不動産相談

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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2306-B-0321
自宅玄関先に道路に向けた防犯カメラの設置は許されるか。

 当社が媒介した戸建の買主の隣家が玄関先に防犯カメラを設置している。買主の案内時には設置の有無を確認していないが、買主の入居前に設置したのではないかと推測している。

事実関係

 当社は、売買の媒介業者である。当社の媒介で既存戸建を購入した買主から相談があった。購入した戸建は南向きに面しており東西側に隣家がある。買主宅の玄関は、隣家の建物配置と異なり、玄関から道路までのアプローチが隣家より距離がある。
 買主は、隣家の玄関先の軒下に東及び西に向いて2台の防犯カメラが設置してあるのを入居して気が付いたとしている。当社は、現地を確認したところカメラが設置されていた。当社の案内で買主が内見したときには設置されていなかったと記憶しており、最近設置したしたもののようだ。買主は隣家に引越しの挨拶がてらそれとなく尋ねたところ、最近、近隣で空き巣被害があり防犯目的で設置したと話している。防犯カメラは買主の玄関先から道路まで撮影できる角度になっている。もう一台は反対側の家に向けて同じように玄関先と道路に向け設置している。買主は、防犯目的とはいえ、玄関先から出入りする姿がすべて撮影される状態は、隣家から常に監視されているようだと憤っている。

質 問

1.  買主の承諾なしに、隣家が自宅玄関先に防犯カメラを設置し、買主宅の玄関先を撮影することは許されるのか。
2.  買主は、隣家に防犯カメラの撤去や損害賠償を請求することができるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 隣家が設置した防犯カメラの撮影が、買主のプライバシー権の社会通念上受忍限度を超えるか否かにより判断される。
 質問2.について ― 買主のプライバシー侵害が社会通念上受忍限度を超えていれば、防犯カメラの撤去や損害賠償請求が認められることがある。
2.  理 由
⑵について
 近年、防犯目的により、商店街や店舗入口等に防犯カメラの設置が増えている。店舗以外でも防犯や近隣の迷惑行為抑止のためにマンション入口やエントランス、個別住宅をはじめ、オフィスビル内やエレベーター、公共交通機関等、様々な施設に設置されている。防犯カメラで撮影された映像が、警察の捜査資料や犯罪行為の証拠となり、犯罪者が逮捕されることも報道で知るところである。とはいえ、個人の行動や容姿、情報等が本人の承諾なしに撮影されるのは、公開されないまでも撮影される本人にとっては疎ましいことであり、プライバシー侵害のおそれをいだく。
 プライバシー権は、私生活上の事柄を保護し、みだりに他人の目にさらされない権利といえる。この権利は、法律上明文化はされていないが、憲法解釈(憲法第13条)や判例により権利として確立されているものである。プライバシーには数々の事柄があり、プライバシー侵害に該当するかは、個々の事例から判断するしかないが、社会生活上の受忍限度を超えるか否かにより判断されることが多い。防犯カメラによる第三者の撮影行為は、肖像権というプライバシー権の一つとしてとらえられるが、受忍限度を超える場合は、プライバシーの侵害となる可能性がある。SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を始めとする種々のメディアへの掲出は、当然に本人の承諾がなければ肖像権の侵害となるが、公表しなくても、承諾を得ない撮影行為そのものが肖像権侵害となる場合がある。
 隣接の建物に設置され、プライバシー権侵害を争った裁判例では、「人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する」(最高裁平成17年11月10日)を前提に、「ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、撮影の場所、撮影の範囲、撮影の態様、撮影の目的、撮影の必要性、撮影された画像の管理方法等諸般の事情を総合考慮して、被撮影者の人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである」と侵害の有無は諸事情を総合勘案して判断するとし、区分所有建物の共有部分に複数の防犯カメラを設置したことによる近隣住民との争いで「近隣宅の外出や帰宅等という生活状況が把握されることとなっているものであり、結果として、少なくともこの範囲を撮影されることによるプライバシー侵害の程度は大きい」と防犯目的があったとしてもプライバシー侵害を認め、複数カメラ設置のうち1台の撤去と損害賠償請求を認めたものがある(【参照判例①】参照)。
 半面、戸建に設置された防犯カメラについて「本件カメラは、近隣宅の容ぼう等を日常的に撮影することが可能なものであるけれども、一般的な防犯目的に加え、近隣宅による迷惑行為等を防止する目的で設置されたのであって、その設置には一定の必要性が認められる」としたものがある(【参照判例②】参照)。
 近隣関係の希薄化や近隣トラブル、防犯意識の高まりなどにより、今後も防犯カメラの設置は増加すると考えられ、プライバシー権の意識が増すなか、トラブルが増加することが予測される。カメラの撤去要求の裁判所の可否判断は、受忍限度を超えるか等、個々のケースにより異なるが、宅建業者は、媒介する際には設置カメラの撮影がプライバシーを侵すか否かの判断基準を理解の上顧客に向き合う必要があろう。

