不動産相談

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不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2302-B-0316
宅建業者がチラシ配布のために集合ポストのあるマンション内に立ち入ることができるか。

 新規開業した宅建業者である。地元に特化した営業活動を考えている。売物件の収集及び物件情報提供のために頻度の高いチラシのポスティングを企図している。

事実関係

 当社は開業間もない宅建業者である。売買の媒介業務を中心に営業活動をしている。地元では多くの同業者がいるが、新規開業業者として他社と差別化した営業活動を考えている。昨今、インターネットの普及により、各社とも物件情報を自社のホームページや不動産情報サイトに掲載していて、新聞折込みチラシやポスティングによる配布をしている宅建業者は減少している。チラシは印刷や配布費用がかかり、物件情報掲載に手軽でかつ効果的、安価なネットの活用にシフトしている。
 このような環境の中、当社は、売物件情報を掲載したチラシ及び売却物件の収集をポスティングで消費者に直接情報に提供することを企図している。ポスティングは効果が見込めないと考えている同業社も多いが、消費者の居住行動は、遠方への転勤は別として、子の学区内とか、通勤通学になじみの地域など、近隣で住み換えているケースも多いと聞いている。
媒介の基本は、自社が、売却物件の依頼をいかに数多く受けられるかであると考えている。さらに、後発業者として地元に自社の存在をアピールすることも目的である。売物件の収集とともに、売却依頼を受けた物件情報をスピーディーに消費者に提供したいと考えている。そのためには、ポスティングの頻度を高くすることが効果的である。極端に言えば、毎日のように消費者がチラシを目にすれば、自社の知名度もアップし、住み換えを思い立った消費者の自社への問合せを期待している。
 チラシのポスティングは、当面は社員で地域を限定して行い、効果を確認した後は、頻度アップと範囲の拡大のためポスティング専門業者に依頼することも考えている。具体的な配布対象は、分譲マンションと一戸建は売却物件の収集を狙い、賃貸マンションやアパートは持ち家の一次取得層への物件情報提供を考えている。

質 問

1.  チラシをポストに配布する行為(ポスティング)を禁止する法律はあるか。
2.  分譲及び賃貸マンションのエントランスに設置されている集合ポストにポスティングしても問題ないか。
3.  一戸建ての敷地内のポストにポスティングしてもよいか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― ポスティングを直截的に禁止する法律はない。
 質問2.について ― ポスティングを禁止する貼り紙がある場合やマンション管理人から投函をしないように告げられたときはするべきでない。
 質問3.について ― ポスティングそのものに違法性はないが、無断で立ち入ったときは住居侵入罪が適用になる場合がある。
2.  理 由
⑵⑶について
 宅建業者は、自社物件や媒介物件の販売や売却物件収集のため、様々な広告活動を実施している。近年は、インターネットの進展によりネットによる広告が主流となっている。ネット広告は業者にとって待ちの営業と言え、消費者が検索をしなければ情報が届かない営業方法である。業者が直接消費者に届けるためには新聞折込やポストへのチラシ投函の方法がある。一定地域内に広告する手段として効果的であるといえる。しかし、宅配する新聞の購読率が低下し、地域を網羅することが難しくなっている。ポスティングは、一戸建て、分譲マンション、賃貸マンション等、的を絞ったターゲットに情報を届けるには有効である。自社従業員で投函することができ、ポスティング専門業者も存在する。不動産広告のみならず、地元の商店や飲食のデリバリー業者、不用品買取業者、建物修繕業者等の民間業者のみならず、市区町村の広報や近隣の水道等インフラ整備工事のお知らせ等の公的な告知など様々な業種の広告・広報物の配布が行われている。
 広告物等を個人のポストに投函する行為であるポスティング自体を規制する法律は存在しない。ポストは、郵便物やその他の配布物を受け取るものである。よくポスティングは違法行為であると言われるが、ポスティング自体が違法なのではなく、ポスティングに伴う行為が他の法律に抵触する場合がある。その典型は、住居侵入罪である(刑法第130条)。ただし、違法性の要件は、「正当な理由がない」のに、「住居等に侵入」する行為である。正当な理由があれば、住居等に侵入しても違法ではないのである。郵便局員や宅配業者等が、郵便物を投函、配達する行為には正当な理由があり、違法性がないことは自明であろう。「住居」は、建物の内部への侵入のみならず、「その家屋の附属地」である建物の敷地も住居の一部と解している(【参照判例①】参照)。
 宅建業者等がチラシを配布するためにマンションや一戸建ての敷地内に立ち入ることは、商行為の一つであるが、ポスティングを禁止する法律がなくても、「正当な理由」として是認されるものではないであろう。敷地内にチラシ投函禁止の貼り紙やステッカー等がある場合や投函禁止を申し入れされているときは投函すべきでない。公道に面しているポストに禁止の貼り紙等がなければ投函することは問題ないが、敷地内のポストへの投函は注意が必要である。また、マンションの集合ポストへの投函は、管理人の許可を得て行う必要があり、無断で投函すると住居侵入で訴えられることもあろう。また、「入ることを禁じた場所に正当な理由がなくて入った者」は軽犯罪法(第1条第1項第32号)、不動産広告は直接関係ないが、ピンクビラ等配布行為(東京都・迷惑防止条例第7条の2第1項第3号)はそれぞれ罰則が科せられる。
 ポスティングで裁判になるケースは稀であるが、マンションの共有廊下に立ち入り、戸別ポストに政治ビラを投函した行為に対し、立入人は政党ビラの投函行為を表現の自由であると主張したが、共用部分は住居に当たるとして、立ち入った行為を住居侵入と認め、憲法(第21条第1項)の表現の自由には違反するものでなく、敷地内への無断立入りを有罪とした裁判例がある(【参照判例②】参照)。
 宅建業者が、広告宣伝の手段としてポスティングをすること自体に問題はないものの、むやみに敷地内に立ち入る行為は避けたほうがよいであろう。マンション内にチラシの配布目的で立入りを禁止している貼り紙等があったり、管理人等から禁止を告げられた場合は、投函しないことである。投函の許可を得られたうえで行うべきである。戸建への投函も公道に面してポストが設置している場合は原則投函は許されるであろうが、ポストに投函禁止の貼り紙等があるときは避けるべきである。宅建業者の従業員またはポスティング業者による投函後に投函した住居の住人から苦情があったときは、謝罪し、再度の投函は控えるべきであろう。禁止住宅は従業員間で共有し、ポスティング業者にも徹底を図ることも重要である。ポスティングを続けた場合、自社の評判が悪くなり顧客減になったり、警察へ訴えられることも考えられる。

