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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
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賃貸事例 1112-R-0097
更新契約書のない更新と借家権相続後の親族間の無断転貸の成否

 昭和40年からの貸家の賃貸借で、その間に更新の契約書が取り交わされていない賃貸借は、法定更新されてきたものとみるべきか。その後契約の当事者はいずれも死亡したが、貸家には借主の息子が相続人として一旦入居し、その後に息子の名義のまま娘夫婦が入居している。これは無断転貸になるか。

事実関係

 当社は昭和40年から賃貸している貸家の相続人から、賃貸物件の管理を依頼されたが、よく聞いてみると、今までに契約の当事者が更新の契約書を取り交わした形跡はなく、昭和40年当時の賃貸借契約書があるだけで、その当事者はいずれも死亡したという。その後借主側は、その貸家には息子が相続人として母親と一緒に住んでいたが、そのうちに息子は自分で家を建ててそこに住み、貸家には娘夫婦が母親と一緒に住んでいるという。
 なお、その入居者の変更については、息子からは連絡があったが、娘からは何の連絡もなく、毎月の賃料も息子名義のままで所定の口座に振り込まれているとのことであり、その金額も生前に何回か改定が行われたらしく、それなりに妥当な額になっている。

質問

1.  このような更新の契約書がない賃貸借の場合、更新については法定更新されてきたものとみるべきか、それとも合意更新されてきたとみるべきか。
2.  現在貸家には娘夫婦が住んでいるが、これは貸主にとっては無断転貸ではないかと思うが、どうか。もしそうであれば、契約の解除ということも考えなければならないが、その点はどうか。
3.  以上の問題点を踏まえ、賃貸管理業者としては、この現状に対しどのように対応したらよいか。

回答

1. 結論
   質問1.について ― 本件の場合は、法定更新されてきたものとみるべきであろう。
   質問2.について ― 本件の【事実関係】をみる限り、無断転貸であるとは断定できない。したがって、賃貸借契約の解除という問題は、もう少し事実関係を把握したうえで、法律の専門家に相談すべき問題であろう。
   質問3.について ― 貸主側に引き続き貸家の賃貸を継続する意思があるのであれば、この際貸主に対し、娘夫婦との賃貸借契約に切り替えるよう進言するのが適当であろう。
2. 理由
 ⑴について
     本件の賃貸借契約において更新の契約書がない理由として考えられることは、1つは昭和40年代以前の賃貸借契約においては、現代のような更新のための契約書を取り交わすという慣行があまりなかったことと、もう1つは、当時は賃料を大家(貸主)が直接集金するというケースが多かったために、賃料についての合意(据え置き、値上げ等)がなされれば、それだけで賃貸借が継続されていたからであろう。
 しかし、それらの賃料についての合意は、現在の借主が借家権を相続する前のことであって、相続後においてはそのような事実は見受けられないので、少なくとも現在の賃貸借は、相続前の賃貸借が法定更新されて今日に至っていると考えるべきであろう。
 ⑵について
     本件の貸家に娘夫婦が入居しているという事実だけをみると、賃借人である息子が娘夫婦に転貸しているようにも見えるが、その入居の前には、賃借人である息子から貸家の相続人に入居者変更の通知をし、貸家の相続人もそのことについて異議を申し出た様子もないので、むしろ貸家の相続人にとっては賃借人が変わらなければよいという同意を与えたようにも見える。したがって、本件の入居者の変更は、同居している母親(前借主の妻)の面倒をみる者が息子から娘に変わっただけであるともいえるし、無断入居でもないので、貸家の相続人としては、賃貸借契約の借主に変更がなければ、転貸であるか否かにかかわらず、民法第612条を適用する意思はなかったのではないかと考えられる。
 しかし、だからと言っていつまでもこのような変則的な入居状態を続けてよいわけはなく、この際娘夫婦が同意するのであれば、貸主に対し貴社からも娘夫婦との賃貸借契約に切り替えるよう進言すべきであろう。
 なお、無断転貸により賃貸借契約が解除できるかどうかについては、判例は、単に転貸が無断でなされただけでは足りず、その無断転貸が貸主にとって「背信性」の強いものであることが必要であるとしており、本件のような親族間の転貸で、営利性のないものについては「背信性」が弱く、契約の解除は認められないとしている(最判昭和29年10月7日民集8巻10号1816頁)。
 ⑶について
     (略)

参照条文

借地借家法第26条(建物賃貸借契約の更新等)
   建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
  ~③(略)
民法第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
   賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
   賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

監修者のコメント

 建物の賃貸借契約について期間満了による更新の契約書が作成されていない場合は、合意更新の立証(証明)がなされない限り、法定更新がなされたと推定されると考えられる。もっとも、法定更新と合意更新とでは、どう違うかというと法定更新のときは、借地借家法第26条第1項ただし書にあるとおり、更新後は契約期間の定めのないものになる。そして、契約期間の定めのあるものと、ないものとを比べた場合、どちらに不利か、あるいは有利かという差異はない。期間の定めのない契約のときは、当然のことながら「期間満了」とか「更新拒絶」という観念は登場せず、貸主、借主いずれからでも、いつでも解約申入れができるが、貸主からの解約申入れは「正当の事由」が必要であり(借地借家法第28条)、結局、賃借人に不利となるわけではない。
 なお、無断転貸の問題は事案の内容からみて、娘が旧借家人の相続人である以上、無断転貸に当たらない可能性が高い。また仮にそれに当たったとしても、貸主の「黙示の承認」が推定され、またそれが否定されても、当事者間の信頼関係の破壊とまではいえないとして、契約解除は認められない可能性が高い。

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