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2308-B-0324
専任媒介契約の有効期間を自動更新とする特約の有効性。

 当社の営業対象地域は不動産取引が低迷している。売却依頼を受けても契約成立までに相当の期間を要することが多い。そのため、媒介契約書締結の際、依頼者の合意を得た上で、媒介契約期間が終了した場合でも同期間を自動的に延長する特約を設けておきたい。

事実関係

 当社は、売買の媒介業者である。当社の営業エリアは都心から外れた郊外にあって、過疎化が進み、不動産取引が低迷している。売却の依頼を受けても契約の成立までに期間を要することが多く、媒介契約期間の3か月を超える取引が往々にしてある。取引が成約せずに媒介契約期間が終了するときは、依頼者から更新の申込書を取得して媒介期間を延長しているが、時折、媒介契約書を締結する際、更新申込書を前もって差し出しておきたいという依頼者がいる。売却に時間を要することを認識している依頼者であることが多い。専任媒介契約を締結した物件はレインズ登録するとともにインターネットの不動産サイトに掲出するなど広く購入者を探索するため、媒介業務は不動産流通業とも言われ、購入希望者がいつ現れてもおかしくない。当初の媒介期間が終了しても事前に依頼者からの更新申込書を取得しておくか、期間の自動延長を特約しておけば、
期間満了前後に購入顧客が現れても、機動的に売買契約成立に向けた媒介業務を進めることができ、依頼者も当社も時間と手間が省ける利点がある。

質 問

 不動産売却依頼者と当社が専任媒介契約を締結する際、媒介期間の延長を見越して、期間の自動更新特約を付したり、あらかじめ期間延長の更新申込書を取得してもよいか。

回 答

1.  結 論
 専任媒介契約の期間延長の効果は、媒介契約期間終了時に依頼者からの申し出がある場合のみ有効である。媒介契約締結時に期間を延長する旨の自動更新の特約や依頼者から事前に取得する更新申込書は無効である。
2.  理 由
 宅建業者は、不動産の売却希望者と媒介契約書を締結したときは、媒介価格や有効期間等を記載した書面を作成し、記名押印して、依頼者に交付する義務がある(宅地建物取引業法第34条の2第1項)。専任媒介契約の期間は、3か月を超えることができない。これより長い期間を定めたときでも期間は3か月である(同法第34条の2第3項)。専任媒介契約は、専任媒介契約及び専属専任媒介契約をいう。約定した期間内に売買契約が成立せず、媒介期間を延長するには、依頼者の申し出のみにより上限3か月の更新が可能である(同法第34条の2第4項)。媒介業者が更新を希望しても依頼者が応じなければ期間の更新ができない。更新するか、媒介契約を終了するかの決定権は依頼者にある。期間が満了となった場合、依頼者からの申し出がなければ期間更新されず、媒介契約は終了する。また、当初締結した媒介契約書に期間を自動更新とする特約は3か月を超える期間であり、かつ期間満了時の依頼者からの申し込みによらず、無効である(同法第34条の2第10項)。
 一般媒介契約は、宅建業法上の媒介契約期間の規定はなく、3か月を超えた期間も有効と解され、自動更新条項も有効な約定となる余地があるが、実情にかんがみ、標準一般媒介契約約款は専任媒介契約と同じく期間を3か月以内と定めている(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方・同法第34条の2関係6号④。標準一般媒介契約約款第8条)。
 専任及び一般媒介契約を問わず、媒介契約期間の更新は依頼者の申し出が必要である。更新の申込みは口頭でも可能だが、更新の申し出は、後日の紛争を避けるため文書によることが望ましく、標準媒介契約約款は文書等による申し出を更新の要件としている(標準専任媒介契約約款第15条、標準一般媒介契約約款第16条)。更新の申し出は、有効期間満了の都度行われるべきもので、あらかじめ更新することを約定しても無効である(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方・第34条の2関係6号⑧)。なお、依頼者の申し出があっても、宅建業者が更新に同意しないときは契約は更新されない(同解釈・運用の考え方・第34条の2関係6号⑧)。「専任媒介契約において自動更新条項を設けることは、宅建業法第34条の2第3項が定める有効期間の規制の潜脱といえることから、同第4項は、一方当事者である依頼者の申し出があったときのみ更新できる。(中略)自動更新条項は完全に無効であり、同条項によって契約が自動的に更新される余地はない」とした裁判例がある(【参照判例】参照)。
 媒介契約期間が満了となり、期間を延長する場合は、媒介契約書を結び直す必要はなく、依頼者から、延長合意した更新期間のみを記載した「更新申込書」を取得すればよい。更新を機に媒介価格を変更することが見受けられるが、期間更新に併せ媒介価格を変更する場合は「更新及び価格変更申込書」とし、更新後の期間と変更後の価格を記載すればよい。
 媒介業務の実務として、所有権移転登記に必要な固定資産評価証明書を依頼者に代わって媒介業者が役所から取得することがある。取得の申請及び交付を受けるためには、依頼者から固定資産評価証明書取得を委任された旨が記載され、かつ、有効期間内の媒介契約書(原本)を提示する必要がある。有効期間が過ぎていると役所は交付しない。当初の媒介契約書で有効期間が過ぎているときに交付を受けるためには、当初の媒介契約書とともに依頼者からの更新申込の文書の提示が必要であるので注意を要する。
 媒介業者が媒介契約期間を徒過した状態で売買契約を成立させた場合、媒介契約の無効を依頼者から主張され、報酬の支払いを拒否される等のトラブルが生じることも考えられるので留意されたい。
 売買契約の決済時に媒介契約の有効期間を過ぎていたとしても問題ない。媒介契約約款は、依頼を受けた売却の媒介業者の媒介業務開始から売買契約成立までの約定であり、媒介契約の有効期間内に売買契約を締結すれば足りる。
 媒介業者は、媒介業務を進める上で、媒介契約の期間管理に努めることが重要である。

