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掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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2102-B-0286
専任媒介契約期間中に、売主が自ら発見した顧客との取引を他業者が媒介することができるか

 当社は不動産の媒介業者であるが、ある物件を購入しようとしている人(本件買主)の紹介を受け、媒介に関与して欲しいとの要請を受けた。購入予定の物件は、売主が既に当社以外の宅建業者と専任媒介契約を締結している物件である。このような場合、売主の自己発見取引ということで、当社がこの物件の売買契約の買主側の媒介をすることはできるか。

事実関係

 当社は、売買の媒介業者である。このたび、知人を通じてマンション購入予定者の紹介を受けた。購入予定者は、勤務先の取引先企業の従業員が中古マンションを売りに出していることを知り、このマンションが購入予定者の希望条件を満たしていることから、購入することを決めた。
 売主と買主は顔見知りではあるが、買主は住宅ローンの利用を予定しており、かつ不動産のプロである宅建業者を介しての安全で円滑な売買契約を希望しているため、知人から紹介を受けて当社に話を持ってきた。売主もこの買主との契約を望んでおり、当社が媒介することも了解している。
 しかし、売主は、既に1か月前に当社以外の宅建業者と専任媒介契約を締結しており、現在、その業者の媒介で当該マンションを売りに出している。

質 問

 当社は、他社と専任媒介契約を締結している売主が自ら見つけた買主との間に入り、売買契約の媒介をしても問題ないか。

回 答

売主が知人から買主を紹介され、その買主の依頼で、売主が依頼している業者とは別の業者が売買契約の買主側の媒介をすることは問題ない。
 ただし、専任媒介契約を締結している業者を排除して別の業者が媒介を成立させるには、売主が専任媒介契約を解除したうえで、改めて売主及び買主が他の業者と媒介契約を締結してから話を進めなければならない。
 しかし、売主が専任媒介契約を解除しないまま、他の宅建業者の媒介で売買契約をしてしまった場合は、違約金の支払を請求されることになる。
 標準専任媒介契約約款では、専任媒介契約の有効期間内に、契約している宅建業者以外の業者に媒介を依頼することを禁じており、それに反して他の宅建業者の媒介で売買契約をした時は、売主は、先に依頼している業者から約定報酬額に相当する金額の違約金の支払を請求されることになる(標準専任媒介契約約款第2条、第11条)。
 売主が自ら発見した買主と契約すること、すなわち自己発見取引は可能であるが、売主が媒介を依頼している業者に対して、その旨を通知しなければならない(同約款第12条)。
 媒介契約期間中の媒介契約解除に際しては、依頼している業者から専任媒介契約の履行のために要した費用の償還を請求される場合がある(同約款第13条)。要した履行の費用は、現地調査費用(交通費、写真代)、権利関係等調査費用(交通費、謄本代)、販売活動費用(新聞・雑誌等の広告費、通信費)、現地案内交通費、契約交渉に要する費用等の、実際に要した費用である。

参照条文

 標準専任媒介契約約款第2条(当事者の表示と用語の定義)
   この約款においては、媒介契約の当事者について、依頼者を「甲」、依頼を受ける宅地建物取引業者を「乙」と表示します。
   この約款において、「専任媒介契約」とは、甲が依頼の目的である宅地又は建物(以下「目的物件」といいます。)の売買又は交換の媒介又は代理を乙以外の宅地建物取引業者に重ねて依頼することができないものとする媒介契約をいいます。
 同約款第10条(直接取引)
   専任媒介契約の有効期間内又は有効期間の満了後2年以内に、甲が乙の紹介によって知った相手方と乙を排除して目的物件の売買又は交換の契約を締結したときは、乙は、甲に対して、契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求することができます。
 同約款第11条(違約金の請求)
   甲は、専任媒介契約の有効期間内に、乙以外の宅地建物取引業者に目的物件の売買又は交換の媒介又は代理を依頼することはできません。甲がこれに違反し、売買又は交換の契約を成立させたときは、乙は、甲に対して、約定報酬額に相当する金額(この媒介に係る消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を除きます。)の違約金の支払を請求することができます。
 同約款第12条(自ら発見した相手方と契約しようとする場合の通知)
   甲は、専任媒介契約の有効期間内に、自ら発見した相手方と目的物件の売買又は交換の契約を締結しようとするときは、乙に対して、その旨を通知しなければなりません。
 同約款第13条(費用償還の請求)
   専任媒介契約の有効期間内において、甲が自ら発見した相手方と目的物件の売買若しくは交換の契約を締結したとき、又は乙の責めに帰すことができない事由によって専任媒介契約が解除されたときは、乙は、甲に対して、専任媒介契約の履行のために要した費用の償還を請求することができます。
   前項の費用の額は、約定報酬額を超えることはできません。
 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(ガイドライン)第34条の2関係
   宅地建物取引業者は、媒介契約の締結に先立ち、媒介業務を依頼しようとする者に対して、不動産取引の全体像や受託しようとする媒介業務の範囲について書面を交付して説明することが望ましい。この場合、交付する書面は、別添1を参考とすることが望ましい。
 宅地建物取引業者は、媒介契約を締結する際には、依頼者に専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約の相違点を十分に説明し、依頼者の意思を十分確認した上で、媒介契約を締結するものとする。
また、宅地建物取引業者は、媒介契約を締結する際に、売買等の契約当事者の一方からのみ媒介の委託を受けることを依頼者に約した場合には、その旨を媒介契約書に明記すること。
  1 ・2 (略)
  3  標準媒介契約約款について
    ・⑵  (略)
     標準媒介契約約款の運用について
      〜⑥ (略)
       履行に要した費用について
 宅地建物取引業者が契約の履行に要した費用を請求するに当たっては、現地調査に要する費用として、交通費、写真代、権利関係等調査に要する費用として、交通費、謄本代、販売活動に要する費用として、新聞・雑誌等の広告費、通信費、現地案内交通費、契約交渉に要する費用として、交通費、その他当該媒介契約の履行のために要した費用として明細書を作成し、領収書等で金額を立証して請求するものとする。
      〜⑩ (略)
  4 〜7 (略)

監修者のコメント

 売却の専任媒介契約は、他の業者に重ねて売却の依頼ができないというものであって、売主・買主双方の媒介の立場が保障されているものではない。したがって、購入予定者が買い受けについて他の宅建業者に依頼することは問題となるものでなく、そのことは本ケースのような、いわゆる自己発見取引の場合も同じである。

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