでは借主に事業の縮小などのやむを得ない事情がある場合にも、全社一括移転という多大な負担を強いることになるので、できることなら、管理業者としては、貸主に対し、借主からは約定どおりの6か月前の一部解約(変更契約)の申入れがなされたということで、残りの3フロアについての賃貸借の継続を説得すべきであろう。 | ||
なお、その場合、4フロア一括借上げの場合の賃料と、3フロア借上げの場合の賃料とでは賃料の単価やその他の条件に差異がでることが考えられるので、そのような場合には、それらの点についての事前協議の場を設け、その事前協議の場で新たな賃貸借条件について話し合ってもらうのが適切な対応であろう。 | ||
2. | 理 由 | |
オフィスビルの賃貸借契約においては、そのビルが余程の特殊なものでない限り、1フロアごとにエレベーターが止まる構造になっているので、その1フロアが独立した賃貸借の対象になる。にもかかわらず、本件の場合は、あえて貸主が、4フロアを一括で貸したのだから、4フロア一括で返却しない限り、解約の申入れは応じられないというのは、法的には当然のことである。しかし、法的にはそうであっても、本件のような業務用の賃貸ビルの場合には、テナントの事情により、事業の拡大・縮小があり得るので、管理業者としては、できることなら結論で述べたような方向で貸主を説得し、円満解決を図るのが適切な対応といえるであろう。 |
参照条文
○ | 民法第1条(基本原則) | |
① | (略) | |
② | 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。 | |
③ | 権利の濫用は、これを許さない。 | |
○ | 民法第415条(債務不履行による損害賠償) | |
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。 |
監修者のコメント
本ケースの「一部解約」というのは、賃貸借契約の目的物を4フロアから3フロアにするものであるから、契約内容の変更である。契約が双方合意の下に締結された以上、その内容の変更はあくまでも双方の協議で決まることであって、1フロア単位の一部解約権が借主にある旨の特約がない限り、一方的な意思表示ではできないと解される。
したがって、賃貸条件の見直し、空室となる部分の後継テナント等の問題を含め、あくまでも話合いによる円満解決を目指すのが適切である。