参照条文

 宅地建物取引業法第34条の2(媒介契約)
   宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。
     (略)
     当該宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額
    ・四 (略)
     媒介契約の有効期間及び解除に関する事項
    ~八 (略)
   宅地建物取引業者は、前項第2号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。
   依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約(以下「専任媒介契約」という。)の有効期間は、3か月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、3か月とする。
   前項の有効期間は、依頼者の申出により、更新することができる。ただし、更新の時から3か月を超えることができない。
  ~⑨ (略) 
   第3項から第6項まで及び前2項の規定に反する特約は、無効とする。
  ・⑫ (略)
 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方
 第34条の2関係
  1 ~5 (略)
  6  標準媒介契約約款について
    ~③ (略)
     有効期間について
 有効期間は、法第34条の2第3項の制限があり、専属専任媒介契約、専任媒介契約についてはそれを確認的に規定したものである。一般媒介契約については、法律上の規制はないが、実情にかんがみ、専任媒介契約等と同じく3か月以内で定めている。
    ~⑦
     更新手続について
 契約の更新には依頼者の申出が必要であるが、この申出は後日の紛争を避けるため文書によって確認することが望ましい(標準媒介契約約款では文書等による申出を更新の要件としている。)。また、更新の申出は、有効期間満了の都度行われるべきもので、あらかじめ更新することを約定することは許されない。なお、依頼者の申出はあっても、宅地建物取引業者が更新に同意しないときは契約は更新されない。
    ・⑩ (略)
  7  (略)
  8 ~11 (略)
 標準専任媒介契約約款第7条・専属専任媒介契約約款第7条(有効期間)
   専任媒介契約(専属専任媒介契約)の有効期間は、3か月を超えない範囲で、甲乙協議の上、定めます。
 注)甲は、依頼者。乙は、宅地建物取引業者(媒介業者)(以下同様)。
 同約款第15条・同約款14条(更新)
   専任媒介契約(専属専任媒介契約)の有効期間は、甲及び乙の合意に基づき、更新することができます。
   有効期間の更新をしようとするときは、有効期間の満了に際して甲から乙に対し文書等でその旨を申し出るものとします。
   前2項の規定による有効期間の更新に当たり、甲乙間で専任媒介契約の内容について別段の合意がなされなかったときは、従前の契約と同一内容の契約が成立したものとみなします。 
 標準一般媒介契約約款第8条(有効期間)
   一般媒介契約の有効期間は、3ヶ月を超えない範囲で、甲乙協議の上、定めます。
 同約款第16条(更新)
   一般媒介契約の有効期間は、甲及び乙の合意に基づき、更新することができます。
   有効期間の更新をしようとするときは、有効期間の満了に際して甲から乙に対し文書等でその旨を申し出るものとします。
   前2項の規定による有効期間の更新に当たり、甲乙間で一般媒介契約の内容について別段の合意がなされなかったときは、従前の契約と同一内容の契約が成立したものとみなします。

