不動産相談

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不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2304-R-0262
更新の合意をしたにもかかわらず、賃借人が更新料の支払いをしないときの賃貸人からの契約解除の可否。

 賃借人は、事務所賃貸借の更新を望んでいるが、共用部分の賃貸人の管理がずさんだとして、第1回目の更新料を未だ支払わず、2度目の更新時期を迎えている。賃貸人は、賃借人が重ねて更新料を支払わなければ契約解除を要求したいと考えている。

事実関係

 T社は、事務所・店舗等の賃貸専門媒介業者である。T社が、4年前に媒介した期間2年とする事務所の賃貸借契約の2回目の更新時期が迫っている。賃借人は賃貸借契約書の約定に従い更新を希望しているが、賃貸人は、更新拒絶を考えている。拒絶の理由は、2年前の更新時に賃借人は約定があるにもかかわらず、更新料を賃貸人に支払っていない。賃貸人は、再三、賃借人に対して支払いの督促をしているが、賃借人は、いまだに支払いを拒否し続けている。このような状況から、賃借人は、今回の更新時にも更新料を支払わないと推測される。賃貸借契約には、賃貸人と賃借人の合意により更新できる旨の特約があり、更新時には、賃借人は、賃貸人に対し、賃料の1か月分の更新料を支払うことが約定されている。
 T社は、賃借人に、更新料の支払いを拒んでいる事情を確認したところ、賃借している事務所が入っているビルの共用部分の清掃や切れた電球の交換が遅れるなど、ビル管理に関する不満があるようだ。確かに清掃等に行き届かないこともあったようだが、賃借人の賃貸借の目的には影響しておらず、子細な事柄と考える。

質 問

1.  賃借人が、賃借人に対し、賃貸借契約に約定された更新料を支払わなくても賃貸借契約の更新は有効なのか。
2.  賃借人が、更新料の支払いをしないときは、賃貸人は、賃貸借契約の解除をすることができるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 賃貸人と賃借人の間で、更新する旨の合意があれば、更新料の支払いがなくても賃貸借契約は有効に更新されると解する。
 質問2.について ― 賃借人の更新料の不払いに合理的理由がなく、不払いが長期に及ぶと賃貸人と賃借人間の信頼関係の破壊と認められる場合があり、契約解除の原因となる。
2.  理 由
⑵について
 土地や建物の賃貸借契約においては、定期借地及び定期借家契約を除き、契約期間満了後も賃貸人、賃借人が賃貸借の継続を望み、合意更新する場合、更新料の授受がされることが一般的である。賃借人が賃貸人に対して更新料を支払う義務は法律上規定されていないが、半ば、慣習的に行われている。更新料は賃貸借契約で当事者の約束として支払われている。更新料の性格は、「更新料は賃料とともに賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり、その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると、更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当」であるとし、賃借人が居住目的の消費者の場合でも、更新料の額が、賃料の額、賃貸借契約が更新される期間に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法に抵触せず約定の更新料は有効と判断している(最高裁平成23年7月15日判決)。通常、賃貸借契約において、賃貸人は、賃借人との間で更新料の支払の約定があることにより更新に応じることにしたのであり、賃貸人の賃貸経営にとって更新料の受領は大きな期待がある。
 賃借人が、賃貸人に対し更新時期に更新料を支払わない場合に、当該更新契約が有効か否かの判断が求められるが、裁判例では、「更新特約に基づき本件賃貸借契約の更新を行う意思が当事者双方にある場合には、当事者の合理的意思解釈として、更新時期に先立って更新料の支払がされなかったとしても、本件更新特約に基づいて本件賃貸借契約は更新される」とし、更新そのものの有効性を認めているが、「その代わりに、賃借人は賃貸人に対して更新料支払債務を負ったものというべき」と賃借人に更新料支払債務が生じ、支払いは免れないとしている(【参照判例①】参照)。
 賃借人の更新料不払いにおいて、賃貸人から契約解除をし得るかについて、「更新料の支払は、賃料の支払と同様、更新後の本件賃貸借契約の重要な要素として組み込まれ、その賃貸借契約の当事者の信頼関係を維持する基盤をなしているものというべきであるから、その不払は、右基盤を失わせる著しい背信行為として本件賃貸借契約それ自体の解除原因となり得るものと解する」との賃貸人の契約解除を認容した最高裁判例(【参照判例②】参照)を引用し、賃貸借契約を2度更新したにも拘わらず、賃借人が、2度とも更新料の支払をしなかったケースで、「本件更新料の支払は、更新後の本件賃貸借契約の重要な要素として組み込まれ、本件賃貸借契約の当事者の信頼関係を維持する基盤をなしているものといえる。したがって、本件更新料の不払は、不払の態様、経緯その他の事情からみて、賃貸人と賃借人間の信頼関係を著しく破壊すると認められる場合には、更新後の本件賃貸借契約の解除原因となり得る」として、賃貸人の解除を認めている(【参照判例①】参照)。
 賃貸借は、賃貸人がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、賃借人がこれに対してその賃料を支払うことを約する契約であり(民法第601条)、賃借人が支払債務を履行しない場合は、賃貸人は、履行遅滞を理由に賃貸借契約の解除ができるのである(同法第541条)。

