不動産相談

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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2206-B-0306
マンション管理組合のペット飼育を禁止する規約変更の有効性。

 マンションの管理組合が、管理規約の変更を決議し、ペット飼育が禁止になった。当社が媒介した買主は規約変更決議前から小型犬を飼育している。

事実関係

 当社は売買の媒介業者である。1年前に既存マンションを当社の媒介で購入した買主は、引渡し後に家族とそれまで飼育していた小型犬とともに入居した。当該マンションの分譲当時の区分所有者は暗黙の了解で他の区分所有者に迷惑を及ぼす動物等の飼育は控えていたが、管理規約にはペット飼育を禁止する条項はなかった。買主の入居前に猫を飼育していた高齢女性がいたが転居し、現在、ペットを飼育しているのは買主のみである。買主は、犬の飼育には気を使い、エレベーターを使用するときは腕に抱え、しつけもしていたようで他の区分所有者に吠えるようなことはなかったと言っている。
 しかし、半年前から管理組合に対して他の入居者から時々鳴き声が気になるや臭いがするなどの苦情があった。管理組合は総会で、動物等ペットの飼育を禁止する規約の変更を決議した。買主は所用で総会は欠席したが、総会後に組合役員からペットの飼育禁止を告げられた。買主は、規約変更に従うには、犬を知人等に譲るか、処分するしかないと悩んでいる。

質 問

1.  管理組合が総会の決議により管理規約を改正してペット飼育を禁止した場合、規約改正前からペットを飼っていた区分所有者も従う義務があるか。
2.  管理組合が規約改正するときは、従前からペットを飼育していた区分所有者の承諾を得る必要はないのか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― ペットの飼育は共同の利益に反する行為として管理規約で禁止することができ、従前から飼育していた区分所有者に特段の事情がない限り、規約改正後は飼育することができなくなる。
 質問2.について ― 管理規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすときは、承諾を得なければならないとされているが、ペット飼育禁止の規約改正は、原則としてこれに当たらず、その区分所有者の承諾を得る必要はない。
2.  理 由
⑵について
 分譲マンション等の共同住宅は、一戸建住宅と異なり1棟の建物に複数の居住者が生活している。そのため、区分所有法では、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない(区分所有法第6条第1項)と、区分所有者が区分所有建物の性質上当然に受ける内在的義務を明確に規定している。共同の利益に反する行為等はそれぞれの共同住宅の立地・環境や各区分所有者の考え方により異なり、共同の利益に反する具体的行為は法律上の明確な規定はない。建物および敷地等の管理や使用に関しては管理規約で定めることになっており(同法第30条第1項)、規約の設定、変更や廃止は区分所有者間の決議に委ねられている(同法第31条第1項)。
 管理規約で動物等のペット飼育を一律に禁止することの妥当性について、裁判例では、「マンション内における動物の飼育は、一般に他の区分所有者に有形無形の影響を及ぼすおそれのある行為であり、これを一律に共同の利益に反する行為として管理規約で禁止することは区分所有法の許容するところである」と解し、具体的な被害の発生する場合に限定しないとしている(【参照判例】参照)。
 管理規約の設定、変更または廃止が一部の区分所有者の権利に特別な影響を及ぼすときは、その区分所有者の同意を得なければならない(同法第31条第1項後段)。相談ケースのように従前から動物を飼育していた区分所有者に少なからず影響を及ぼすが、同意を得る必要があるかの判断のカギは、当該区分所有者に特別な影響を及ぼすかという点、すなわち、規約設定・変更の必要性と影響の及ぶ区分所有者の不利益との比較衡量となる。裁判例では、「盲導犬の場合のように何らかの理由によりその動物の存在が飼い主の日常生活・生存にとって不可欠な意味を有する」ものは特段の事情があるとして、その権利に特段の影響を及ぼすものと判断している。しかし、「ペット等の動物の飼育は、飼い主の生活を豊かにする意味はあるとしても」とペットの飼育は認めつつも、動物の飼育がペットとしての愛玩の場合は、飼い主の生活・生存に不可欠のものとの特段の事情があるとは認められず、飼い主に規約改正の承諾を得る必要がないとしている(【参照判例】参照)。
 今後の高齢社会や家族構成の多様化、ペット飼育需要の高まりも予測するに難くないが、共同住宅における共同生活では、共同の利益に反する行為は認められないのである。

