当センターでは、不動産取引に関するご相談を
電話にて無料で受け付けています。
専用電話:03-5843-208110:00~16:00(土日祝、年末年始 除く)
相談内容:不動産取引に関する相談(消費者、不動産業者等のご相談に応じます)
<ご注意>
◎ たいへん多くの方からご相談を受け付けており、通話中の場合があります。ご了承ください。
◎ ご相談・ご質問は、簡潔にお願いします。
◎ 既に訴訟になっている事案については、原則ご相談をお受けできません。ご担当の弁護士等と協議してください。
ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。
ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。
売買事例 1108-B-0138掲載日:2011年8月
分譲マンションの競落後の滞納管理費支払後の求償と税金の清算
分譲マンションを競売で取得し、競落人が、前の所有者の滞納していた管理費等を支払った場合、その支払った分を前の所有者に求償することができるか。税金の滞納分の負担や、固定資産税の清算の問題はどうなるか。
事実関係
旧分譲マンションが競売に付された場合、そのほとんどのケースで、滞納管理費等を競落人が負担することになるが(建物の区分所有等に関する法律第8条)、そのほかにも税金の滞納問題や固定資産税の清算問題もある。
質問
- 管理費や修繕積立金の滞納額は、競落した新所有者が負担することになるのは区分所有法上明確であるが、その新所有者(競落人)が管理組合に支払った管理費等は、新所有者から前の所有者に求償することはできるのか。
- 前の所有者が滞納した税金の負担や固定資産税の清算問題はどうなるのか。
回答
1. 結論 | |||
⑴ | 質問1.について ― 通常の競売の場合には、求償することはできないと考えられる。 | ||
⑵ | 質問2.について ― 抵当権の登記が、滞納した税金の納期限に先行する通常のケースにおいては、競落人が前の所有者の滞納した税金を負担したり、前の所有者との間で固定資産税を清算するようなことはない。 | ||
2. 理由 | |||
⑴ | について | ||
競売の場合、管理費等の滞納額は、執行裁判所が「売却基準価額」(改正前の「最低売却価額」)を決めるときに、それを価額に折り込み、その分だけ価額を安くしていることも多く、新所有者(競落人)には損害が発生しないと考えられることと、競売物件に管理費等の滞納があることは、一種の「隠れた瑕疵」に準じて考えることもできるので、そうであれば、前所有者が競落人に対しその負担の責めを負わないといえるからである(民法第570条ただし書き)。 | |||
⑵ | について | ||
租税債権は、抵当権の登記の方が滞納している税金の納期限より早ければ、配当面で抵当権に劣後するので(国税徴収法第16条、地方税法第14条の10)、通常のケースにおいては、競落人が前の所有者の滞納した税金を負担したり、前の所有者との間で固定資産税の清算(分担)をすることはなく、そのような規定もない。 |
参照条文
○ | 建物の区分所有等に関する法律第8条(特定承継人の責任) | ||
前条第1項の規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。 | |||
○ | 民法第570条(売主の瑕疵担保責任) | ||
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定(地上権等がある場合における売主の担保責任の規定)を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。 |
監修者のコメント
競売の場合については、回答のとおりであるが、通常の売買の場合は、理論的には求償することができる。区分所有法第8条は、「区分所有者の特定承継人に対しても」という文言どおり、前所有者の債務を免責させる趣旨ではないからである。もっとも中古マンションの仲介に当たっては、滞納管理費等の存在、額を媒介に当たって調査・説明しているが、それを了解して買った者は、売主に請求すれば素直に支払ってもらえると考えないほうがよい。素直に支払ってくれるであろう人は、ふつう滞納などしないからである。