不動産相談

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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2406-R-0277
パーテーションで仕切られた部屋の賃貸借契約は借地借家法の適用を受けるか。

 ビルオーナーが、フロアの一部をパーテーションで囲った区画を賃貸していたが、期間満了で賃借人に明け渡し要求したが、賃借人は退去に応じず、トラブルになっている。

事実関係

 当社は、賃貸の媒介兼管理業者である。当社が管理しているビルのオーナーから相談があった。オーナーである賃貸人は、知人から短期間でよいので事務所として賃貸人が使用しているフロアの一角を貸してほしいと依頼され、直接賃貸借契約を締結した。賃貸借契約が期間満了になり賃貸人が賃借人に退去を求めたにもかかわらず賃借人は明け渡しを拒んでおりトラブルになっているとのことである。賃借人との賃貸借契約は、期間2年の契約で、更新条項はない。面積は賃貸人が使用している事務所内の約3分の1を占め、四方を高さ1.9mのパーテーションで囲っているが、天井には届いておらず、下部はアンカー等で固定していない。そのため、賃借人とその従業員との会話や電話の声が聞こえ、時々大声も発していて、賃貸人は迷惑がっているようだ。賃借人の事務所には専用の入口はなく、賃貸人の事務所と同じ入口を使用して出入りしている。
 退去トラブルは、賃貸人と賃借人の考え方の違いによる。賃借人は、パーテーションで仕切られた独立した部屋を賃借しているのであるから、借地借家法の賃貸借契約であり、賃貸人が、期間満了を理由に契約解除の申し入れ、あるいは更新拒絶をしても賃貸人に正当事由がなければ退去する義務はなく、継続して賃借できると主張している。反対に、賃貸人は、パーテーションで仕切られているとはいえ、独立した「建物」に該当せず、借地借家法が適用されない民法上の賃貸借であるため期間満了で契約は終了になると言っている。

質 問

 フロアの一部をパーテーションで仕切られた区画の賃貸借契約は借地借家法の適用があるか。

回 答

1.  結 論
 仕切られた区画が使用上の独立性・排他性が認められれば借地借家法が適用されるが、認められなければ適用されない。
2.  理 由
 ビルに限らず、デパートやスーパーマーケット等の商業施設で、事業者がフロアの一部を賃借し、事務所や店舗等の事業に使用することがある。このような出店形態を「ケース貸し」と言われている。このようなフロアの一部区画の賃貸借では、借地借家法が適用になるか否かが問題になる。借地借家法上の「建物」に該当する賃貸借では、更新時に賃貸人が更新拒絶しても、賃貸人に正当事由がなければ賃借人は継続して賃借することができる。また、期間満了となり、合意更新が成立しなくても、法定更新となり期間の定めのない賃貸借契約になる。法定更新は、従前と同一の契約条件で更新したものとみなされ(借地借家法第26条)、賃借人の権利が保護されていると言える。しかし、「建物」に該当しなければ、民法上の賃貸借契約であり、原則、期間満了により契約は終了する。なお、期間満了後に賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定され、契約は継続される(民法第619条)が、期間の定めのない賃貸借となり、賃貸人から解約の申し入れが可能で、3か月の期間経過後に契約が終了する(同法第617条)。なお、期間満了後の当事者の合意による更新を妨げるものではないが、期間を定めた場合であっても、賃貸人の解約をする権利を留保したときは、賃貸人の申し入れにより3か月後に契約は終了する(同法第618条)。いわば、賃借人の賃借権の保護がされていないのである。
 借地借家法が適用になる「建物」は、1棟の独立したものだけでなく、1棟の一部であっても「建物」に該当するものがある。「借地借家法が適用される建物賃貸借契約の対象である「建物」は、必ずしも一棟の建物に限られるものではなく、賃貸借の目的が建物の一部であってもよいが、その部分が障壁その他によって他の部分と客観的かつ明白に区画されていて、独占的排他的な支配を可能とする構造及び規模を有するものであることが必要」と「建物」を定義した裁判例がある。障壁等で区画された独占的排他的な支配の構造・規模であれば「建物」であるとしている(最高裁昭和42年6月2日)。相談ケースのようなフロアの一部をパーテーションで仕切られた区画は「建物」に該当するのかであるが、独占的排他的が認められるか否かで判断される。転貸人が賃借している部屋の一部をパーテーションで仕切った区画を期間満了により転貸人が転借人に明け渡しを要求した裁判で、「パーテーションによって区切られており、その他の部分とは客観的に区画されるものの、パーテ-ションの上部が天井に達しておらず、下部の接地部分も床に固定されていないため、容易にパーテ-ションを移動させることが可能であり、外部との出入り口が共通であり、区画に立ち入るための出入り口にドア等は設けられていない」ものについては、「障壁等により、他の部分と客観的かつ明白に区画されているとは認めがたく、独占的排他的な支配を可能とする構造及び規模であるともいえない」として借地借家法が適用されない賃貸借であると判示している(【参照判例①】参照)。
 媒介業者は、フロアの一部をパーテーションを含む障壁等で区画された部屋を賃貸借の媒介をする際は、その区画が明確に独占的排他的であるかの確認をした上で、当該契約が借地借家法の適用があるのか否かを十分当事者に説明する必要がある。
 なお、店舗利用のための賃貸借が借地借家法上の賃貸借契約か飲食店営業委託契約かが争いとなった裁判で、区画が明確に独占的排他的であっても、「当該店舗における営業に関しては、営業委託契約の場合と賃貸借契約の場合とで外形上は選ぶところはなく、昨今の賃貸借契約又は業務委託契約の多種多様性にも鑑みると、独立性を有する建物の利用であることの一事をもって、直ちに賃貸借契約であると断定し難いものといわざるを得ない」として、賃貸借契約として締結したとしても損益の帰属、支払金額、営業上の指揮監督等に関する規定や営業の実状、実態等をも考慮して、飲食店営業委託契約とされた裁判例がある(【参照判例②】参照)。媒介業者は、店舗の賃貸借契約の媒介をする際、賃貸借契約でなく、業務委託契約や販売委託契約と判断される場合があることにも留意したい。