参照条文

 建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第6条(区分所有者の権利義務等)
   区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
  ・③ (略)
 同法第30条(規約事項)
   建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
  ~⑤ (略)
 同法第31条(規約の設定、変更及び廃止)
   規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議によってする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
   (略)

参照判例

 東京高裁平成6年8月4日 判タ855号301頁(要旨)
 区分所有法第6条第1項は、区分所有者が区分所有の性質上当然に受ける内在的義務を明確にした規定であり、その一棟の建物を良好な状態に維持するにつき区分所有者全員の有する共同の利益に反する行為、すなわち、建物の正常な管理や使用に障害となるような行為を禁止するものである。右の共同の利益に反する行為の具体的内容、範囲については、区分所有法はこれを明示しておらず、区分所有者は管理規約においてこれを定めることができる(同法第30条第1項)ものとされている。そして、マンション内における動物の飼育は、一般に他の区分所有者に有形無形の影響を及ぼすおそれのある行為であり、これを一律に共同の利益に反する行為として管理規約で禁止することは区分所有法の許容するところであると解され、具体的な被害の発生する場合に限定しないで動物を飼育する行為を一律に禁止する管理規約が当然に無効であるとはいえない。(中略)
 マンション等の集合住宅においては、入居者が同一の建物の中で共用部分を共同利用し、専有部分も相互に壁一枚、床一枚を隔てるのみで隣接する構造で利用するという極めて密着した生活を余儀無くされるものであり、戸建ての相隣関係に比してその生活形態が相互に及ぼす影響が極めて重大であって、他の入居者の生活の平穏を保障する見地から、管理規約等により自己の生活にある程度の制約を強いられてもやむを得ないところであるといわねばならない。もちろん、飼い主の身体的障害を補充する意味を持つ盲導犬の場合のように何らかの理由によりその動物の存在が飼い主の日常生活・生存にとって不可欠な意味を有する特段の事情がある場合には、たとえ、マンション等の集合住宅においても、右動物の飼育を禁止することは飼い主の生活・生存自体を制約することに帰するものであって、その権利に特段の影響を及ぼすものというべきであろう。
 これに対し、ペット等の動物の飼育は、飼い主の生活を豊かにする意味はあるとしても、飼い主の生活・生存に不可欠のものというわけではない。そもそも、何をペットとして愛玩するかは飼い主の主観により極めて多様であり、飼い主以外の入居者にとっては、愛玩すべき対象とはいえないような動物もあること、犬、猫、小鳥等の一般的とみられる動物であっても、そのしつけの程度は飼い主により千差万別であり、仮に飼い主のしつけが行き届いていたとしても、動物である以上は、その行動、生態、習性などが他の入居者に対し不快感を招くなどの影響を及ぼすおそれがあること等の事情を考慮すれば、マンションにおいて認容しうるペットの飼育の範囲をあらかじめ規約により定めることは至難の業というほかなく、本件規約のように動物飼育の全面禁止の原則を規定しておいて、例外的措置については管理組合総会の議決により個別的に対応することは合理的な対処の方法というべきである。
 これを本件についてみるのに、区分所有者(飼い主)の家族構成は夫婦、長女及び長男の四人であって、本件犬は家族の一員のような待遇を受けて可愛がられていたことは認められるが、一家の本件犬の飼育はあくまでペットとしてのものであり、本件犬の飼育が長男にとって自閉症の治療効果があって(入居当初このことを管理組合に強調していた)、専門治療上必要であるとか、本件犬が控訴人の家族の生活・生存にとって客観的に必要不可欠の存在であるなどの特段の事情があることを認めるに足りる証拠はない。したがって、本件規約改正は区分所有者(飼い主)の権利に特別の影響を与えるものとはいえない。

監修者のコメント

 ペット飼育を禁止する規約がないということで、そのマンションを購入した区分所有者にとって、入居後に飼育が禁止されることになるのは、きわめて気の毒であるが、回答あるいは裁判例の言うように、マンションという共同住宅においては、やむを得ない。ただ、裁判例の判決理由に「特段の事情」があるときには、特別の影響を与えるものとして、影響を受ける区分所有者の承諾が必要とあるが、飼育する犬が、盲導犬、聴導犬あるいは介護犬という場合は、それに該当することになる。
 なお、最近では反対にペット飼育可というマンションが増えているが、その場合は、管理規約の定めだけでなく、詳細な飼育細則を定めることがトラブル防止のために必要であり、既存マンションの仲介に当たっては、その細則等も調査して購入予定者に説明することが重要である。

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