不動産相談

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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2212-R-0257
保証人を立てることを約定した賃貸借契約において、賃借人が保証人を立てられなかったときの契約の行方。

 賃貸人の契約条件で賃借人は連帯保証人を立てることになっていたが、賃借人は早期の契約を望み、保証人の署名前に契約の締結をした。その後、当社は再三、保証人の署名を求めたが、いまだに署名が得られていない。賃貸人は契約解除を望んでいる。

事実関係

 当社は、賃貸の媒介業者である。当社に来店した入居希望者に物件を紹介して案内したところ、ワンルームマンションを気に入り、賃借したいとの申し入れがあったので、当社は、入居申込書を取得した。申込書には賃借人の住所、氏名、職業、年収のほか、連帯保証人予定者の記載欄がある。連帯保証人予定者についても住所、氏名のほか申込者との続柄、職業、年収を記載する書式になっている。申込者の連帯保証人は、隣町に居住の義兄が記載されていた。申込者は当社営業エリア内にある中堅工場の従業員であり、当社は従前からその工場従業員の賃貸借契約の媒介を数多く行っている。申込者の住所は工場の社員寮が記載され、年収は年齢に見合った額であった。当社は、借主審査のため申込書をファクシミリで賃貸人に送付し、賃貸人の了解を得たので、申込者に、賃貸人の了解が得られた旨を連絡した。賃借人は、5日後の入居を希望しており、翌日に賃貸借契約を締結したいと申し入れてきた。
 当社は、翌日、賃貸借契約書を作成し、賃貸人の署名捺印を取得した後、賃借人に重要事項説明をして契約書に署名捺印を取得した。契約書には、連帯保証人の署名捺印が必要であるが、賃借人は入居まで日にちがなく、賃借人が、保証人の署名捺印を取得するということであったので、契約書2通を賃借人に預けた。契約に必要な金銭は当社が預かり、後日賃貸人に支払うことにした。
 当該マンションは、全てワンルームであり、入居者の年収はさほど高くなく、若年層が大半である。そのためもあり、従来から保証人を立てることを賃貸人の契約条件としていた。
 入居予定日に、賃借人が来店し、当社に鍵の引渡しの要求があったので、契約書の調印も済んでいることもあり、預かっていた鍵を賃借人に渡した。その際、賃借人に対して、賃貸人用の契約書の返還を求めたが、保証人予定者が出張のため、署名捺印は得られていないとの理由で提出されなかった。当社は、速やかに返還するように促したところ、2~3週間後には提出できるとの返答であった。当社は、賃借人に入居後も再三契約書の提出を求めていたが、いろいろ理由を付けて提出されず、6か月が経過してしまった。その後、賃借人とのやり取りの中で、賃借人は、契約した時期頃に勤務先を退職し、社員寮の退去を迫られていたこと、現在はアルバイトをしていることが判明した。また、申込書に記載された保証人の存在や存在していても了解を得られているかが不明であり、現時点で保証人を立てられていないことは明らかだ。

質 問

1.  連帯保証人を立てることができない場合でも賃貸借契約は成立するのか。
2.  連帯保証人を立てることが賃貸条件で、賃借人が保証人を立てられないことが明らかになった場合、賃貸人は、契約を解除することができるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 保証人の署名の有無は賃貸借契約の要件に該当せず、当事者が賃貸借契約書に署名すれば契約は成立すると解する。
 質問2.について ― 保証人を立てることが契約の条件になっている場合、賃貸人は、賃借人の不履行を理由に、契約解除できる可能性がある。
2.  理 由
⑵について
 賃貸借契約は、賃貸人が賃借人に対し賃借物の使用収益をさせることを約束し、賃借人がこれに賃料を支払い、契約が終了したときに賃貸物を返還することを約束することによって成立する諾成契約である(民法第601条)。法律的には、口頭でも可能であり、必ずしも契約書を要しない。しかし、宅建業者が賃貸借の媒介をするときは、賃貸借契約の成立に際し、実質的には、契約書の作成が義務付けられており(宅建業法第37条)、原則として、賃貸借契約書の作成をもって初めて両当事者の意思が確定的となり、その時点で契約が成立する。契約書を作成して賃貸借契約の締結とする場合、同一の契約書に貸主、借主の双方が署名ないし記名押印して契約書を作成することが通例である。本来は、連帯保証人の存在や意思確認のために保証人欄の署名押印を確認して、賃貸人が署名押印するのが通例であるが、連帯保証人欄に署名押印することが予定されていたとしても賃借人が契約書に署名押印し、賃貸人が契約金を受領し、賃借人に契約書を交付すれば賃貸借契約が成立したものと解される。賃借人に契約書を交付した時点で、賃貸人は、保証人の署名押印はその後にすることを了承したものとされる。
 一方、賃貸借契約において賃料の支払義務は賃借人の主要な義務であり、賃借人が賃料の支払能力を十分に有するかどうかは、賃貸人にとって主要な関心事である。賃貸人は、連帯保証人が不存在のままでは、賃借人が賃料を不払した場合の保証がなく、本来であれば、賃貸借契約を認めない可能性がある。賃借人が、合理的期間内に、申込書に記載された連帯保証人を立てることは、賃貸借契約に基づく契約関係を継続していく上での不可欠の前提である。
 賃借人が、長期間連帯保証人を立てず、保証人を立てるための真摯な努力をしたことがうかがわれない場合は、賃貸借契約における賃貸人と賃借人との間の信頼関係を明らかに破壊する事実であるとして、賃貸人の契約解除請求を認容した裁判例がある(【参照判例】参照)。
 媒介業者は、賃貸借契約において保証人を立てることが賃貸人の契約条件であるときは、連帯保証人の意思確認、署名の自書と実印の押印、印鑑証明書の取得または提示及び収入証明書の提出を求めることが必要であろう。賃借人が契約書に署名捺印するときに、保証人の意思確認や契約内容を理解させるために、保証人に同席を求めることも一法である。