参照条文

 憲法第13条
   すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
 民法第709条(不法行為による損害賠償)
   故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

参照判例①

 東京地裁平成27年11月5日 判タ1425号318頁(要旨) 
 人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する(最高裁平成17年11月10日)。もっとも、ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、撮影の場所、撮影の範囲、撮影の態様、撮影の目的、撮影の必要性、撮影された画像の管理方法等諸般の事情を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきであると解する。
 本件カメラ撮影場所は屋外であるものの、撮影の範囲は、本件道路のほか、近隣宅玄関入口付近、通用口付近にまで及んでいる。このような場所は、自宅の中ではないものの、そこを通行することは日常生活を営む上で必要不可欠な場所ということができるところ、本件カメラは、近隣宅が日常生活においてこれらの場所を利用する際に常に撮影対象となるものであって、近隣宅の外出や帰宅等という生活状況が把握されることとなっているものであり、結果として、少なくともこの範囲を撮影されることによるプライバシー侵害の程度は大きいというべきである。

参照判例②

 東京地裁令和2年1月27日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 本件カメラは近隣宅の玄関や家の内部を撮影するようには設置されていないこと、本件カメラは固定されており特定人を追跡して撮影する機能はないこと、撮影した映像は別の媒体に移す等の作業をしない限り上書き保存される仕組みであることからすれば,本件カメラの設置の目的は、近隣宅による撮影者宅に対する迷惑行為等を防止するというものであったというべきであり、近隣宅の迷惑行為等を防止する目的を達する以上に、近隣宅の日常的な行動を監視する目的があったとまでは認めることができない。(中略)
 本件カメラは、近隣宅の容ぼう等を日常的に撮影することが可能なものであるけれども、一般的な防犯目的に加え、近隣宅による迷惑行為等を防止する目的で設置されたのであって、その設置には一定の必要性が認められる。

監修者のコメント

 防犯カメラの設置の普及によって、犯罪の検挙率が向上していることは間違いなく、社会的には歓迎すべきことである。しかし、反面、特にマンション、住宅地における設置の増加により、相談ケースのようなトラブル・苦情が増大している。この問題は、回答にあるとおり、設置する側の設置目的とその目的達成のための撮影範囲の必要性と撮影される側のプライバシー権や肖像権の兼合いを天秤にかけて判断すべきことである。そのことは、回答にいう「社会生活上の受忍の限度」を超えるかどうかが判断の基準であるが、考慮されるべき「諸般の事情」のうち、重視されるものは、撮影の目的、撮影の必要性と撮影される者の被侵害感情の程度であろう。
 相談ケースの設置者は、近隣での空き巣被害の防犯目的とのことであるが、その目的達成のためとはいえ隣家の玄関先から道路までの範囲が映し出されるのであり、隣家の家人の出入りが、すべて設置者に分かるというのは、必要最低限の範囲を超えているものと解さざるを得ない。防犯目的を達成するために必要な設置者自身の自宅の周囲の範囲を検討すべきである。「事実関係」を見る限り、参照判例①の判決要旨が当てはまるケースとも言える。したがって、質問との関係で言えば、本件は、買主家族のプライバシー権を侵害しているおそれが大であり、不法行為を根拠にカメラの撤去ないしは撮影範囲の変更の要請ができ、それに応じないときは、精神的損害の賠償請求が認められると解してよい。

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