不動産相談

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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2108-B-0293
遺産分割協議前に共同相続人の全員の合意により一部土地を売却した代金の帰属。

 当社は売買の媒介業者である。マンション購入予定者は、購入資金の一部を相続財産を売却した際の代金で充足することを予定している。相続財産の一部であった土地は相続人全員の合意により売却が済んでいる。しかし、他の相続人は、すべての遺産分割協議後でなければ、売却代金の分配はしないと言っている。

事実関係

 当社は売買の媒介業者である。マンションの購入希望者から相続した財産の相談を受けている。相談者は、死亡した父親から相続した一部不動産の売却代金の中から一部をマンション購入の資金に充てる予定である。母親は以前に亡くなっており、相続人は、相談者とその兄、妹の3人である。被相続人の遺産は、遠方で兄の住んでいる地域にあり、兄が父親と同居していた自宅とアパート、土地、その他金融資産があるが、どの遺産を誰が相続するかについては、それぞれの思惑があり遺産分割協議は終了していない。しかし、使用していない土地については相続人間で話しあった結果、現金化しようということになり、既に地元の媒介業者を通じて売却済みである。売却の際は、当該不動産のみを法定相続分で相続登記し、兄が、相談者と妹の代理人となり売買契約等の諸手続きを行った。売却して得た金銭は一括して兄が保管している。
 相談者は兄に対して、マンション購入資金として必要なので土地売却代金の3分の1の受取を申し入れたところ、兄は、売却代金は相続財産に加えられるもので、遺産分割協議の対象であり、協議が調った後に他の財産と併せて分配すると言っている。相談者は、マンションの購入を早く進めたい意向を持っている。しかし、遺産分割協議は兄弟間で揉める要素もあって、マンション購入資金の早急な確保ができないのではないかと悩んでいる。さらに、土地売却代金の分配も分割協議後になるのであれば、果たして金銭で分配されるのかどうかを心配している。

質 問

 遺産の一部であった土地を相続人全員の合意により売却して得た土地代金は、遺産分割の対象となり、相続人は、遺産分割協議後でなければ取得できないか。

回 答

1.  結 論
 原則、遺産の一部を売却して得た代金は、相続財産には加えられず、相続人は、他の遺産の分割協議の前に各相続人の持分に応じて取得することができる。
2.  理 由
 人が死亡すると相続が開始され、被相続人の財産は、相続財産として相続人に一切の権利義務が承継される(民法第896条)。その相続財産は、被相続人の遺言がなく、相続人が複数いるときは、相続開始時点において、共同相続人の法定相続分に応じた共有となる(同法第898条、同法第899条、同法第900条)。その後、共同相続人の間で遺産分割協議を経て、具体的な遺産が各共同相続人に分配される。協議が調わないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求して解決を図ることになる(同法第907条)。
 相続開始時から、遺産分割時まではタイムラグのあることが通常である。そのため、相続開始時に存在していた遺産が、遺産分割時には、存在しない場合がある。遺産分割の対象となる財産は、遺産分割の時点に存在している財産とされており、相続開始後に、相続財産が滅失したり相続人が相続財産を処分したときには、その財産は遺産分割の対象にはならない。裁判所の審判において、「相続開始当時存在した遺産たる物件であっても、遺産分割の審判時に現存しないものは、分割審判の対象とすることはできない」(東京家裁審判昭和44年4月24日)としている。
 また、遺産分割協議前に相続財産を処分する際は、売却対象財産のみについて、共同相続人間において遺産分割し、相続登記をすることにより売却が可能となる。もう一つの方法は、法定相続分で各相続人が持分を取得する登記をすることにより、第三者へ売却することである。
 そして、売却によって得られた金銭は、「共同相続人全員により、売却代金を遺産分割の対象に含めることを合意をする等の特別の事情がある場合には、分割対象の財産とすることができるが、合意のない限り、売却代金は相続財産には加えられず、相続人は持分に応じて売買代金を取得することができる」と解されており、相続人間に特別の事情がなければ、他の相続財産の遺産分割に先んじて、各相続人は、その持分に応じた金銭を取得することが可能である(【参照判例】参照)。

参照条文

 民法第896条(相続の一般的効力)
   相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
 同法第898条(共同相続の効力)
   相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
 同法第899条(共同相続の効力)
   各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
 同法第900条(法定相続分)
   同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
 (以下略)
 同法第907条(遺産の分割の協議又は審判等)
   共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
   遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
   前項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

参照判例

 最高裁昭和54年2月22日 判タ395号56頁(要旨)
 共有持分権を有する共同相続人全員によって他に売却された右各土地は遺産分割の対象たる相続財産から逸出するとともに、その売却代金は、これを一括して共同相続人の1人に保管させて遺産分割の対象に含める合意をするなどの特別の事情のない限り、相続財産には加えられず、共同相続人が各持分に応じて個々にこれを分割取得すべきものである。

監修者のコメント

 回答に掲げられている最高裁判例は、7人の共同相続人が遺産分割前に相続した、いくつかの土地を売却し、その代金の受領を一人の相続人に委任したところ、その相続人が他の相続人に売却代金を支払わないため、他の相続人が民法646条に定める受任者の受取物引渡義務の履行としての交付を求めた事案についてのものである。支払いを求められた相続人は、売却代金が相続財産に加えられるとの前提の下に抗弁したことについて最高裁は、「売却された土地は遺産分割の対象から逸出するとともに、特別に遺産分割の対象に含めるとの合意がない限り、各共同相続人が持分(相続分)に応じて取得する。」と判示したものであり、これについて学説上も特別の異論はないようである。
 したがって、相談ケースの兄に対して、最高裁の判例を示して、裁判になれば、その主張は通らないことを教示してやるのが適切である。

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