参照判例

 東京地裁令和3年3月29日 ウエストロー・ジャパン(要旨) 
 宅建業法34条の2第3項の趣旨は、専任媒介契約が当該宅建業者に媒介受託の地位を排他的、独占的に確保させるという点において当該依頼者を強く拘束するものであることに鑑み、当該依頼者の契約締結の自由を確保する観点から専任媒介契約の有効期間を3か月に限定したものと解される。また、一般に、契約更新は、当事者間の合意があれば可能であり、当該契約の有効期間満了までに当事者のいずれからも解約の申出がない場合には自動的に更新される旨の自動更新条項について各当事者が承諾していれば、当該契約は、当事者のいずれからも解約の申出がない限り、自動的に更新されて存続することとなる。しかし、専任媒介契約においてこのような自動更新条項を設けることは、宅建業法34条の2第3項が定める有効期間の規制の潜脱といえることから、同第4項は、一方当事者である依頼者の申出があったときのみ更新できることとし、更新後の有効期間を3か月に限定したものと解することができる。
 同項の上記趣旨に加え、同第10項が同第3項、4項の規定に反する特約は無効とする旨を明確に規定していることに鑑みると、同第3項、4項の規定に反する自動更新条項は完全に無効であり、同条項によって契約が自動的に更新される余地はないと解すべきである。(中略)
 専属専任媒介契約約款第7条1項において、宅建業者の媒介によって目的物件の売買又は交換の契約が成立したとき、宅建業者は、依頼者に対して報酬を請求することができる旨が定められている。本件専任媒介契約は、有効期間の経過をもって終了した。すなわち、本件専任媒介契約は、依頼者のいずれについても、本件借地権付建物の売買契約の成立に至らないまま、終了した。依頼者らにおいて、上記の本件専任媒介契約の終了後、媒介業者との間で新たに本件借地権付建物の売買に係る媒介契約を締結した事実はうかがわれない。
 したがって、媒介業者は、依頼者らのいずれに対しても、媒介報酬請求権を有しないというべきである。

監修者のコメント

 宅建業法第34条の2の媒介契約に関する規制は、昭和53年公布(施行は2年後の55年)の業法改正によって創設されたが、その立法過程において、本相談ケースに関する問題が議論された。当時、媒介契約(仲介委託契約)は、口頭の合意によるものが多く、契約内容も極めて曖昧なものばかりか、その契約期間も、6か月とか1年というもののほか、そもそも契約期間など定めず、成約するまでは無期限と思えるものも存在した。しかし、その際、制度として明文化しようとした「専任媒介契約」は、仲介業者が依頼者を、いわば一人占めしてしまうものであるのに、いつまで経っても成約に至らず、依頼者が他の業者に乗り換えたくても「専任」であるため、それができないのは、依頼者保護の見地から好ましくない。そこで、業者が依頼者を一人占めする、拘束期間を設けるべきことが議論された。その際、業者としては、他の業者に乗り移られない期間はできるだけ長期間のほうが好都合であるのに対し、依頼者としてはその業者に拘束される期間はできるだけ短期間のほうがよいため、消費者団体と業界団体の要望は対立した。その結果、成約に至る期間の実情等を勘案して、最も合理的な期間は、3か月だとして落着をみた。その際、3か月の期間が満了する時に自動更新も依頼者が予め承諾している以上認めてもよいのではないかという意見もあったが、自動更新を認めたのでは、折角3か月を超えられないとした契約期間の制限が実態上潜脱されてしまうということで、この点は大した議論もなく認めないこととされた。その結果が同条の4項の「前項の有効期間は、依頼者の申出により、更新することができる」という条文である。

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