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売買事例 1110-B-0141掲載日:2011年10月
他の業者にも委託可とする業者間代理委託契約の可否
宅建業者が自社物件を売却するために、他の宅建業者数社に販売代理を委託するが、その場合、一般媒介契約約款と同じ内容の条件で、販売代理委託契約を締結することができるか。そもそも、宅建業法第34条の3の規定は、宅建業者間の代理契約の場合も適用があるのか。
事実関係
当社(宅建業者)は市内に散在している物件をいくつか所有しているが、このたびそれらの物件を売却するのに、何社かの宅建業者に販売代理を委託したい。
ついては、当社もみずから販売するので、媒介契約における一般媒介契約約款の内容と同じような条件で販売代理委託契約を締結したいと考えている。
質問
- 当社は、国土交通省作成の標準一般媒介契約約款の内容と同じ条件(後記【参照資料】参照)で、他の宅建業者と販売代理委託契約書を締結することができるか。
- 宅建業法第34条の3には、「前条(第34条の2=媒介契約)の規定は、宅建業者に代理を依頼する契約について準用する。」と定められているが、この第34条の3の規定は、本件のように宅建業者が他の宅建業者に代理を依頼する場合にも適用されるということか。それは、なぜか。
回答
⑴ | 質問1.について ― 法的には可能であるが、数社に販売代理を委託した場合には、それぞれに代理権を与えているだけに、売買契約の締結順位などの問題で、トラブルが生じることも予想される。したがって、可能であれば、販売代理を委託する業者を1~2社程度に絞り、貴社との間で相互に連絡をとり合うシステムをとるなどして、顧客情報についての交通整理を行うとともに、取引条件等についての公正・公平な業務の遂行に努めることが重要である。その場合、取引条件についての公正・公平を保つためには、できることなら貴社みずからも販売するという形態については、価額等についてトラブルが生ずることにもなりかねないので、再検討する余地があろう。 | |
⑵ | 質問2.について ― 宅建業法第34条の3の規定が、宅建業者が他の宅建業者に代理を依頼する場合にも適用があるということはそのとおりである。それは、この宅建業法第34条の2(媒介契約)と第34条の3(代理契約)の規定が、いずれも業者間の媒介・代理契約の場合にも適用除外とはなっていないからではあるが(同法第78条第2項)、その理由は、業者間の媒介・代理契約であっても、その契約内容の書面化・明確化が業者間トラブルの防止のみならず、結果的には消費者保護につながることにもなるからである。 |
参照条文
○ | 宅地建物取引業法第34条の2(媒介契約) | ||
① | 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。 一~七(略) |
||
② | ~⑨(略) | ||
○ | 同法第34条の3(代理契約) | ||
① | 前条の規定は、宅地建物取引業者に宅地又は建物の売買又は交換の代理を依頼する契約について準用する。 | ||
○ | 同法第78条(適用除外) | ||
① | この法律の規定は、国及び地方公共団体には、適用しない。 | ||
② | 第33条の2及び第37条の2から第43条までの規定は、宅地建物取引業者相互間の取引については、適用しない。 |
参照資料
○ | 一般媒介契約約款の約定内容 |
監修者のコメント
現行の媒介契約制度が宅建業法に規定されたのは、昭和55年の同法改正の時であるが、その改正の検討の際、宅建業界からは、「媒介契約に関する一定の規制を設けることには賛成であるが、宅建業者が宅建業者に媒介又は代理の依頼をする場合については、プロ同士だから適用除外にされたい」との要望(意見)が出された。宅建業法の業務に関する規制の規定には、宅建取引の円滑化(トラブルの防止)を考慮したものと、純然たる消費者保護のみの規定があり、後者のものは宅建業者相互間の取引に適用する必要がないことは当然である。媒介(代理)契約の規制がどちらに属するのか、若干の議論はあったが、宅建業者が宅建業者に媒介又は代理を依頼するケースにおいても、法律関係の不明確さから紛争が多かった。そこで、宅建業者間の媒介、代理でも適用のある条文として同法第78条第2項に入れられなかったという経緯がある。質問の「宅建業者が他の宅建業者に代理を依頼する場合にも適用される」という理由は、宅建業者間でも媒介・代理契約をめぐる紛争が多かったからである。