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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2402-B-0329
所有権移転請求権仮登記付物件の任意売却

 競売の開始決定がおりている物件を任意売却するが、この物件には、競売の申立てを行った抵当権者のほかに、代物弁済予約による所有権移転請求権仮登記を経由している抵当権者がいる。

事実関係

 当社は媒介業者であるが、先日、競売の開始決定がおりている物件の任意売却の依頼を受けた。
 そこで、登記簿をとって調べてみたところ、甲区には、ローンの保証会社であるA社名義の差押え(競売の開始決定)の登記の前に、B社名義の代物弁済予約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記がなされており、一方乙区においては、A社名義の第1順位の抵当権(債権額2,000万円)とB社名義の第2順位の抵当権(債権額500万円)の登記がなされていたが、B社名義の抵当権と上記の仮登記はもちろん同時であった。
 なお、物件の売却見込価格は約2,000万円で、残債額のいかんによっては、なんとか抵当権等の担保権の抹消はできそうである。

質 問

1.  本件のような代物弁済の予約による所有権移転請求権仮登記が付いている物件を任意売却する場合、媒介の途中で所有権がB社に移転してしまうようなことはないか。もし、移転したら競売はどうなるのか。
2.  このような物件の媒介をする場合、どのような点に注意したらよいか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 債務者(本件の場合は売主)にB社に対する債務不履行があれば、所有権がB社に移転することもありうる(仮登記担保契約に関する法律第1条)。
 その場合、債務者(売主)と債権者(B社)との間には、清算関係が伴うが(仮登記担保契約に関する法律第2条第1項、第3条第1項)、債務者(売主)はその処分代金でA社への債務を弁済することになり、A社の競売申立は取り下げられることになる。
 質問2.について ― 注意点は、次のとおりと考えられる。
 債務者(売主)に、本件任意売却を完結できる見通しがあるかどうかを見極める。
 競売関係書類を閲覧し、当該不動産から配当を受けようとしている債権者とその債権額を確認し、その債権額が売却予定代金の範囲内に収まるかどうかを確認する。
 前記②の債権者に対し、当該物件を任意売却し債務を弁済する旨を伝え、かつ、競売の申立者(A社)に対しては、債務の弁済と引き換えに申立を取り下げてもらう旨の確約を取り付ける。
 売主には、売買契約締結までに建物を明け渡しておいてもらう。
 売買契約の直前に、再度登記簿と裁判所の記録を閲覧し、権利関係に変動がないかどうかを確認する。
 売買契約は即金契約(代金一括払契約)とし、買主がローンを利用する場合であっても、手付金等の授受は行わず、ローンの実行時に代金を一括授受する。
 買主がローンを利用する場合には、売買契約が完結するまでの間に競売が執行されたり、権利関係に変動が生じたときは、契約が失効し、互に何らの異議・請求をしない旨の特約をしておく。
2.  理 由
について
 B社は、代物弁済予約に基づく所有権移転請求権仮登記を経由しているので、債務者(売主)に債務不履行があれば、B社はその予約完結権を行使して、所有権を取得することができる(仮登記担保契約に関する法律第1条、民法第556条)。
 しかし、B社の仮登記はA社の抵当権より後順位なので、その先順位の抵当権をはずさない限り、抵当権付の所有権がB社に移転することになる。したがって、B社が所有権を取得するとすれば、債務者(売主)がその処分代金でA社への債務を弁済し、A社は競売を取り下げることになる。
について
 競売の開始決定がおりていても、実際に競売が行われるまでには通常3ヵ月から6ヵ月程度の期間がかかるので、それまでの間に第三者に当該不動産を売却(任意売却)し、その代金をもって債務を弁済すれば、競売を中止することができる。そのことは、本件のように代物弁済予約による所有権移転請求権仮登記が付いている物件の場合でも同様である。
 しかし、問題は当該不動産から配当を受けようとする債権者が何人いて、その債権額がいくらかということである。とりあえずは、裁判所に備え付けられている申立関係書類を閲覧すれば一応の把握はできるが、その閲覧が早過ぎると、まだ配当要求をしていない債権者や、その後に債務名義を得て強制競売の申立てをしてくる債権者もいるので(民事執行法第47条)、少なくとも売買契約直前に再度登記簿と裁判所の記録を閲覧し、最終的な債権額の確認をする必要がある。裁判所の記録には債権元本のほか、利息、遅延損害金等も載っているので、正確な額を把握することができる。

参照条文

 仮登記担保契約に関する法律第1条(趣旨)
   この法律は、金銭債務を担保するため、その不履行があるときは債権者に債務者又は第三者に属する所有権その他の権利の移転等をすることを目的としてされた代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約その他の契約で、その契約による権利について仮登記又は仮登録のできるもの(以下「仮登記担保契約」という。)の効力等に関し、特別の定めをするものとする。
 同法第2条(所有権移転の効力の制限等)
   仮登記担保契約が土地又は建物(以下「土地等」という。)の所有権の移転を目的とするものである場合には、(中略)債権者が次条に規定する清算金の見積額(中略)をその契約の相手方である債務者又は第三者(以下「債務者等」という。)に通知し、かつ、その通知が債務者等に到達した日から2月を経過しなければ、その所有権の移転の効力は生じない。
   (略)
 同法第3条(清算金)
   債権者は、清算期間が経過した時の土地等の価額がその時の債権等の額を超えるときは、その超える額に相当する金額(以下「清算金」という。)を債務者等に支払わなければならない。
  ・③ (略)
 民法第556条(売買の一方の予約)
   売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる。
   (略)
 民事執行法第47条(二重開始決定)
   強制競売又は担保権の実行としての競売(中略)の開始決定がされた不動産について強制競売の申立てがあったときは、執行裁判所は、更に強制競売の開始決定をするものとする。
  〜⑤ (略)

監修者のコメント

  競売開始決定がなされている物件の任意売却の場合、売却代金で全抵当権の抹消ができるかどうかがポイントである。そして、仲介業者としては、回答⑵にある点に十分注意すると共に、破産手続が開始しているときは、当然のことながら、破産管財人と密な連携をとり合うことが必要である。
 なお、平成17年1月1日施行の破産法の全面改正において、任意売却と合意による担保権の消滅を促進するため、破産管財人が裁判所の許可を得て、その物件のすべての担保権を消滅させること等を可能とする制度が創設されている(破産法第186条~第191条)。

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