不動産相談

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2102-R-0230
賃借人が残置した家庭用エアコンの賃貸人の買取義務の有無。

 エアコンが設置していない賃貸マンションを賃借した賃借人が、賃貸人の承諾を得て設置したエアコンについて、退去の際に賃貸人に買取りを要求できるか。

事実関係

 当社は、賃貸の媒介兼管理業者である。当社が媒介した賃貸マンションの居住目的である普通賃貸借契約の賃借人が2年間の期間満了により退去した。このマンションは、室内にエアコンは設置されておらず、賃借人が、賃貸人の承諾を得て入居時にエアコンを2室に1台ずつ設置した。当社は、賃貸人と賃借人との退去立会いをした際に、賃借人が設置したエアコンは撤去されていなかったので、賃借人に確認したところ置いていくとの回答であった。当該マンションは、賃貸人の意向によりエアコンは賃借人が自由に設置することになっている。賃貸人は、賃借人が残したエアコンは残置物と判断し、賃借人の退去後に設備業者に依頼して取り外した。数日後、賃借人から賃貸人宛てに、内容証明が届き、造作買取代金の支払いを請求してきた。
 賃貸借契約書には、造作の買取請求に関する約定はなく、賃借人がエアコンを設置する際に、賃貸人は設置することを承諾はしたが、退去時の取り扱いについては、何ら約定も協議もしていない。当社は、賃借人に買取請求の真意を確認したところ、民法上で賃借人に造作買取請求権が規定されていることを根拠として、賃貸人の同意を得て賃借人が設置した造作については、賃貸人が買い取る義務があると主張している。賃貸人に報告したところ、エアコンの撤去費用を負担しており、むしろ処分に要した費用を要求したいくらいだと憤慨している。

質 問

 賃借人が、賃貸人の承諾を得て設置した家庭用エアコンは、造作買取請求権の対象になるのか。そもそも造作と言えるのか。

回 答

1.  結 論
 賃借人の設置した家庭用エアコンは、造作に該当せず、賃借人の造作買取請求権の対象外であり、賃借人は賃貸人に対して買取請求はできないと解する。
2.  理 由
 建物賃貸借契約において、賃借人が、賃貸人の同意を得て建物に付加した造作がある場合、賃貸借期間が満了または解約の申入れによって終了するときに、賃借人は、賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる(借地借家法第33条)。このため、相談ケースのように、賃貸人の承諾を受けて、賃借人が設置したエアコン等の買取請求を巡って争いになることが少なからず見受けられる。借地借家法では、造作について「建物に付加した畳、建具その他の造作」としている(民法第33条第1条)。買取請求権の対象となるのは、「建物に付加」した「造作」が要件である。裁判例では、付加を「建物の構成部分となったものでもなく、家具のように簡単に撤去できるものでもなく、その中間概念であり、賃借人の所有に属し、賃借人が収去することによって、そのものの利用価値が著しく減ずるもの」とし、賃借人が設置したエアコンは、「建物専用のものとして設えたものではなく汎用性のあるものであり、これを収去することによって、本件建物の利用価値が著しく減ずるものでもなく、また、取り外しについても比較的容易であるものと認められることから、建物に付加した造作と認めることは難しい」と判断し、買取請求の対象の造作には該当しないものと解している(【参照判例】参照)。
 造作は、前述の通り、建物の構成部分となったものは含まれず、また、簡単に撤去できるものは含まれないものである。同法第33条に例示されている畳、建具のほか、建物躯体部分を除く、天井や床、鴨居・敷居、棚、据え付け型のシステムキッチン等々が造作に該当するが、一般的な居住用物件に賃借人が造作等を設置することは稀であろう。しかし、近年、賃借人が、内装等を自身の好みで改装やカスタマイズができるDIY型賃貸住宅(注)が現出し、需要も高まりつつあり、国土交通省では賃貸住宅の流通促進の一環として普及に取り組んでいる。このような物件では、賃借人の退去時に、賃貸人は、賃借人から造作等の買取りを請求されることが考えられる。賃貸人が承諾した造作設置であるが、賃借人との退去時の争いを防止するためには、賃貸借契約書において、「賃借人は造作買取請求権を放棄する」旨の特約を設けることが望ましい。旧借家法では、造作買取請求権は強行規定とされ、買取請求権を放棄する旨の約定は無効とされていたが、現行の借地借家法は、任意規定であり、賃借人の造作買取権を放棄する特約は有効とされている(同法第37条)。なお、賃貸人が承諾していない造作については、賃借人は、造作買取を請求する権利はない。
 (注)「DIY型賃貸借」:借主(入居者)の意向を反映して住宅の改修を行うことができる賃貸借契約や賃貸物件(国土交通省ホームページより)。

参照条文

 借地借家法第33条(造作買取請求権)
   建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。建物の賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする。
   前項の規定は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了する場合における建物の転借人と賃貸人との間について準用する。
 同法第37条(強行規定)
   第31条、第34条及び第35条の規定に反する特約で建物の賃借人又は転借人に不利なものは、無効とする。

参照判例

 東京簡裁平成22年1月25日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 建物賃貸借において、賃貸人の同意を得て建物に附加した造作については、賃貸借終了時に賃貸人に対し、これを時価で買い取ることを請求できる(借地借家法33条)。ここにいう造作とは、建物に付加された物件で賃借人の所有に属しかつ建物の使用に客観的便益を与えるものをいい、賃借人がその建物を特殊の目的に使用するため、特に付加した設備の如きを含まない(最高裁判所昭和29年3月11日、最高裁判所昭和33年10月14日)。付加とは、建物の構成部分となったものでもなく、家具のように簡単に撤去できるものでもなく、その中間概念であり、賃借人の所有に属し、賃借人が収去することによって、そのものの利用価値が著しく減ずるものであると解される。
 そうすると、本件エアコンは、上記認定事実によれば通常の家庭用エアコンであって、本件建物専用のものとして設えたものではなく汎用性のあるものであり、これを収去することによって、本件建物の利用価値が著しく減ずるものでもなく、また、取り外しについても比較的容易であるものと認められることから、本件建物に付加した造作と認めることは難しく、造作買取請求の対象とならないものとみるのが相当である。

監修者のコメント

 エアコンにもいろいろな型態のものがあるが、回答のとおり、賃借人がこれを収去することによって建物の利用価値を著しく減ずるものでなく、取り外しが可能でその物単体で価値あるものは「造作」に当たらない。通常の住宅に備え付けられるエアコンの殆どはこれである。
 ただ、造作買取請求をめぐる訴訟には、少なからずエアコンの買取請求のものがある。この請求を排除する特約は、平成4年8月1日の法改正後は有効とされているので、明確な特約をして紛争を未然に防止することが望ましい。

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