不動産相談

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相談内容:不動産取引に関する相談(消費者、不動産業者等のご相談に応じます)

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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2210-B-0310
マンション管理費等の遅延損害金を消費者契約法が規定している年14.6%を超える利率とすることの是非。

 当社がマンション売買の媒介をした買主が、管理費等を滞納し、管理組合から支払いの要求をされているが、管理規約により遅延損害金の利率が30%である。買主は、不当な利率であると支払いを拒否している。

事実関係

 当社は、売買の媒介業者である。2年前に既存マンションの売買仲介をした買主が、直近6か月間、マンションの管理費と修繕積立金を滞納している。管理組合は、その買主に対して延滞している管理費等の支払いを求めているが、遅延損害金の利率は30%である。買主は当社に対して、購入の際の重要事項説明書に遅延損害金の利率が記載されておらず、説明がされていないと抗議している。当社は、重要事項説明書に遅延損害金の利率を記載しなかったが、管理規約を重要事項説明書に添付し、買主に対し、区分所有者が共同生活をするうえで大事な項目が記載されているので読んでおくようにと伝えている。管理規約には、管理費等を延滞した場合の遅延損害金に関する記載もある。
 買主は、管理規約に記載があるのは承知しているが、そもそも買主は個人であり、消費者契約法が適用になり、同法に規定されている遅延損害金の上限金利である14.6%を超えた部分は同法に違反し無効であると主張し、上限金利を超える金額の支払いを拒否する意向を示している。

質 問

1.  マンション管理組合は、消費者契約法の事業者に該当するか。
2.  マンション管理組合は、管理費等が未納の区分所有者に対して、管理規約に定めた利率年30%の遅延損害金を請求することができるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― マンション管理組合は、区分所有者で構成された団体であり、消費者契約法の事業者に該当すると解される。
 質問2.について ― マンションの管理規約は、消費者契約法の適用対象である消費者契約に該当しないので、マンション管理組合は、公序良俗に反しない限り、自由に遅延損害金の利率を定めることができる。
2.  理 由
⑵について
 消費者契約法は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、困惑した場合等について契約の申込み等を取り消すことができ、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするものである(消費者契約法第1条)。そして、「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人であり、「消費者」とは、事業者を除く個人であり、「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約である(同法第2条第1項~第3項)。消費者と事業者との間で結ぶ契約において、遅延損害金等の損害賠償の額を予定する場合、遅延損害金の利率の上限は年14.6%と規定されていて、これを超える部分については無効である(同法第9条第2項)。
 管理組合が事業者に該当するか否かは、ともかく「マンションの管理規約は対等当事者で構成された団体の自治規範であり、非対等な契約当事者間の消費者契約とは異なり、消費者契約法の適用対象とならない」と解する裁判例がある(【参照判例】参照)。
 民法の損害賠償額に関する規定では、金銭の給付を目的とする債務の不履行について、その損害賠償の額は、法定利率によって定めるとしているが、当事者間で定める約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率によるとしており(民法第419条)、さらに、当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができ(同法第420条)、その額は当事者の自由意思にゆだねられている。
相談ケースの遅延損害金を管理規約で年30%の規定することが妥当であるかについて、上記裁判例は、「管理費及び修繕積立金の未払に対する遅延損害金について年30%と定めていることが公序良俗に反すると認めるべき事情はない」と容認している(【参照判例】参照)。
しかし、管理規約による遅延損害金の利率の制限はないものの、公序良俗に反するときは、高利率の遅延損害金が認められない場合があることに留意が必要であろう。
 また、マンション標準管理規約は、遅延損害金に関し、具体的な利率は明示していないが、同規約コメントに「管理費等は、マンションの日々の維持管理のために必要不可欠」とし、「管理組合による滞納管理費等の回収は、手間や時間コストなどの回収コストが膨大となり得ること等から、利息制限法や消費者契約法等における遅延損害金利率よりも高く設定することも考えられる」と消費者契約法の適用外であることを明示している(国土交通省・マンション標準管理規約(単棟型)第60条及び同規約コメント第60条関係④)。利息制限法の利率の上限は、元本の額が10万円未満の場合の最高利率が年20%であるが、管理規約ではこれを上回る利率を規定することも可能なのである。
 なお、管理規約等に遅延損害金の定めがない場合は、民法に規定されている法定利率である年3%が適用される(民法第404条)。

