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2202-B-0300
倒産寸前の会社の不動産の処分と問題点

 倒産寸前の会社が不動産を処分する場合の是非に関する判断基準を知りたい。もし不動産の処分の過程で会社が解散したら、残金決済はどうなるか。

事実関係

 当社は媒介業者であるが、このたびある同業者から、「会社の経営が思わしくないために、社有の不動産を処分したいという会社がある。ついては協力して欲しい」と言われた。詳しく話を聞くと、その会社はすでに1回不渡りを出しており、倒産寸前にあるらしく、早く会社財産を処分してしまわないと、債権者から何をされるかわからないからだというのである。
 しかし、そのような状況にある会社の財産を当社が処分した場合に、逆に当社が債権者からクレームを付けられるのではないかという心配もある。

質 問

1.  このような場合の判断として、その会社がどのような状況にあれば、当社がその会社の財産処分に協力しても問題ないと考えてよいか。
2.  この会社は、それらの不動産の処分が終了するまでは会社を解散しないと言っているが、もし契約の途中で会社が解散されたら、残金決済はできるのか。

回 答

 質問1.について ― まずその会社が処分しようとしている不動産の登記記録を取り寄せ、その不動産に登記されている担保権の実行や、その他の債権者からの仮差押え等の法的手続が進められる可能性の有無や状況を会社の経営者から直接確認する。そのうえで、その可能性が全くないといえないとしても、少なくともその不動産の売却代金とその他の金融資産等で担保権その他の負担の消除ができるという確約が得られた場合には、協力しても問題ないと考えてよいであろう。
 なお、このような場合の債権者からの詐害行為取消権行使の可能性については、仮にその会社の財産状態が極度に悪化して、弁済能力を失っている状況にあったとしても、その処分する不動産を特別に安く売るなどの行為をしない限り、原則としてその可能性はないと考えてよいであろう(民法第424条。後記【参照判例】参照)。ただ、そうはいうものの、その会社の状況いかんによっては、破産法上の否認権行使(破産法第161条)の可能性も考えられるので、その会社が本当に倒産寸前ということであれば、事前に弁護士などの法律の専門家に相談したうえで対応する必要があろう。
 質問2.について ― 残金決済はできる。なぜならば、会社は解散しても、合併の場合を除いては、その清算が結了するまでは清算会社として存続し、その清算会社の権利能力についてもその清算の目的の範囲内で有することとなり(会社法第476条)、したがってその清算事務の1つである本件の残金決済事務(現務の結了行為)も行うことができるからである(会社法第481条第1号)。

参照条文

 民法第424条(詐害行為取消請求)
   債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
   前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。
   債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。
   債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。
 破産法第161条(相当の対価を得てした財産の処分行為の否認)
   破産者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、その行為の相手方から相当の対価を取得しているときは、その行為は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
     当該行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、破産者において隠匿、無償の供与その他の破産債権者を害する処分(以下この条並びに第168条第2項及び第3項において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。
     破産者が、当該行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
     相手方が、当該行為の当時、破産者が前号の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。
  2  前項の規定の適用については、当該行為の相手方が次に掲げる者のいずれかであるときは、その相手方は、当該行為の当時、破産者が同項第2号の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたものと推定する。
     破産者が法人である場合のその理事、取締役、執行役、監事、監査役、清算人又はこれらに準ずる者
     破産者が法人である場合にその破産者について次のイからハまでに掲げる者のいずれかに該当する者
       破産者である株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者
       破産者である株式会社の総株主の議決権の過半数を子株式会社又は親法人及び子株式会社が有する場合における当該親法人
       株式会社以外の法人が破産者である場合におけるイ又はロに掲げる者に準ずる者
     破産者の親族又は同居者
 会社法第475条(清算の開始原因)
   株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。
     解散した場合(第471条第4号に掲げる事由によって解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)
    ・三 (略)
 会社法第476条(清算株式会社の能力)
   前条の規定により清算をする株式会社(以下「清算株式会社」という。)は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。
 会社法第481条(清算人の職務)
   清算人は、次に掲げる職務を行う。
     現務の結了
     債権の取立て及び債務の弁済
     残余財産の分配

参照判例

 最判昭和35年4月26日民集14巻6号1046頁、判時233号2頁、判夕105号46頁(要旨)
 詐害行為の成立には、債務者がその債権者を害することを知って法律行為をなしたことを要するが、必ずしも害することを意図しもしくは欲してこれをしたことを要しない。

監修者のコメント

 倒産寸前ということは、早晩その会社に破産手続が開始される可能性がある。破産法は平成16年に全面改正されたが、旧破産法の下では判例上、不動産を適正価額で売却することは、費消、隠匿しやすい金銭に換えることになり、債権者に対する共同担保を実質的に減少させるという理由で、破産管財人による「否認権」の対象となるとされていた。しかし、適正価額による売却も、後日否認されると取引の安全を害するばかりでなく、危機に直面した会社が不動産を売却して資金繰りに充てることもできなくなってしまう。そこで改正破産法は厳格な要件の下に適正価額による売却を認めることとし、一定の要件に該当する場合のみ否認権の対象となることとなった(同法第161条)。しかし、たとえ廉価な売却でなくても、破産法第161条に該当する場合は、否認権の行使により、その売却をさかのぼって無かったことにできるので、その仲介は慎重にしなければならない。関与の仕方によっては、債権者から責任を追及されるおそれもないではない。

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