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2412-R-0284
賃借人は、賃貸借契約において個人連帯保証人を立てた上でも保証会社に加入しなければいけないのか。

 個人の連帯保証人を立て、加えて賃料保証会社に加入することが条件である賃貸借契約に賃借人が難色を示している。

事実関係

 当社は、賃貸の媒介業者である。賃貸人から賃貸マンションの入居者募集を依頼され、賃貸情報サイトに掲載したところ、入居希望者が現れ、案内のうえ入居申込書を取得した。入居申し込みの際、賃借人に対し契約条件について説明したところ、賃料等の条件は納得いただいたものの、賃貸人の条件である個人連帯保証人を立て、さらに賃料保証会社に加入することに難色を示した。二重ともいえる保証に納得がいかないようだ。また、父親が保証人となるには特段の費用は発生しないが、保証会社への加入は賃料1か月分相当の保証料を支払い、更新時には賃料0.5か月分相当の保証料を支払うのは負担が重いと言っている。
 また、連帯保証人を立てるのに保証会社へ加入させるのは、賃借人の負担が重くなる不利な約定で消費者契約法に違反し無効ではないかと言明している。

質 問

1.  賃貸借契約で賃借人が連帯保証人を立てるにもかかわらず、保証会社を利用させる契約条件は、保証が重なり意味がないのではないか。
2.  連帯保証人を立てた上で、保証会社を利用する約定は、賃借人の義務を加重するものであり、消費者契約法に抵触し無効ではないか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 賃貸人の賃料回収手段として連帯保証人と保証会社では役割が異なり、両者の保証は両立し、意味のあるものである。
 質問2.について ― 保証会社の保証料が過大でない限り、賃借人の利益を一方的に害するとは言えず、消費者契約法に抵触するものでないと解される。
2.  理 由
⑵について
 核家族や少子高齢化などにより兄弟姉妹がいないまたは少ない、高齢により保証人の要件を満たさない、独居者の増加、家族関係の希薄化などを背景に、賃借人が依頼できる個人の連帯保証人がいないことがある。また、友人や勤務先の同僚・上司もよほど親しい関係がなければ、保証人になることを敬遠する傾向もあり、賃借人が賃貸借契約の際に連帯保証人を立てられないケースが見受けられる。このような社会的背景により、個人の保証人に代わり、賃料保証会社が保証を引き受ける需要が増し、保証会社が台頭している。最近は、保証会社に加入し、連帯保証人も立てることを条件とする賃貸借契約が増加している。賃借人にとって、連帯保証人を立てるにもかかわらず、保証会社に加入することは、二重の保証とも受け取れ、費用も発生することから違和感を覚える賃借人もいるであろう。
 賃貸借は、賃貸人が賃貸物を賃借人に使用・収益させ、賃借人は賃貸人に賃料を支払うことであり(民法第601条)、賃貸人は収益を得るのが目的である。賃借人が賃料を滞納したときは、賃貸人は賃借人に滞納賃料を請求すると同時に連帯保証人にも請求することができる(同法第446条、同法第454条)。保証人が支払わない、資力がないとなると滞納賃料の回収ができない可能性がある。保証会社は、賃借人が賃料を滞納した場合、保証契約に基づき、賃料を保証会社が立て替えて賃貸人に支払うことにより、賃貸人は賃借人の未払い賃料発生リスクが回避できる。保証会社は立て替えた賃料を賃借人に請求し回収する。
 賃貸人が、連帯保証人を立てることと、賃借人が保証会社に加入することの両方を契約条件とすることは、賃借人が承諾すれば両方の保証に異論をはさむ余地はないと言える。賃借人がどちらか一方のみの保証を主張するときは、賃貸借契約は成立しないことになる。賃貸人が滞納賃料を回収することが難しいことも多く、督促したからと言って賃借人または保証人が支払うとは限らない。連帯保証人に資力に余裕がないときは滞納賃料の回収が難しい場合があり、その点、保証会社は約定に従って、滞納賃料を立て替えるため、賃貸人の賃料回収は容易である。
 また、保証会社の賃料保証に加え、連帯保証人は、賃借人が引き起こす入居トラブルが発生したときは、賃借人の身内である連帯保証人が間に入ってトラブルを解決する役割、いわば「身元保証人」として期待される面がある。
 「連帯保証人による個人保証と賃料保証会社による保証とを選択的とするかのような契約条項があるものの、両者の保証は論理的に両立し得る」ものとし、「むしろ、連帯保証人による個人保証が後発的に担保不足となった場合に保証の追加、変更を予定する契約条項も別途定められていることに照らせば、契約当初から連帯保証人による個人保証だけでは不十分な賃借人の場合には連帯保証人による個人保証に加えて賃料保証会社による保証を求めることを否定する趣旨であるとは解されない」と連帯保証人の資力が十分でない場合があり得ることに着目した裁判例がある(【参照判例】参照)。
 なお、保証人を立てた上で、保証会社への加入を条件とする契約が、消費者契約法に抵触するか否かについて、「賃借人の利益を一方的に害するなどと評価することはできないから、本件保証委託契約が消費者契約法第10条の適用により無効となると解する余地はない」と保証人に加え、保証会社への加入による賃借人の負担が妥当であれば無効とは言えないと解する裁判例がある(【参照判例】参照)。
 賃料保証会社の加入条件は様々であり、媒介業者は、連帯保証人を立て、賃料保証会社加入の両方が賃貸人の契約条件のときは、賃借人に対し、それぞれのメリット・デメリット及び保証会社の加入条件や賃貸人への賃料立替払い、立て替え額の回収方法、加入料(保証料)等について、契約締結前に十分な説明をすることが肝要である。