参照条文

 民法第90条(公序良俗)
   公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
 同法第404条(法定利率)
   利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
   法定利率は、年3パーセントとする。
   前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を1期とし、1期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
  ・⑤ (略)
 同法第419条(金銭債務の特則)
   金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
  ・③ (略)
 同法第420条(賠償額の予定)
   当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
  ・③ (略)
 建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第30条(規約事項)
   建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
  ~⑤ (略)
 利息制限法第1条(利息の制限)
   金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
     元本の額が10万円未満の場合 年2割
     元本の額が10万円以上100万円未満の場合 年1割8分
     元本の額が100万円以上の場合 年1割5分
 消費者契約法第1条(目的)
   この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合等について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか、消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
 同法第2条(定義)
   この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。
   この法律(第43条第2項第2号を除く。)において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。
   この法律において「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう。
   (略)
 同法第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
   次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
     (略)
     当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が2以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年14.6パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分
 国土交通省・マンション標準管理規約(単棟型)第60条(管理費等の徴収)
   (略)
   組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理
組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。
  〜⑥ (略)
 同省・同コメント 第60条関係
  〜③ (略)
   滞納管理費等に係る遅延損害金の利率の水準については、管理費等は、マンションの日々の維持管理のために必要不可欠なものであり、その滞納はマンションの資産価値や居住環境に影響し得ること、管理組合による滞納管理費等の回収は、専門的な知識・ノウハウを有し大数の法則が働く金融機関等の事業者による債権回収とは違い、手間や時間コストなどの回収コストが膨大となり得ること等から、利息制限法や消費者契約法等における遅延損害金利率よりも高く設定することも考えられる。
  ・⑥ (略)

参照判例

 東京地裁平成20年1月18日 ウエストロー・ジャパン(要旨) 
 管理費等未払いの区分所有者は、本件マンションの管理規約の第〇〇条〇項が管理費及び修繕積立金の未払に対する遅延損害金について年30%と定めていることについて、消費者契約法が施行された平成13年4月1日以降、同法が定める損害賠償の予定の上限である14.6%を超える部分は公序良俗に反し無効であると主張している。
 しかし、管理組合が主張するように、マンションの管理規約は対等当事者で構成された団体の自治規範であり、非対等な契約当事者間の消費者契約とは異なるから、消費者契約法の適用対象とならないことはもとより、同法の趣旨を及ぼすべき対象とならないこともまた明らかであり、その他、本件マンションの管理規約が管理費及び修繕積立金の未払に対する遅延損害金について年30%と定めていることが公序良俗に反すると認めるべき事情はないから、管理費等未払いの区分所有者の主張は採用できない。

監修者のコメント

 マンション管理組合は、区分所有関係の発生によって、区分所有者の意思いかんに係わらず当然に成立する団体である。消費者契約法における「事業者」とは、参照条文にあるとおり、「法人その他の団体」であり、管理組合は法人格の有無を問わず、「団体」である以上、同法の「事業者」に該当すると解される。ただ、マンションの管理規約は同法上の「消費者契約」に該当しないと解される。参照判例もいう、区分所有者同士の自治規範であり、それが民事的合意として契約的要素を有しているとしても、消費者契約法が対象としている「消費者契約」に該当しない。同法は、消費者契約の申込みとか承諾という概念を随所で取り上げているが、管理規約には申込みとか承諾ということがなじめないというのも、一つの根拠となり得る。本相談ケースの結論は回答のとおりであるが、その理由は、管理組合は事業者に該当しないというよりは、管理規約は消費者契約に該当しないというほうが妥当と思われる。参照判例の説示もそのような論理と考えられる。

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