不動産相談

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不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2308-R-0266
貸し駐車場内で利用者が盗難被害に遭ったときの駐車場管理者の責任の行方。

 当社が管理している商業施設の路外駐車場で、駐車していた利用者の自動車内に置いていた金品が盗難被害に遭った。

事実関係

 当社は賃貸の媒介業者である。土地、建物の媒介業務以外に、地主や商業施設所有者から依頼されて、いわゆる月極駐車場である貸し駐車場の借主募集や路外駐車場の管理をしている。多くは、青空駐車場で、区画をロープで区切ったものやアスファルト舗装した月極駐車場であるが、他に路外駐車場を数か所管理している。路外駐車場には、当社従業員の管理要員を配置し、駐車場出入り口にそれぞれゲートを設置して入出庫の管理をしている。駐車場の入り口の駐車場管理規定の掲示板で、「自動車内外に留置された貴重品、その他の物品に関する盗難については賠償責任を負いません」と駐車場管理業者の免責条項を掲示している。入出庫に際しては入庫時に駐車券を発行し、出庫時に返還を受けている。買い物客はレジで買物済の判を押し、駐車場料金は無料になるが、買い物をしない駐車場利用者からは規定の料金を徴収する方式である。
 最近、管理しているスーパーマーケットに付属した路外駐車場に駐車していた同マーケット利用者の自動車内に置いていたセカンドバックが盗難にあった。いわゆる車上荒らしによる被害である。盗まれたバックには買い物に使用する費用以外の現金等が入っていた。被害者は、不審者を見過ごして被害にあったのは、駐車場を管理運営している当社の責任であると主張し、当社に被害金額の賠償を要求している。

質 問

 路外駐車場の管理者である当社は、利用者が駐車していた自動車内に置いていた物品の盗難にあった場合、その損害賠償責任を負うのか。

回 答

1.  結 論
 駐車場管理者は、自動車自体の保管義務はあるが、自動車内外の物品の管理責任は負っておらず、盗難や毀損の損害を賠償する責任はないと解する。
2.  理 由
 駐車場にはいくつかの種類がある。多くは、自動車の出入りが自由にできる、いわゆる青空駐車場であるが、毎月一定の賃料を支払う月極駐車場、都度、駐車する時間に応じて料金を支払うコインパーキング等がある。他に、道路の路面外に設置される自動車の駐車のための施設である路外駐車場がある(駐車場法第2条第2号)。路外駐車場は一般公共の用に供されるもの、大型商業施設に付属した施設利用者の便宜のためのものがある。利用者が限定されているものは、専用駐車場であり、不特定多数が利用する場合は、路外駐車場に該当する。
 路外駐車場の設置には、都道府県知事等への届け出を要し、届け出にあたり、路外駐車場の供用時間、駐車料金、供用契約等を定めることが必要である(同法第13条)。面積が500㎡以上の大型路外駐車場の建設に際しては、構造・設備に関し建築基準法を順守する義務がある(同法第11条)。路外駐車場設置者は運用に当たって、駐車場管理者を置き、入出庫管理をするなど厳格な運用が求められている。
 不特定多数の第三者が出入りすることができる青空駐車場の自動車自体の管理責任は、自動車所有者にあるが、路外駐車場の場合は、路外駐車場管理者に自動車の保管に関し、善管注意義務があり、管理者はその義務を怠った場合のみ保管自動車の滅失・損傷についての責任を負う。通常の管理行為を行っていれば管理者の責任を問われることはない(同法第16条)。
 相談ケースのような駐車場利用者の自動車内の金品の盗難の責任が駐車場管理者にあるか否かが問題になることがあるが、「駐車場管理者は必ずしも自動車内外の物品について直接的に保管の義務を負うものではないから、自動車が当該駐車場に駐車されたまま、その内外の物品がいわゆる車上荒らしや置き引き等第三者の犯罪行為により毀損、滅失したとしても、そのことにより直ちに駐車場管理者に右物品の毀損、滅失についての損害賠償責任は生じない」と管理者の管理責任を否定している裁判例がある。ただし、管理者の過失等により駐車場利用者の自動車自体が盗難に遭い、自動車内の物品に損害が生じた場合には、管理者は、利用者に対して損害賠償責任を負う(【参照判例】参照)。