参照条文

 民法第206条(所有権の内容)
   所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
 民法第540条(解除権の行使)
   契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
   (略)
 民法第601条(賃貸借)
   賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。

参照判例

 東京地裁平成25年7月17日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 一般に賃貸借契約は、諾成契約であり、貸主が借主に対し物の使用収益をさせることを約束し、借主がこれに賃料を支払うことを約束することによって成立し(民法601条)、契約書の作成その他の方式を必要としない。しかしながら、当事者間に従前から一定の関係がある場合は格別、不動産業者を介して建物賃貸借の取引が行われるような場合、賃貸借契約の成立に際し、賃貸借契約書の作成がされることが通常であり、その場合、原則として、賃貸借契約書の作成をもって初めて両当事者の意思が確定的となり、その時点で契約が成立したものと認めるのが相当である。(中略)
 賃貸借契約書を作成して賃貸借契約の締結とする場合、同一の契約書に貸主、借主の双方が署名ないし記名押印して契約書を作成することが通例であり、本件契約書も、貸主欄、借主欄が設けられているから、そのような作成手続を前提としたものと認めることができる。(中略)
 賃貸借契約の締結手続としては、本来、連帯保証人が連帯保証人欄に記名(ないし署名)押印することと契約書2通をそれぞれが保管することが予定されていたといえ、本件契約書の作成手続は異例なものということができる。(中略)
 賃貸人は、賃借人側の事情により、原則とは異なり、先に賃借人の署名押印をして、保証人の署名押印はその後にすることで了承したというべきである。そして、媒介業者が、賃借人から本件契約書に署名押印をもらうのと併せて、賃借人から3月分の日割り賃料、敷金、鍵代金等を受領し、媒介業者が賃貸人の妻に賃借人から受領した賃料等を交付した事実を併せ考慮すると、賃貸人としては、本件契約書に賃貸人の署名押印をして賃借人側に交付した時点で、本件建物を使用収益させることを承諾したとみるのが相当であり、遅くとも本件契約書を賃借人が受領した時点で、本件賃貸借契約が成立したものと認めるべきである。(中略)
 賃貸借契約において賃料の支払義務は賃借人の主要な義務であるから、賃借人が賃料の支払能力を十分に有するかどうかは、賃貸人にとって重要な関心事である。(中略)賃借人の支払能力については、本件賃貸借契約締結時に、無視できない不安があったというべきである。そうすると、本件賃貸借契約においては、本件申込書に記載された連帯保証人が確実に連帯保証するということが賃借人の支払能力の不安を解消する重要な要素であったということができる。そして、本件契約書では、本来、連帯保証人欄に連帯保証人の署名押印を徴することが予定されており、現に、賃貸人としては、借主において連帯保証人を付けることが通常であり、それを確認してから貸主欄に署名押印するのが通例であり、連帯保証人が不在のままでは、賃料不払の場合の保証がなく、本来であれば、本件建物の賃貸は認めなかったのである。これらの事情に照らせば、賃借人が合理的期間内に、本件申込書に記載された連帯保証人を立てることは、本件賃貸借契約に基づく契約関係を継続していく上での不可欠の前提であったということができる。そうであるところ、賃借人は、契約締結時から解除の意思表示の時点まで約6か月があったのに、連帯保証人を立てておらず、また、これを立てるために真摯な努力をしたとはうかがわれないのであって、この事実は、それ自体で、本件賃貸借契約における賃貸人と賃借人との間の信頼関係を明らかに破壊する事実であるというべきである。

監修者のコメント

 本相談ケースは、回答のとおり、賃貸借契約の債務不履行を理由とする解除ができると思われるので、具体的には、1カ月くらいの期限を設けて内容証明郵便をもって保証人をつけるよう求めるという断固たる意思を示すことが適切である。
 なお、法律理論としては、保証人をつけるということは、不動産賃貸借契約の重要な要素であるので、賃貸借契約の錯誤による取消し(民法第95条)の主張も可能である。

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