参照条文

 民法第540条(解除権の行使)
   契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
   (略)
 同法第541条(履行遅滞等による解除権)
   当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
 同法第601条(賃貸借)
   賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。

参照判例①

 東京地裁平成29年9月28日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 本件更新特約では本件賃貸借契約を更新するには更新料を支払わなければならないこととされているが、本件更新特約に基づき本件賃貸借契約の更新を行う意思が当事者双方にある場合には、当事者の合理的意思解釈として、更新時期に先立って更新料の支払がされなかったとしても、本件更新特約に基づいて本件賃貸借契約は更新され、その代わりに、賃借人は賃貸人に対して更新料支払債務を負ったものというべきである。
 賃貸人としては、賃借人が本件更新料を支払うことを合意したからこそ本件賃貸借契約を2回にわたり更新したのであり、他方、賃借人としても、本件更新料を支払うことを合意して本件賃貸借契約の更新を得たのであるから、本件更新料の支払は、更新後の本件賃貸借契約の重要な要素として組み込まれ、本件賃貸借契約の当事者の信頼関係を維持する基盤をなしているものといえる。したがって、本件更新料の不払は、不払の態様、経緯その他の事情からみて、賃貸人と賃借人間の信頼関係を著しく破壊すると認められる場合には、更新後の本件賃貸借契約の解除原因となり得るものというべきである。

参照判例②

 最高裁昭和59年4月20日 判タ526号129頁(要旨)
 土地の賃貸借契約の存続期間の満了にあたり賃借人が賃貸人に対し更新料を支払う例が少なくないが、その更新料がいかなる性格のものであるか及びその不払が当該賃貸借契約の解除原因となりうるかどうかは、単にその更新料の支払がなくても法定更新がされたかどうかという事情のみならず、当該賃貸借成立後の当事者双方の事情、当該更新料の支払の合意が成立するに至った経緯その他諸般の事情を総合考量したうえ、具体的事実関係に即して判断されるべきものと解するのが相当であるところ、前記事実関係によれば、本件更新料の支払は、賃料の支払と同様、更新後の本件賃貸借契約の重要な要素として組み込まれ、その賃貸借契約の当事者の信頼関係を維持する基盤をなしているものというべきであるから、その不払は、右基盤を失わせる著しい背信行為として本件賃貸借契約それ自体の解除原因となりうるものと解するのが相当である。

監修者のコメント

 個人が居住用の建物を賃借する消費者契約法の適用対象となる契約以外の賃貸借でも、かねてから更新料の支払特約の有効性が争われてきた。しかし、裁判例の主流は、その支払合意を有効としている。合意の内容が、信義則に反するとか、権利の濫用に当たるといったケースは別として、合意した以上守らなければならない。
 更新の有無、解除の可否については、まさしく回答のとおりであり、付け加えるべきことはない。

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