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2502-B-0342
低廉な空家等の売買等の媒介報酬の特例(改正)

 低廉な空家等の売買取引における報酬規定が改正されたと聞くが、従来の規定とどのように異なるのか知りたい。

事実関係

 当社は、売買の媒介業者である。営業エリアは郊外部であるが、最近、高齢者が亡くなってもその子供たちは都心部に住んでおり、いわゆる実家に住むことも利用することもなく、空き家状態になっている戸建が増えつつある。時に、空き家の相続人から売却の相談を受けることがある。従来は、売買の媒介をしても売買価額が低いため、報酬額が低く、採算に合わないこともあったが、報酬規程の低廉物件の特例の改訂により、利益が確保しやすくなったと感じている。今後は、低廉な空家物件も積極的に扱っていくつもりである。
 媒介依頼者から依頼を受ける際に、報酬規程の原則でなく、特例適用により報酬を受領することの合意を得ているが、依頼者から、どのような背景で特例が改正になったのかとの質問を受けることがある。

質 問

1.  低廉な空家等の売買の媒介報酬の特例が改正になった背景は何か。
2.  同特例の改正の内容は、従前の特例とどのように変わったのか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 空き家は年々増加傾向にあり、放置されることによる様々な弊害が見込まれ、わが国としても空家の解消が喫緊の課題であることから、空家の流通促進策の一つとして改正された。
 質問2.について ― 低廉な空家等の物件価額の引き上げ(800万円以下に拡大)により報酬上限額が改定され、従来は特例が適用になる相手方は売主のみであったが、買主からも受領できることになった。
2.  理 由
について
 全国の空き家件数は、900万戸(総務省2023年速報値)で、総住宅数(6,502万戸)の13.8%を占めている、今後も増加が見込まれている。空き家が適切に管理されていれば問題はないが、空き家の放置や管理が不十分であると、防災(倒壊や崩壊、屋根・外壁の落下や火災の恐れ)、防犯性(犯罪の誘発)、ごみの不法投棄、衛生の悪化(蚊、蠅、ネズミ発生・集中)、風景・景観の悪化等を引き起こすことが懸念され、空き家の解消は喫緊の課題となっている(空家等対策の推進に関する特別措置法第1条、同第2条。改正空家法。令和5年12月13日施行)。
 国土交通省は、空き家の増加懸念から、空き家を解消すべく、空き家等の流通促進策として、『不動産業による空き家対策促進プログラム」を策定(2024年6月)、官民挙げての強力な空家対策に取り組み始めた。同プログラムの「空き家流通のビジネス化促進」策の一つとして、空き家等の売買の媒介報酬規制が見直され、空き家の流通促進が期待されている。
について
 不動産業者の売買の媒介報酬は、国土交通省の報酬告示により規制されているが、「低廉な空家等の売買又は交換の媒介特例」として、本則(報酬告示第2)にかかわらず、今改正までは、物件価額400万円以下の場合、受領できる報酬額は、一律19万8千円(消費税額含む上限額。以下同様)までであった。令和6年7月1日施行の改正により、同特例の対象となる物件の価額を800万円以下に拡大、上限報酬額は33万円に引き上げられた。さらに、特例により受領できる宅建業者の相手方は、従来は売主のみで、買主からは本則が適用されていたが、改正により、買主からも受領が可能となった(同告示第7)。
 なお、同特例の対象物件である「低廉な空家等」とは、売買に係る代金の額又は交換に係る宅地又は建物の価額が800万円以下の金額の宅地又は建物をいい、当該宅地又は建物の使用の状態は問わない(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 第46条第1項関係(6))。
 また、宅建業者が、売買又は交換の代理をするときの報酬の額は、本則で算出した額の2倍までであるが(報酬告示第3)、低廉な物件の特例を適用する場合、低廉な空家の媒介報酬(同告示第7)で算出した金額の2倍までになった(同告示第8)。
 宅建業者は、特例に基づき告示第2の計算方法により算出した 金額を超えて報酬を受ける場合には、媒介契約の締結に際しあらかじめ、この規定に定める上限の範囲内で、報酬額について依頼者に対して説明し、合意する必要があることに、特に留意する必要がある(宅建業法の解釈・運用の考え方 第46条第1項関係(6)④)。具体的には、媒介契約書締結の際に、報酬に関しては特例を適用する旨を記載し、合意した金額を記載することになる。

