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2204-B-0304
宅建業者が売買の代理をするときに取引の相手方から報酬を受けることの是非。

 当社は、個人売主から一戸建の売却依頼を受けて売主の代理をする。売主と約定した代理報酬額は法定の上限額を下回るため、買主からも報酬を受けたいと考えている。

事実関係

 当社は、売買の媒介を主力業務とする業者である。最近、高齢者が所有する不動産の売却依頼が増えている。高齢の売主は、老人施設に入居していたり、身体が虚弱だったり、身内が近隣にいないケースも多く、宅建業者を代理人として売却の依頼を希望することがある。このたび、当社が自宅売却の依頼を受けた売主は、判断能力は問題ないが、病気の後遺症があり老人ホームに入居している。売主は、日常活動に不安があり、媒介契約による当社からの連絡や報告等の煩わしさを避けるため、当社を代理人として売却することを望んでいる。自宅の売り出し価格は、当社が査定し、売主の承諾を得た。売主は、売買価格決定については、指値幅を設け、その範囲内であれば当社に任せ、決定した売買価格を報告すればよいことにした。当社は、標準媒介契約に準じた代理契約書を作成したが、代理報酬は、老人ホームへの支出や老後資金確保等を考慮し、当社の成約価格の4%とする合意をして、その旨を代理契約書で約定した。
 当社は、買主を探索して売買契約を締結した際は、買主からも報酬を得ようと考えているが、同業者から当社の取引態様は代理であるため、買主の媒介はできず、買主から報酬を受けることはできないのではないかと言われている。

質 問

1.  当社が売主代理で売買契約をする場合、当社が探索した買主から報酬を受けることができるか。
2.  当社が売主代理をする売買契約において、他の業者が買主を探索した場合、他業者は買主から媒介報酬を得ることができるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 売主からの報酬額に加え、売買の相手方である買主からも国土交通省の報酬に関する告示の規定の範囲内で報酬を受けることができる。
 質問2.について ― 買主を探索した他業者は、告示の規定の範囲内で媒介報酬を受けることができる。
2.  理 由
について
 宅地建物取引業者は、自ら不動産の売主・買主になるほか、依頼者である売主及び買主間の売買又は交換の媒介及び代理をすることができる。宅建業者が、売主から代理として不動産の売却を依頼された際に、買主を探索するときは、媒介契約に準じた代理契約を売主と締結することが必要である(宅地建物取引業法第34条の3)。買主が特定されているときは、契約の相手方、対象物件、取引価額等が確定した後に、売買契約等の締結の代理権の授与を受け、代理委任状に代理権の範囲を具体的に列挙することが望ましいとされている。買主を代理するときも同様である。(宅建業法の解釈・運用の考え方・業法第34条の2関係)。
 宅建業者の報酬は、国土交通省が定めた報酬額告示による(同法第46条)。売買又は交換の媒介の場合、依頼者の一方につき、それぞれ、消費税額等を除く売買代金の額に規定の割合を乗じた金額以内である。400万円超の売買代金では速算式で、「物件価額×3%+6万円」とその消費税等額となる(宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額 第2)。そして、宅建業者が売買契約の代理をする場合の報酬額は、前記報酬額の2倍が上限である(同報酬の額 第3)。具体の算出金額は「物件価額×6%+12万円」とその消費税等額(以下同様)である。
 売買の代理の依頼者から代理報酬額を受けることは当然にできるが、取引の相手方から報酬を受けることも可能である。代理業者が契約の相手方を探索した場合、相手方との取引態様は、「媒介的行為」となり、その相手方から報酬を受けることを認めている(宅建業法の解釈・運用の考え方・業法第46条第1項関係 1-(2)-②)。なお、契約の相手方との関係は「媒介的行為」として位置づけられており、相手方と媒介契約を締結する必要がある。
 同一業者が、依頼者を代理し、契約の相手方と「媒介的行為」で契約を成立させた場合、一取引から受領できる報酬額の合計は、前記計算により「物件価額×6%+12万円」が上限である(同報酬の額 第3)。依頼者から2倍の上限額を代理報酬として受領するときは、相手方からの報酬は受け取ることができないが、依頼者から受け取る代理報酬額が上限額を下回るときは、下記の表の通り、2倍の上限額から代理報酬を差し引いた金額を上限として受領することが可能である(「<参考>宅建業者が代理する場合等の相手方等から受領できる報酬額の上限額」参照)。ただし、一方から受け取ることのできる報酬額を超えることはできない。
 以上のとおり、代理業者となる者が、取引の相手方(本件では買主)からも一定の媒介報酬を受領することは可能と考えられるが、契約条件の設定など業務の遂行にあたっては、取引の相手方から公正誠実義務違反(宅建業法第15条)や実質的な利益相反行為との責任追及を受けることのないよう、配慮すべきであろう。
 なお、売主・買主双方の代理行為は、原則認められない(双方代理の禁止。無権代理となる)ことに留意が必要である(民法第108条)。
について
 宅建業者が、依頼者の代理をする場合、売買の相手方である買主に媒介業者が介在することが多い。その媒介業者が受けることができる媒介報酬の額も前述と同様である。一取引の上限額は一方から受ける額の2倍以内であり、代理業者が代理報酬額を受領するときは、媒介業者が受けることのできる報酬額は合計して2倍以内の範囲でなければならない。例えば、代理業者が依頼者から代理報酬を4%受領するときは、媒介業者は規定の2倍の算出額(物件価額×6%+12万円)から4%を差し引いた「物件価額×2%+12万円」以内でなければならない。代理業者が売主から上限額である2倍の額を受ける場合には、媒介業者は、買主から媒介報酬を受けることができないことになる。媒介業者は、媒介する物件が売主代理のときは、代理業者が売主から受ける報酬の額を確認して、買主から受けることのできる媒介報酬額を算出した上で受領することが必要となる。代理業者も媒介業者に対して、代理業者が受ける報酬額を明らかにし、媒介業者が買主から受けることができる報酬額を示すことが必要であろう(「<参考>宅建業者が代理する場合等の相手方等から受領できる報酬額の上限額」参照)。なお、媒介業者が一方から受けることのできる上限額の報酬を望むことが多い。代理業者は、代理報酬を一方から受けることのできる報酬額の上限を超える金額を受領する場合、媒介業者との取引を迅速・円滑に行うために、代理報酬の中から一部金額を媒介業者に支払う場面もあるだろう。例えば、代理業者が、代理報酬の上限額を受ける場合、買主を探索した媒介業者に対して、代理業者が受領する報酬額の半分を支払うことが想定できる。これにより、代理業者と媒介業者の報酬額は実質的に元付と客付の「分かれ」の取引になる。