参照条文

 民法第446条(保証人の責任等)
   保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
   保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
   (略)
 同法第454条(連帯保証の場合の特則)
   保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前2条の権利(催告の抗弁権及び検索の抗弁権)を有しない。
 同法第465条の2(個人根保証契約の保証人の責任等)
   一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
   個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
   第446条第2項及び第3項の規定は、個人根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。
 同法第465条の4(個人根保証契約の元本の確定事由)
   次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。ただし、第1号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
     (略)
     保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
     主たる債務者又は保証人が死亡したとき。
   (略)
 同法第601条(賃貸借)
   賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
 消費者契約法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
   消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

参照判例

 東京地裁令和2年1月10日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 賃借人が賃貸人との間で本件賃貸借契約を締結するためには、実弟の個人保証を付しただけでは足りず、賃料保証会社による保証を加えることが必要不可欠なものであった。そして、仲介業者においては、賃貸人である賃貸人の意向に沿って、賃借人となろうとする賃借人に対し、初回の保証委託料を含む旨明記した請求書を送付したり、重要事項説明においてその旨説明したりしていた。本件賃貸借契約上、連帯保証人による個人保証と賃料保証会社による保証とを選択的とするかのような契約条項があるものの、両者の保証は論理的に両立し得るものであって、むしろ、連帯保証人による個人保証が後発的に担保不足となった場合に保証の追加、変更を予定する契約条項も別途定められていることに照らせば、契約当初から連帯保証人による個人保証だけでは不十分な賃借人の場合には連帯保証人による個人保証に加えて賃料保証会社による保証を求めることを否定する趣旨であるとは解されない。(中略)
 賃借人は、本件保証委託契約を締結しなければ、本件賃貸借契約を締結することができなかったばかりか、本件保証委託契約を締結する場合であっても、連帯保証人による個人保証がない場合と比較して、これがある本件の場合の方が初回保証委託料の額が低廉となることに照らせば、賃借人の利益を一方的に害するなどと評価することはできないから、本件保証委託契約が消費者契約法第10条の適用により無効となると解する余地はない。

監修者のコメント

 民事法の大原則に「契約自由の原則」がある(民法第521条)。すなわち、①契約を締結するかどうか②契約の相手方をだれにするか③契約の内容をどうするか④契約の方式をどうするか、について自由に決められるのである。もちろん、公序良俗などの強行規定や借地借家法や消費者契約法などの特別法による制限があるが、民事法の基本原則は「契約の自由」である。
 本相談ケースでいえば、個人保証と保証会社の保証の二重の保証を禁止する法はなく、またそれを不当視する一般条項もない。
 消費者契約法第10条との関係も、回答にあるとおり、二重の保証の義務づけが、「民法第1条第2項の基本原則に反する」とはいえないであろう。
 二重の保証は、賃貸借契約の条件であって、何が何でも強制されるというものではなく、それがイヤなら契約を結ばなければよいだけであって、そんな条件なら契約を結ばない、というのも契約自由の表れである。

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