参照条文

 民法第617条(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
   当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
     (略)
     建物の賃貸借 3箇月
     (略)
   (略)
 同法第618条(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
   当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
   (略)
 同法第619条(賃貸借の更新の推定等)
   賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第617条の規定により解約の申入れをすることができる。
   (略)
 借地借家法第1条(趣旨)
   この法律は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。
 同法第26条(建物賃貸借契約の更新等)
   建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
  ・③ (略)
 同法第27条(解約による建物賃貸借の終了)
   建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6月を経過することによって終了する。
   (略)
 同法第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
   建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

参照判例①

 東京地裁平成28年11月22日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 借地借家法が適用される建物賃貸借契約の対象である「建物」は、必ずしも一棟の建物に限られるものではなく、賃貸借の目的が建物の一部であってもよいが、その部分が障壁その他によって他の部分と客観的かつ明白に区画されていて、独占的排他的な支配を可能とする構造及び規模を有するものであることが必要と解される(最高裁昭和42年6月2日)
 本件区画部分は、本件建物内の賃貸人が賃借している部屋の一部であり、周囲を高さ約190cmのパテ-ションによって区切られており、その他の部分とは客観的に区画されるものの、パテ-ションの上部が天井に達しておらず、パテ-ション下部の接地部分も床に固定されていないため、容易にパテ-ションを移動させることが可能であること、本件区画と同じ部屋にある賃貸人使用部分と本件区画は、外部との出入り口が共通であり、本件区画に到達するためには、事務所として使用されている賃貸人使用部分の中を通る必要があること、賃貸人使用部分から本件区画に立ち入るための出入り口にドア等は設けられておらず、賃貸人使用部分に出入りできる賃貸人代表者や従業員であれば、自由に本件区画部分に出入り可能であることが認められる。これらの事実に照らせば、建物の一部である本件区画は、障壁等により、他の部分(賃貸人使用部分)と客観的かつ明白に区画されているとは認めがたい上、独占的排他的な支配を可能とする構造及び規模であるともいえないから、本件賃貸借契約については、借地借家法は適用されないというべきである。

参照判例②

 東京地裁平成12年11月30日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 店舗の賃貸借契約の場合、その場所的固定性、建物の構造等は、これを欠く場合には賃貸借契約でないことを窺わせる重要な要素となり得るが、これを備える場合には、当該店舗における営業に関しては、営業委託契約の場合と賃貸借契約の場合とで外形上は選ぶところはなく、昨今の賃貸借契約又は業務委託契約の多種多様性にも鑑みると、独立性を有する建物の利用であることの一事をもって、直ちに賃貸借契約であると断定し難いものといわざるを得ない。

監修者のコメント

 借地借家法の適用がある「建物」の賃貸借というためには、回答掲記の参照判例①の冒頭にある最高裁昭和42年6月2日の判決が説く「その部分が障壁その他によって他の部分と客観的かつ明白に区画されていて、独占的排他的な支配を可能とする構造及び規模を有すること」が必要である。この最高裁の論理に反対する学説、裁判例はないと思われる。それを前提に具体の事例に当てはめた参照判例①の東京地裁判決の結論は妥当と解される。
 本相談ケースの事実関係を見ると賃貸人の事務所の3分の1を高さ1.9mのパーテーションで囲っているが、天井には届いておらず、下部は固定しておらず、また専用の出入口はなく、賃貸人の事務所の入口を使用して出入りしているというのであるから、参照判例①の事案とほぼ同じである。他に特段の事情がない限り、賃貸人の主張が正当である。

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