不動産相談

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2110-R-0239
賃貸人が死亡したが、相続人の存在が不明の場合、賃料の支払いはどうすればよいか。

 当社が媒介した賃貸借契約の賃貸人が死亡した。賃借人から、今後の賃料を誰に支払えばよいのか相談されている。近隣に賃貸人の家族関係を聞いているが、相続人の存否も含め不明である。

事実関係

 当社は、賃貸の媒介業者である。アパートの賃貸人が亡くなり、当社が賃貸借契約を媒介した賃借人から賃料の支払いをどうすればよいかと相談されている。アパートは8部屋あり、全室賃貸中である。賃貸人はアパートの隣地の自宅に居住していたが、近所の知人が、最近、賃貸人を見かけないので様子を見に行ったところ、自宅で倒れているのを発見し、消防に連絡したところ病死していたことが確認された。
 アパートに入居している賃借人から当社に対して、賃貸人に支払う賃料の支払先を聞かれたが、賃貸人の生前に賃貸人の家族や親戚の存在については聞いておらず、相続人等の関係者は不明である。当社は、近所の知人に賃貸人の家族関係等を確認したところ、同居の家族はなく、親戚等は思い当たらないと言っている。

質 問

1.  賃借人は、賃借建物の賃貸人が死亡し、その賃貸人に相続人のいないことが判明したときは、賃料の支払いを誰にすればよいのか。
2.  賃借人は、死亡した賃貸人の相続人を調査する必要があるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 相続人のいない賃貸人が死亡した場合、賃貸人の財産は家庭裁判所が選任した相続財産管理人によって管理される。賃借人は、相続財産管理人に対して賃料を支払うことになるが、選任されるまでの間の賃料は供託することになる。
 質問2.について ― 死亡した賃貸人の相続人が不明の場合、相続人の有無等を賃借人が調査する必要はない。
2.  理 由
⑵について
 賃借人が賃借している土地や建物等の所有者である賃貸人が死亡することがあるが、賃借人は、継続して賃料を支払う必要があり、そのためには支払いの相手を特定しなければならない。通常、被相続人の相続財産は、遺言又は遺産分割協議を経て相続人が確定する。賃借人は、賃貸不動産を相続又は遺贈された新所有者に対して賃料を支払うことになる。不動産相続には、相続人のうちの1人が単独所有する場合と複数相続人の共有となる場合がある。共有の場合は、共有者間で賃料を受領する賃貸人代表者を決めてもらい、その代表者に賃料を支払うことになる。
 しかし、賃貸人の相続人の存在が不明だったり、相続人がいない場合がある。相続人の存否を含め相続人が明らかでないときは、死亡した賃貸人の財産は、相続財産法人となり(民法第951条)、相続財産は、家庭裁判所によって選任された相続財産管理人によって管理され(同法第952条)、一定の裁判所の手続きを経て相続人を探すことになる(同法第958条)が、それでも相続人が明らかにならないときや特別縁故者等の財産を受け取る権利のある者がいないときは、相続財産は国庫に帰属する(同法第959条)。なお、国庫に帰属する前に、相続財産管理人は、裁判所の許可を得て、相続財産を第三者に売却することができる(同法第953条、同法第28条)。
 賃借人は、相続財産管理人が選任されれば同管理人に対して賃料を支払することになるが、選任までの間は、支払いの相手方が不明であり、債権者(賃貸人)不確知を理由として法務局に対して弁済供託(同法第494条)をしておかなければならない。供託をしないと、賃借人の賃料滞納を理由に同管理人から賃貸借契約を解除されたり、遅延損害金を請求される場合があるので注意が必要である。同管理人が、賃借人の賃借している不動産を第三者に売却したときは、当然ながら、賃借人は、新所有者に対して支払義務が発生する。
 なお、賃借人は、死亡の賃貸人の相続人が不明の場合、賃料支払いの相手となる相続人の有無等を戸籍等により調査したり、相続人が存在していても相続人の相続放棄の有無を調査することなく、弁済供託ができる(法務省民事局長許可昭和38年2月4日民事甲351号及び同昭和37年7月9日民事甲1909号)。
 供託は、上記のように賃貸不動産の相続人が不明の場合や相続人が存在していても誰が真の賃貸人かを知り得ない場合(「債権者不確知」)、賃貸人の賃料増額要求に対して、賃借人の合意が得られず、賃借人の従前の賃料を賃貸人が受取を拒否する場合(「受領拒絶」)、賃貸人が行方不明等で所在が分からない場合(「受領不能」)の3通り(同法第494条)があるので、賃貸の媒介業者は認識しておきたいことである。

参照条文

 同法第28条(管理人の権限)
   管理人(不在者の場合。同法第25条)は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。
 同法第103条(権限の定めのない代理人の権限)
   権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
     保存行為
     代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
 民法第494条(供託)
   弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。
     弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。
     債権者が弁済を受領することができないとき。
   弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。
 同法第951条(相続財産法人の成立)
   相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
 同法第952条(相続財産の管理人の選任)
   前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。
   前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。
 同法第953条(不在者の財産の管理人に関する規定の準用)
   第27条から第29条までの規定は、前条第1項の相続財産の管理人について準用する。
 同法第958条(相続人の捜索の公告)
   前条第1項の期間の満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、相続財産の管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、6箇月を下ることができない。
 同法第959条(残余財産の国庫への帰属)
   前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第956条第2項の規定を準用する。
 法務省民事局長許可 昭和38年2月4日 民事甲351号
   賃貸人が死亡した場合、賃借人は相続人の有無を戸籍関係について調査する必要はなく、相続人が不明であるときは、債権者不確知を事由に、賃料の弁済供託をすることができる。
 同許可 昭和37年7月9日 民事甲1909号
   債権者が死亡し、相続人が不明のため債権者を確知し得ないという事由で供託する場合には、被供託者の表示を「住所何某の相続人」とするのが相当である。この場合には、相続人の有無及び相続放棄の有無などを調査する必要はない。

監修者のコメント

 本相談事例のケースでは、相続財産管理人の制度によるのが適切であり、賃借人は「利害関係人」として管理人選任の申立てができる。もっとも、賃料の支払が金融機関の口座振り込みの場合は、供託せずに、従来どおり、当該口座に振込むのも現実的である。金融機関は、口座を凍結して払い出しができなくなるが、受け入れはするのが通常だからである。賃貸人死亡を賃借人が知ったとしても、やむを得ない措置として債務不履行にはならないと解される。

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