不動産相談

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2306-B-0320
ローンの申込みを来年度に行う条件付売買契約の締結とその問題点

 建売住宅の買主(自営業者)から、「前年度の所得が少いので、今年度の所得でローンの申込みをしたい。ついては、手付金として売買代金の20%相当額を支払い、その他にもいくらか支払うので、すぐに入居を認めて欲しい。」という申入れを受けた。

事実関係

 当社は、建売住宅の分譲業者であるが、このたび買主(自営業者)から、「前年度の申告所得では所得額が足りないので、今年度の所得額で所得証明をとり、ローンの申込みをしたい。したがって、ローンによる代金の支払いは来年になるが、何とか売って欲しい。もし売ってくれるのであれば、契約時に代金の20%相当額を支払い、更に来年の所有権移転時までいくらかずつでも支払うので、すぐに入居を認めて欲しい。」という申入れを受けた。
 そこで、社内で検討した結果、申入れどおり、今年度の所得でローンが実行されることを条件に売買契約を締結し、その売買契約に基づいてローンが実行されるまでの間は、①物件を買主に賃貸するかたちにするか、それとも、②ローンが実行された場合の毎月のローン返済額相当分を分割払いのかたちにするか、いずれかの方法で、売買契約を締結しようということになった。

質 問

1.  この場合のいわゆる「ローン特約」に関する条件付売買契約は、「停止条件」付の売買契約にした方がよいか、それとも「解除条件」付の売買契約にした方がよいか。
2.  この場合、①の方法で買主にそれなりの額の賃料を支払ってもらうためには、「土地」も含めて賃貸した方がよいか。
3.  ②の方法をとった場合、「割賦販売」の規制を受けることになるか。
4.  本件の手付金の額を、違約金の額として定めることにするが、来年も買主の所得不足でローンが実行されなかったときは、買主の違約になるか。
5.  他に何か注意する点はあるか。

回 答

 質問1.について ― 一般的には、「解除条件」付の売買契約にした方が条件成就後の権利関係が明確になるので、事後の処理がしやすいといわれるが、本件の場合はどの方法をとったにしても、ローンが実行されなかった場合の原状回復の問題が残ることについては、同じである。
 質問2.について ― その必要はない。なぜならば、「建物」の借主は、特段の事情がない限り、建物の使用に必要な範囲内の敷地利用権を有することになるからである(後記【参照判例】参照)。
 質問3.について ― 貴社が物件の引渡し後、1年以上の期間にわたり、かつ、2回以上に分割して「代金」を受領するということになれば、「割賦販売」ということになる(宅建業法第35条第2項)。しかし、本件の場合は「代金」ではなく、「建物使用の対価」として受領することになると解されるので、「割賦販売」には該当しない。
 質問4.について ― 違約になる。なぜならば、買主がいかに努力をし所得を増やそうとしたとしても、結果としてローンが通らなければ、売主に対する約束違反をしたことには変わりないからである。したがって、そのような場合に備えて、「ローン解除」がなされた場合の先行引渡しに伴う建物の減価やその他の原状回復のための費用等の損害について、あらかじめその「予定額」を妥当な範囲内で定めておくということも検討する必要があろう(民法第545条、後記【参照資料】参照)。
 質問5.について ― そもそも、このような前年度に締結された売買契約書をもって金融機関がローンの申込みの受付けをするのかどうかという問題があるので、年収の問題も含めて、そのことについてあらかじめ金融機関に確認してから売買契約を締結すべきであろう。

参照条文

 民法第420条(賠償額の予定)
   当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
   (略)
   違約金は、賠償額の予定と推定する。
 同法第545条(解除の効果)
   当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
   前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
   第1項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
   解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
 宅地建物取引業法第35条(重要事項の説明等)
   (略)
   宅地建物取引業者は、宅地又は建物の割賦販売(代金の全部又は一部について、目的物の引渡し後1年以上の期間にわたり、かつ、2回以上に分割して受領することを条件として販売することをいう。以下同じ。)の相手方に対して、その者が取得しようとする宅地又は建物に関し、その割賦販売の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、前項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない。
     現金販売価格(宅地又は建物の引渡しまでにその代金の全額を受領する場合の価格をいう。)
     割賦販売価格(割賦販売の方法により販売する場合の価格をいう。)
     宅地又は建物の引渡しまでに支払う金銭の額及び賦払金(割賦販売の契約に基づく各回ごとの代金の支払分で目的物の引渡し後のものをいう。第42条第1項において同じ。)の額並びにその支払の時期及び方法
  〜⑨ (略)

参照判例

 最判昭和47年3月30日 判夕276号143頁(要旨)
 建物賃借人は、当該建物使用の目的の範囲内においてその敷地利用権を有する。

監修者のコメント

 本ケースの売買契約のローンに関し、停止条件とするか解除条件とするかは、引渡しを先行させる以上、それほど大きな問題ではない。なぜなら前者であればローンの実行による代金の支払いがあって始めて売買の効力が生ずるのであり、後者であれば、契約成立と同時に売買の効力は生ずるが、ローンが不承認となれば売買が失効するというもので、どちらにせよローンが実行されなかったときの原状回復の面倒さは同じと思われるからである。ただ解除条件付きであっても、代金の全額支払いによって買主に所有権が移転するということであろうから、引渡し後の買主の占有の対価をもらうのであれば、それは「賃料」である。したがって、割賦販売の問題は生じない。

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