参照条文

 空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)第1条(目的)
   この法律は、適切な管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることに鑑み、地域住民の生命、身体又は財産を保護するとともに、その生活環境の保全を図り、あわせて空家等の活用を促進するため、空家等に関する施策に関し、国による基本指針の策定、市町村(特別区を含む。第10条第2項を除き、以下同じ。)による空家等対策計画の作成その他の空家等に関する施策を推進するために必要な事項を定めることにより、空家等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって公共の福祉の増進と地域の振興に寄与することを目的とする。
 同法第2条(定義)
   この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。第14条第2項において同じ。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。
   この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。
 宅地建物取引業法第46条(報酬)
   宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
   宅地建物取引業者は、前項の額を超えて報酬を受けてはならない。
   国土交通大臣は、第一項の報酬の額を定めたときは、これを告示しなければならない。
   宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、第1項の規定により国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない。
 (国土交通大臣告示)宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額
  第1   (略)
  第2  売買又は交換の媒介に関する報酬の額
 宅地建物取引業者(課税事業者(消費税法第5条第1項の規定により消費税を納める義務がある事業者をいい、同法第9条第1項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)である場合に限る。第3から第5まで、第7から第10まで及び第11①において同じ。)が宅地又は建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買又は交換の媒介に関して依頼者から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。)は、依頼者の一方につき、それぞれ、当該売買に係る代金の額(当該売買に係る消費税等相当額を含まないものとする。)又は当該交換に係る宅地若しくは建物の価額(当該交換に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該交換に係る宅地又は建物の価額に差があるときは、これらの価額のうちいずれか多い価額とする。)を次の表の上欄に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に同表の下欄に掲げる割合を乗じて得た金額を合計した金額以内とする。
  第3  売買又は交換の代理に関する報酬の額
宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買又は交換の代理に関して依頼者から受けることのできる報酬の額(当該代理に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)は、第2の計算方法により算出した金額の2倍以内とする。ただし、宅地建物取引業者が当該売買又は交換の相手方から報酬を受ける場合においては、その報酬の額と代理の依頼者から受ける報酬の額の合計額が第2の計算方法により算出した金額の2倍を超えてはならない。
  第4 ~6 (略)
  第7  低廉な空家等の売買又は交換の媒介における特例
 低廉な空家等(売買に係る代金の額(当該売買に係る消費税等相当額を含まないものとする。)又は交換に係る宅地若しくは建物の価額(当該交換に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該交換に係る宅地又は建物の価額に差があるときは、これらの価額のうちいずれか多い価額とする。)が800万円以下の金額の宅地又は建物をいう。以下同じ。)の売買又は交換の媒介に関して依頼者から受ける報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)については、宅地建物取引業者は、第2の規定にかかわらず、当該媒介に要する費用を勘案して、第2の計算方法により算出した金額を超えて報酬を受けることができる。この場合において、当該依頼者から受ける報酬の額は30万円の1.1倍に相当する金額を超えてはならない。
  第8  低廉な空家等の売買又は交換の代理における特例
 低廉な空家等の売買又は交換の代理については、宅地建物取引業者が依頼者から受けることのできる報酬の額(当該代理に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)は、第3の規定にかかわらず、第7の規定により算出した金額の2倍以内とする。ただし、宅地建物取引業者が当該売買又は交換の相手方から報酬を受ける場合においては、その報酬の額と代理の依頼者から受ける報酬の額の合計額が第7の規定により算出した金額の2倍を超えてはならない。
 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 第46条第1項関係
  1  告示の運用について
    ~⑸ (略)
     告示第7(低廉な空家等の売買又は交換の媒介における特例)関係
       この規定は、宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買又は交換の媒介に関して受けることのできる報酬額の特例として、低廉な空家等の売買又は交換の媒介については、告示第2の規定にかかわらず、当該媒介に要する費用を勘案して、告示第2の計算方法により算出した金額を超えて報酬を受けることができることを定めているものである。
       「低廉な空家等」とは、売買に係る代金の額又は交換に係る宅地又は建物の価額が800万円以下の金額の宅地又は建物をいい、当該宅地又は建物の使用の状態を問わない。
       「当該媒介に要する費用」とは、人件費等を含むものであり、「費用を勘案して」とは、報酬額の算出に当たって、取引の態様や難易度等に応じて当該媒介業務に要すると見込まれる費用の水準や多寡を考慮することを求めるものであって、当該費用に相当する金額を上回る報酬を受けることを禁ずる趣旨のも のではない。
       宅地建物取引業者は、この規定に基づき告示第2の計算方法により算出した金額を超えて報酬を受ける場合には、媒介契約の締結に際しあらかじめ、この規定に定める上限の範囲内で、報酬額について依頼者に対して説明し、合意する必要があることに、特に留意すること。
     告示第8(低廉な空家等の売買又は交換の代理における特例)関係
       この規定は、宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買又は交換の媒介に関して受けることのできる報酬額の特例として、低廉な空家等の売買又は交換の媒介については、告示第2の規定にかかわらず、当該媒介に要する費用を勘案して、告示第2の計算方法により算出した金額を超えて報酬を受けることができることを定めているものである。
       宅地建物取引業者は、この規定に基づき報酬を受ける場合には、代理契約の締結に際しあらかじめ、この規定に定める上限の範囲内で、報酬額について依頼者に対して説明し、合意する必要があることに、特に留意すること。
    ~⑾ (略)
       (以下省略)

監修者のコメント

 本件相談の空家等の売買の媒介報酬問題については、【回答】とその【理由】に付け加えるべきことはない。現下の大きな社会課題である空き家問題の解決に向けては、不動産業者の役割が大いに期待されていることを改めて認識していただきたい。すなわち、不動産業者は、物件調査や価格の査定、売買・賃貸の仲介など、空家等の発生から流通、利活用まで一括してサポートできるノウハウを有しているとして、空家等の所有者の抱える課題の解決や新たなニーズへの対応が期待されている。この観点から国土交通省が策定したものが、【回答】の【理由】中にある「不動産業による空き家対策推進プログラム」である。積極的な取り組みを期待したい。

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