不動産相談

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

賃貸事例 1108-R-0093
賃料の差押えを受けた借主の対応に関する管理業者の予備知識

 当社が管理をしている物件について、第三者から賃料の差し押えがなされた。このような場合の借主に対する対応など、管理業者として知っておくべきことはどのようなことか。

事実関係

 当社は賃貸借の媒介と賃貸物件の管理をしている宅建業者であるが、管理用物件の中に賃料の差し押えがなされたものがある。
 このような場合に、借主に対しどのように対応したらよいかなど、管理業者として知っておくべきことがよくわからない。

質問

  •  賃料の差押えというのは、裁判所が、借主に対し、その支払う賃料を差し押えるということか。
  •  賃料は、すでに発生している賃料のほかに、将来の賃料も差押えの対象になるのか。
  •  借主は、差し押えられた賃料をどのようにしたらよいのか。
  •  敷金の差押えというのもできるのか。
  •  借主が、差し押えを受けた賃料を支払わなかったらどうなるのか。

回答

   質問1.について ― そのとおりである。ただし、裁判所が差し押えるといっても、差押えの申立てをしたのは貸主の債権者であって、その債権者が貸主に対し有している債権に基づいて、借主が貸主に対し支払うべき賃料、言い換えれば、貸主が借主に対して有する賃料債権を差し押えたということである。このような場合の貸主の債権者を「差押債権者」、借主を「第三債務者」といっている。
   質問2.について ― 対象になる。近い将来発生することが確実であると見込まれる債権については、差し押えることができるというのが通説的見解であり(中野貞一郎「民事執行法」628頁)、実務の取扱いでもある(東京地裁民事執行センター実務研究会編著「民事執行の実務」126頁)。
   質問3.について ― 裁判所から送られてくる債権差押命令書の「注意書」に記載されている内容に従い、借主が、差押債権者に直接賃料を支払うことにより、貸主に対する賃料支払義務を免れることができるので、そのように対応するのが望ましいと考えられる。
   質問4.について ― 敷金の差し押えはできない。なぜならば、敷金は貸主にとってはまだ債権として確定していない段階の「預り金」であり、借主に賃料の不払いや明渡しの原状回復等に伴う債務がなければ、貸主はその「預り金」の全額を借主に返還しなければならないものだからである。
 なお、参考までに、逆のケースであるが、借主の債権者が、敷金(借主が貸主に対して有する敷金返還請求権)を差し押えることは可能である。ただし、実際の取り立ては、敷金返還請求権が停止条件付債権と考えられている関係上、その停止条件の成就後(貸主が、借主から滞納賃料や原状回復費用などの債権を回収した後)の残余分について執行することになる(東京地裁民事執行センター実務研究会編著「民事執行の実務」126頁)。
   質問5.について ― 差押債権者から取立訴訟が提起される可能性がある。なぜならば、差押債権者は債務者(本件の「貸主」)に差押命令が送達された日から1週間が経過すれば、差押債権を第三債務者(本件の「借主」)から直接取り立てることができ(民事執行法第155条第1項)、第三債務者がその取り立てに応じなければ、差押債権者は取立訴訟を提起することができるからである(同法第157条)。
 なお、第三債務者である借主が、差押債権者に任意に賃料を支払わないということは、貸主に対し賃料を支払わないということであるから、貸主から賃貸借契約を解除される可能性がないとはいえない。

参照条文

  民事執行法第155条(差押債権者の金銭債権の取立て)
   金銭の支払を目的とする債権(以下「金銭債権」という。)を差し押えた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。ただし、差押債権者の債権及び執行費用の額を超えて支払を受けることができない。
   差押債権者が第三債務者から支払を受けたときは、その債権及び執行費用は、支払を受けた限度で、弁済されたものとみなす。
   (略)
  同法第157条(取立訴訟)
   差押債権者が第三債務者に対し差し押えた債権に係る給付を求める訴え(以下「取立訴訟」という。)を提起したときは、受訴裁判所は、第三債務者の申立てにより、他の債権者で訴状の送達の時までにその債権を差し押えたものに対し、共同訴訟人として原告に参加すべきことを命ずることができる。
  ~⑤ (略)

監修者のコメント

 現在のような経済状況で、質問のような賃料債権の差押えという事例は、かなり多い。その法律関係は、回答に付け加えるべきものはないが、借主にとっては、支払うべき相手が変わるのであって、賃貸借関係自体に直接影響を及ぼすものではないから、あわてることはない。要は、差し押えの通知をもらった日以降、従来の貸主に賃料を支払っても、貸主の債権者(差押債権者)に対抗できず、事実上二重払いをしなければならなくなってしまうということである。

より詳しく学ぶための関連リンク

“スコア”テキスト丸ごと公開! 「敷金」

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