<参考>宅建業者が代理する場合等の相手方等から受領できる報酬額の上限額

宅建業者が代理する場合等の相手方等から受領できる報酬額の上限額

注)
①報酬額は速算による。②上表の報酬額合計は上限額。
③上表の報酬額は、物件価額400万円以上のときの速算式(消費税額等は省略)。
④依頼者の一方から受け取ることのできる上限額に留意のこと(※印)

参照条文

 民法第108条(自己契約及び双方代理等)
   同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
   (略)
 民法第113条(無権代理)
   代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
   (略)
 民法第117条(無権代理人の責任)
   他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
   (略)
 宅地建物取引業法第34条の3(代理契約)
   前条の規定(媒介契約)は、宅地建物取引業者に宅地又は建物の売買又は交換の代理を依頼する契約について準用する。
 同法第46条(報酬)
   宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
   宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。
   国土交通大臣は、第1項の報酬の額を定めたときは、これを告示しなければならない。
   (略)
 「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省(現国土交通省)告示第1552号)
 第2 売買又は交換の媒介に関する報酬の額
   宅地建物取引業者(課税事業者(消費税法第5条第1項の規定により消費税を納める義務がある事業者をいい、同法第9条第1項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)である場合に限る。第3から第5まで、第7、第8及び第9①において同じ。)が宅地又は建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買又は交換の媒介に関して依頼者から受けることの報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。)は、依頼者の一方につき、それぞれ、当該売買に係る代金の額(当該売買に係る消費税等相当額を含まないものとする。)又は当該交換に係る宅地若しくは建物の価額(当該交換に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該交換に係る宅地又は建物の価額に差があるときは、これらの価額のうちいずれか多い価額とする。)を次の表の上覧に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に同表の下欄に掲げる割合を乗じて得た金額を合計した金額以内とする。

 第3 売買又は交換の代理に関する報酬の額
   宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買又は交換の代理に関して依頼者から受けることのできる報酬の額(当該代理に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)は、第2の計算方法により算出した金額の2倍以内とする。ただし、宅地建物取引業者が当該売買又は交換の相手方から報酬を受ける場合においては、その報酬の額と代理の依頼者から受ける報酬の額の合計額が第2の計算方法により算出した金額の2倍を超えてはならない。
 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(国土交通省)
 宅地建物取引業法34条の2関係
  1 〜6 (略)
  7  代理契約について
 宅地建物取引業者に宅地又は建物の売買又は交換の代理を依頼する契約については、媒介契約に関する規定が準用されるが、通常の取引の代理契約の場合は、契約の相手方、対象物件、取引価額等が確定した後に、売買契約等の締結に係る代理権の授与を受けることとする。また、代理権の範囲については、具体的に列挙することが望ましい。
  8  (略)
 宅地建物取引業法第46条第1項関係
  1  告示の運用について
     (略)
     告示第3(宅地建物取引業者が売買又は交換の代理に関して受けることのできる報酬の額)関係
       「第2の計算の方法により算出した額の2倍」とは、売買に係る代金の額又は交換に係る宅地若しくは建物の価額(当該交換に係る宅地又は建物の価額に差があるときは、これらの価額のいずれか多い価額)を次表の左欄に掲げる金額に区分して、それぞれの金額に同表の右欄に掲げる割合を乗じて得た金額を合計した金額を指す。

       「当該売買又は交換の相手方から報酬を受ける場合」とは、代理行為とあわせて媒介的行為が行われる場合に代理の依頼者のほか売買又は交換の相手方からも報酬を受ける場合を指すものであり、その場合においては代理の依頼者から受ける報酬の額と売買又は交換の相手方から受ける報酬の額の合計額が①の「第2の計算方法により算出した金額の2倍」を超えてはならない。
 (以下略)

監修者のコメント

 代理は、媒介と異なり依頼者から代理権を与えられ責任も重いため、仲介報酬の上限額も媒介のケースの2倍までとされている。このことは、もちろん業者間でよく知られているところであるが、客付業者と元付業者が分かれている場合に、相手方の仲介態様が代理か媒介かを気にせずに業法第46条違反をしているケースがある。すなわち、代理業者は依頼者から媒介の上限額の2倍をもらい、媒介業者は媒介所定の上限額をもらい、両者合わせて媒介の上限額の3倍となってしまうケースである。売主・買主は自分の契約形態は分かっても相手方の契約形態など分からないことが多く、また、報酬の大臣告示の詳細など知らないこともその一因をなしている。合計して3倍の報酬になっていることを知って報酬を受領した業者は、宅建業法第46条第2項違反で、監督処分の対象となり(同法第65条第2項第2号、第66条第1項第9号)、また罰則(同法第82条)の規定が適用される。

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