不動産相談

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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2202-B-0301
売買契約で約定した売主の建物明渡義務はいつまでに履行しなければいけないか

 当社は宅建業者である。建売用地として借家人が入居している状態で売主との間で戸建の売買契約を締結したが、売主は約定した入居者を退去させずに決済日を迎えた。当社は、残代金の一部の支払を拒否して引渡しを受け、やむなく当社が費用負担して賃借人を退去させたが、売主は残代金と違約金の支払を要求している。

事実関係

 当社は宅建業者であるが、不動産を買い取って、区画割をした上で、複数の建売住宅として販売をしている。今回購入した物件は築古の土地建物で、3区画の販売を予定している。建物は当社が引渡しを受けた後に当社の負担で取壊しを考えている。建物には売主の親戚の者が居住しているが、売主からは、物件の引渡時には入居者は退去することの了解を得ているとの説明であった。売買契約書には引渡時の条件として、売主は、入居者を退去させ、空家の状態で引き渡す旨を記載し、売買契約を締結した。
 売主は、土地建物の売却代金を事業資金に充当する予定のため、代金の支払条件を、手付金、中間金、残代金とする約定をした。約定した決済・引渡日が迫ってきたが、建物の入居者が退去している様子がうかがわれないため、当社は売主に入居者の退去時期を確認したが、引渡日までには退去するとの回答であった。
 しかし、決済・引渡日となっても入居者は退去せず、空家になっていないことから、当社は売主への残代金の支払を拒否したうえ、当社の建売住宅販売スケジュールがあるため入居者と交渉し、立退費用として相応の費用を支払った。売主は、当社が売主に約定の決済日に残代金を支払わないのは当社の支払義務の違約であると主張し、当社に対して残代金と違約金の支払を求めてきている。

質 問

1.  売買契約時に建物内に占有者がいて、売主が空家の状態で引き渡す約定をした場合、売主はいつまでに占有者を立ち退かせなければならないか。
2.  土地建物の引渡後に、買主である当社が占有者を退去させるために支払った費用を売主に請求することはできるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 売主は、約定により空家の状態で引き渡す債務があり、引渡日の前日には空家にするか、当日には占有者を退去させる義務がある。これらの売主の義務は、買主の代金支払債務に対し先履行の関係に立つ。
 質問2.について ― 買主である貴社は、売主の債務不履行による損害賠償金として、占有者を立ち退かせるために要した費用相当額を、売主に対して請求することが可能である。
2.  理 由
⑵について
 土地建物売買において、第三者が居住または占有している建物の売主は、特約のない限り、居住者・占有者を立ち退かせ空家として建物を買主に引き渡す義務がある。法律上、土地建物の引渡しと売買代金の支払が同時履行の関係に立つときは、第三者の立退きと代金支払とも同時履行の関係にあると解されている。いわゆる双務契約における同時履行の抗弁権といわれるものである(民法第533条)。売主は、買主から残代金の提供を受けないかぎり、空家になった建物の引渡しを拒むことができるが、売買契約時に第三者が居住している建物の明渡しは売主自身の意思によって決定できない要素もあり、遅くとも引渡しの前日には右建物を空家の状態にしておくか、当日第三者が立ち退く段取りをつけておかなければ、建物明渡義務の履行が果たせなくなる。その意味では、売主は買主に建物引渡しをする前に入居者を立ち退かせ、空家にする必要がある。つまり、引渡義務に先んじて空家にする義務があり先履行の関係にあるといえる。引渡し前に空家にする義務を怠れば、売主の履行遅滞の責任は免れず、売主が建物明渡しを約しながら、居住者を立ち退かせないため、買主が自己の費用により、占有者を立ち退かせた場合には売主に対し債務不履行による損害賠償として、その費用相当額の賠償を求めうるものと解される(【参照判例】参照)。

参照条文

 民法第533条(同時履行の抗弁)
   双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

参照判例

 東京高裁昭和51年10月27日 判タ347号181頁(要旨)
 売主の建物退去明渡義務と買主の残代金支払い義務が引換給付の関係にあることは買主の自認するところであるが、引換給付の関係にある債務については債務者は相手方がその債務の履行の提供しないかぎり履行遅滞に陥らないと解すべきところ、買主が、その残代金を売主に提供したことについては買主において主張立証しないので、売主はその建物明渡債務について履行遅滞の責めを負わない、と解する余地がある。しかし、売主は買主から残代金の提供を受けないかぎり、空家になった建物の引渡しを拒むことができるのは当然であるが、売買契約当時現に第三者が居住している建物の明渡しは売主自身の意思によって決定できない要素を含んでおり、第三者を立ち退かせるのに相当の費用と時間を要することは公知の事実であるから、遅くとも引渡しの前日には右建物を空家の状態にしておくか、当日第三者が立ち退く段取りをつけておかなければ、建物明渡義務の履行はできないものといわなければならない。従って、売主が本件建物に居住する入居者を立退かせ本件建物を空家にする義務は本件建物の引渡義務より、先履行の関係にあるものというべきであるから、右義務を怠った売主は債務不履行の責めを免れない。けだし、建物の占有者を立退かせるには相当の費用を要するのが通常であるから、それを売主、買主のどちらで負担するかは売買代金決定の重要な要素であり、売主が建物明渡しを約しながら、居住者を立ち退かせないため、買主が自己の費用により、占有者を立ち退かせた場合には売主に対し債務不履行による損害賠償として、右費用相当額の賠償を求めうるものと解するのが相当である。

監修者のコメント

 本相談ケースのように引渡日になっても入居者が居座っているという事例は、しばしば見られるので、本来は、やはり立ち退かせた上で売買契約を終結するようにすべきである。しかし、やむを得ず入居者がまだいる状態で売買する場合は、損害賠償の予定または違約金の約定をし、その額を買主が入居者を立ち退かせるために現実に支払った額とすることが適切である。そうしないで、単に債務不履行に基づく一般的な損害賠償とすると、買主が現に支払った額は高すぎるとして、売主から「相当因果関係」を争われる可能性があるからである。

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