参照条文

 民法第709条(不法行為による損害賠償)
   故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 消費者契約法第8条(事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)
   次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
  1  事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
  2  (略)
  3  消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
  4  (略)
 駐車場法第2条(用語の定義)
   この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
   (略)
   路外駐車場 道路の路面外に設置される自動車の駐車のための施設であって一般公共の用に供されるものをいう。
  ~五 (略)
 駐車場法第11条(構造及び設備の基準)
   路外駐車場で自動車の駐車の用に供する部分の面積が500平方メートル以上であるものの構造及び設備は、建築基準法その他の法令の規定の適用がある場合においてはそれらの法令の規定によるほか、政令で定める技術的基準によらなければならない。
 同法第13条(管理規程)
   路外駐車場管理者は、路外駐車場の供用を開始しようとするときは、あらかじめその業務の運営の基本となるべき管理規程を定め、これを当該路外駐車場の供用開始後十日以内に都道府県知事等に届け出なければならない。
   前項の管理規程には、国土交通省令で定めるところにより、次の各号に掲げる事項を定めなければならない。
     路外駐車場の名称
     路外駐車場管理者の氏名及び住所(法人にあって「は、その名称及び主たる事務所の所在地並びに代表者の氏名及び住所)
     路外駐車場の供用時間に関する事項
     駐車料金に関する事項
     前号に掲げるもののほか、路外駐車場の供用契約に関する事項
     前各号に掲げるもののほか、国土交通省令で定める事項
  ・④ (略)
 同法第16条(路外駐車場管理者の責務)
   路外駐車場管理者は、その路外駐車場に駐車する自動車の保管に関し、善良な管理者の注意を怠らなかつたことを証明する場合を除いては、その自動車の滅失又は損傷について損害賠償の責任を免かれることができない。

参照判例

 東京地裁平成9年10月30日 判タ979号178頁(要旨)
 一般に、本件駐車場のような路外駐車場において、駐車場管理者は駐車された自動車の保管について善良な管理者の注意を払うべきところ、駐車場管理者の管理下におかれるのは自動車自体であり、駐車場管理者は必ずしも自動車内外の物品について直接的に保管の義務を負うものではないから、自動車が当該駐車場に駐車されたまま、その内外の物品がいわゆる車上荒らしや置き引き等第三者の犯罪行為により毀損、滅失したとしても、そのことにより直ちに駐車場管理者に右物品の毀損、滅失についての損害賠償責任は生じないが、駐車された自動車が駐車場管理者の過失によって第三者に窃取された場合、駐車場管理者は、自動車自体の毀損、滅失についてはもとより、およそ右の過失行為と相当因果関係のある駐車場利用者の損害について賠償の義務を負うと解するのが相当である。

監修者のコメント

 本件の回答のとおり、自動車内の物品については、駐車場管理者は責任を負わないが、きわめてレアーなケースとして、その駐車場では頻繁に車上荒らしや置き引きが発生しているにもかかわらず、何らの注意喚起の表示もしないで、漫然と管理をしていたという場合は、過失による不法行為責任を負う余地がある。そのことが分かっていれば、その駐車場に駐車しなかったという主張もあり得るからである。
 なお、このケースの駐車場では、「自動車内外の貴重品その他の物品の盗難については責任を負わない」旨の掲示をしているが、まさに注意を喚起する意味で大変適切であるが、その表示があるから責任を負わなくてもよいという法的効果が生ずるわけではない。
 駐車場入口に「無断駐車したときは、金3万円を申し受けます。」という類の看板を見掛けるが、これを見て駐車したからと言って当然に3万円の支払い義務が生ずるのではない。不法な駐車を抑止するという事実上の効果があり、意義はあるが、法的効果が生ずるものではない。本ケースの看板表示も法的には同じである。

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