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2304-B-0317掲載日:2023年4月
下取りを条件とする買換え客との媒介契約に基づく売買契約の不成立と直接契約の成否
当社は、買換え客の買い物件が、当社の専任の物件で特定したので、その買い換え客との間で買いの専属専任媒介契約を締結し、併せて手持ち物件の売却活動を行ってきたが、6か月経っても手持ち物件が売れなかったため、売り・買いとも話が断ち切れになってしまった。ところが、その後買換え客が、その買い物件の売主(宅建業者)との間で、手持ち物件を下取りさせたうえで、直接購入する契約を締結していた。
事実関係
当社は媒介業者であるが、半年以上前に、ある買換えの顧客が来社し、購入物件を先に検討したいので、いくつか物件を見せて欲しいと言ってきた。そこで、希望の物件をいくつか案内したうえで、その中の専任で受けているA業者の社有物件を強く勧めたところ、「物件は気に入ったが、そのためには、まず手持ちの物件を売却し、その代金で購入物件の代金を支払いたい。」と言ってきた。そこで、早速、買いの物件(A業者の社有物件)について専属専任媒介契約を締結したうえで、手持ち物件の査定に入ったところ、今度は、その手持ち物件を当社で買い取って欲しいと言ってきた。しかし、当社としては物件の買取りはしていないので、「一旦売り出して、どの位で売れるか、様子を見たらどうか。A業者の社有物件については、当社から売り止めにするようA業者に伝えておく。」ということで、その顧客も了解をした。
ところが、その手持ち物件がなかなか希望価格で売れないので、再度の下取りの話になったが、当社としてはあくまでも下取りはできないので、市場で売却して欲しいとお願いしたところ、一旦は納得したが、いつの間にか3か月の媒介契約の期間が過ぎてしまい、一度更新をしたが、それでも売れないため、再度の更新をしないまま、売却の話は断ち切れになってしまった。
そうこうしている間に更に1か月以上が経過し、他社の折込みチラシを見たところ、当該売却物件(手持ち物件)が、A業者の社有物件として売りに出されていた。そこで当社は、A業者にその経緯を聞いたところ、その顧客が1か月位前にA業者のところにやってきて、「手持ち物件の売却を媒介業者に頼んだが、なかなか売れないし、下取りもしてくれないので、6か月経過した時点で売却を断った。ついては、貴社(A業者)の社有物件を購入するので、手持ち物件を下取りして欲しい。」と言ってきたという。
質 問
1. | 当社は、当該顧客のA業者への手持ち物件の売却(A業者の下取り)は、「当社の紹介によって知った相手方」との直接取引に当たると考えているので、専属専任媒介契約約款第11条の規定に基づいて、その顧客に対し、寄与度に応じた媒介報酬を請求したいと考えているが、その請求は認められるか。 |
2. | 当社は、当社が専任で受けているA業者の社有物件をA業者が本件顧客に売却した行為は、「当社の紹介によって知った相手方」との直接取引に当たると考えているので、専任媒介契約約款第14条の規定に基づいて、A業者に対し、寄与度に応じた媒介報酬を請求したいと考えているが、その請求は認められるか。 |
回 答
1. | 結 論 | ||
⑴ | 質問1.について ― 貴社の寄与度に応じた報酬請求は認められないと解される。 | ||
⑵ | 質問2.について ― 貴社の寄与度に応じた報酬請求は認められないと解される。ただし、貴社とA業者との専任媒介契約が更新され、引き続き効力を有していたのであれば、同約款第14条の規定に基づいて、費用の償還請求は可能と考えられる。 | ||
2. | 理 由 | ||
⑴ | ⑵について 直接取引における「媒介業者の排除」とは、媒介の依頼者が、故意に媒介業者の媒介による売買契約の成立を妨げるということであるから、本件の場合に、その事実関係を見る限り、買換えの顧客が、6か月間も手持ち物件の売却活動を行った貴社の媒介行為とそれに基づく買いの売買契約の成立を故意に妨げたとは考えられず、また、本件の取引が、結果的に依頼者の手持ち物件の下取りが条件になっていることからも、A業者が、下取りをしない貴社の媒介行為を故意に妨げたともいえないので、いずれも、貴社の依頼者に対する寄与度に応じた報酬請求は難しいと言わざるを得ない。 |
参照条文
○ | 専属専任媒介契約約款第11条(直接取引) | ||
専属専任媒介契約の有効期間の満了後2年以内に、甲が乙の紹介によって知った相手方と乙を排除して目的物件の売買又は交換の契約を締結したときは、乙は、甲に対して、契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求することができます。 | |||
○ | 専任媒介契約約款第14条(費用償還の請求) | ||
① | 専任媒介契約の有効期間内において、甲が自ら発見した相手方と目的物件の売買若しくは交換の契約を締結したとき、又は乙の責めに帰すことができない事由によって専任媒介契約が解除されたときは、乙は、甲に対して、専任媒介契約の履行のために要した費用の償還を請求することができます。 | ||
② | 前項の費用の額は、約定報酬額を超えることはできません。 |
監修者のコメント
本ケースは、回答の理由と結論のとおり、そもそも媒介契約約款の「直接取引」の要件に該当しない。
また、顧客がA業者の社有物件を購入した行為のみをみれば、形式的には「当社の紹介によって知った相手方」との直接取引に当たりそうであるが、本件は顧客の「手持ち物件の売却」と「新物件の購入」が不可分の関係、言い換えれば、いわば一体の媒介対象であったことを考慮すれば、通常のケースとは異なると考えるべきである。