参照条文

 憲法第21条
   集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
   (略)
 刑法第130条(住居侵入等)
   正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
 軽犯罪法第1条
   左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
    ~三十一 (略)
    十二 入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入った者
    十三・三十四 (略)
  ~④ (略)
 東京都・公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(略称「迷惑防止条例」)第7条の2(ピンクビラ等配布行為等の禁止)
   何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
    ・二 (略)
     みだりに人の住居等にピンクビラ等を配り、又は差し入れること。
  ・③ (略)

参照判例①

 東京高裁昭和30年8月16日(要旨)
 刑法第130条にいわゆる住居とは、人の起臥寢食に用いる場所をいうものであるが、家屋が住居に使用されている場合には、その家屋の附属地として専ら住居者が使用し、外来者がみだりに出入することを禁じているものと一見して認識され、又は設備によって区画された場所はこれを住居の一部とみるべきものと解すべきである。

参照判例②

 最高裁平成21年11月30日 判タ1331号79頁(要旨)
 本件マンションの構造及び管理状況、玄関ホール内の状況、上記はり紙の記載内容(パンフレット等広告の投函等の禁止)、本件立入りの目的などからみて、本件立入り行為が本件管理組合の意思に反するものであることは明らかであり、立入人もこれを認識していたものと認められる。そして、本件マンションは分譲マンションであり、本件立入り行為の態様は玄関内東側ドアを開けて7階から3階までの本件マンションの廊下等に立ち入ったというものであることなどに照らすと、法益侵害の程度が極めて軽微なものであったということはできず、他に犯罪の成立を阻却すべき事情は認められないから、本件立入り行為について刑法130条前段の罪が成立するというべきである。(中略)
 本件立入り行為をもって刑法130条前段の罪に問うことは、憲法21条1項に違反するものではない。
 東京高裁平成19年12月11日 判タ1271号331頁(要旨)※上記控訴審
 本件マンションの構造、利用、管理等の状況に照らすと、その共用部分は、分譲された住戸部分に付随しており、その住民らが区分所有者として構成する管理組合を通じて共同して利用、管理することが当然に予定されていて、住民らの生活の平穏に配慮する必要が強く認められる空間であるといえるから、各住戸と一体をなして刑法130条前段の「住居」に当たると解される。

監修者のコメント

 住居侵入罪における「侵入」とは、住居の平穏を害するような態様における立入りをいうので、マンションの集合ポストにチラシを入れるための立入りは、これに当たらないであろう。しかし、法的な問題は別として、あくまでも営業活動の一環としてのポスティングである以上、業者の信用を落とす結果となっては、元も子もない。回答にあるとおり、慎重に検討すべきである。

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