不動産相談

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2304-R-0261
抵当権付土地上の未登記建物の賃貸借と競売の場合の対抗関係

 土地に抵当権の登記がなされているが、建物が未登記の場合に、その建物について賃貸借契約を締結したときの賃借人と土地の競落人との対抗関係はどうなるか。その際、法定地上権の成立や土地・建物の一括競売の問題はどうなるか。

事実関係

 当社は、ある地主から、以前に息子夫婦が住んでいたという建物の賃貸借の媒介を依頼された。しかし、その建物は未登記で、土地についてだけ抵当権の登記がなされている。

質 問

1.  このような建物の賃貸借を媒介することはできるか。
2.  もし現状のまま賃貸借の媒介をすることができるとした場合、土地の抵当権が実行された場合、その競落人と建物の賃借人との対抗関係はどうなるか。その場合、法定地上権の成立や土地・建物の一括競売の問題はどうなるか。

回 答

 質問1.について ― 媒介することはできるが、その前に、建物についてなぜ保存登記をしていないのか、建物を追加担保として抵当権者に提供する義務がないのか等を地主に確認し、義務があるのであれば、建物の保存登記をし、抵当権の登記もしたうえで賃貸に出すべきである。しかし、抵当権者が他の共同担保との関係で、強いて追加担保をとらない場合もあるし、中には追加担保の提供約定がないケースもないわけではないので、そのような場合であれば、現状のまま賃貸に出すことは可能であるが、法律関係が複雑になる可能性があるので、決して好ましいことではない。
 質問2.について ― 現状のまま土地の抵当権が実行された場合、その土地上の建物が地主の所有物であり、かつ、土地への抵当権の設定当時すでに建物が建てられていたとすれば、建物の存立のために法定地上権が成立するので(民法第388条)、たとえ土地の競売によって土地の所有者と建物の所有者が別々になったとしても、建物の賃借人は、その土地の競落人すなわち土地の新所有者に対し建物の賃借権を対抗することができる(賃借人は、そのまま建物に住んでいられる)。なぜならば、建物については、その保存登記がなくても法定地上権が成立するし(【参照判例】参照)、その賃借人に対する建物の所有者・賃貸人は、その法定地上権を取得する地主だからである。
 しかし、本件の土地上の建物がもし抵当権設定当時から息子夫婦の所有物だとすれば、その建物のために法定地上権は成立しないので(同法第388条)、仮にその建物が抵当権の登記より前に建てられたものであるとしても、建物の保存登記がない以上、息子夫婦が他に土地の競落人に対抗できる土地の利用権の存在を立証できなければ、建物は存立基盤を失い、収去せざるを得なくなり、建物の賃借人も建物を明け渡さなければならなくなる。ただ、その建物が土地に抵当権の登記がなされた後に建てられたものである場合には、土地の抵当権者は、その土地上の建物も一緒に競売に付すことができるので(同法第389条)、その場合には、通常競落人は土地と建物を一緒に競落することになり、競落人がそのまま賃借人の継続入居を認めれば、賃借人は、その競落人(新所有者)との間で新たな建物賃貸借契約を締結することにより入居が可能となるが、継続入居を認めなければ、この建物の賃借権はもともと建物を収去しなければならない土地の抵当権の登記に後れる賃借権なので、その土地・建物の一括競売による競落人には対抗できず、建物を明け渡さなければならなくなる。
 なお、この一括競売の申立においても、息子夫婦が土地の競落人に対抗できる土地の利用権を有している場合には、申立できないとされているが(同法第389条第2項)、本件の場合はもとより、そのようなケースというのは実務上極めて稀であろう。

参照条文

 民法第388条(法定地上権)
   土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
 同法第389条(抵当地の上の建物の競売)
   抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。
   前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。

参照判例

 大判昭和14年12月19日民集18巻1583頁
 建物は、抵当権設定当時実際に存在しておればよく、所有権保存登記がなくても法定地上権の成立を妨げない。

監修者のコメント

 本件における土地の抵当権と建物賃借権の対抗関係は回答に付け加えるべきことはないが、媒介の観点から注意すべきことは、建物が未登記であることや、土地に抵当権が設定されていることなどの客観的事実を重要事項説明書の登記記録の欄に誤りなく記載して説明すれば、こと足りると考えないことである。とくに、建物賃借権が競売に対抗できないケースにおいては、そのような法律効果となることまで説明しなければならないことに注意されたい。

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