不動産相談

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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2012-B-0283
親権者は、未成年の子が共同相続人となる場合において、子の不動産相続手続及び売買行為を代理することができるか。

 当社は、夫を亡くした妻から不動産の売却を相談されている。亡夫は自宅マンションを所有していたが、相続登記は済んでいない。相続人は、妻と未成年の子2人の3人である。相続登記及び不動産売却をするときは、必ず未成年の子のための特別代理人を選任しなければならないか。遺された家族は、妻の実家に戻るため、妻は早期のマンションの売却を望んでいる。

事実関係

 当社は不動産売買の媒介業者である。家族で居住していたマンションの所有者である夫が1か月前に交通事故で亡くなり、その妻からマンションの売却相談を受けている。残された家族は妻と子2人だが、子は未成年者である。遺産の預貯金等金融資産はわずかであり、妻は、マンションの売却で生活資金を確保するとともに、就職することを考えている。そのため、幼い子の養育の面倒を看てもらえる妻の両親が住む実家に戻ることにしている。マンションには住宅ローンが残っているが、団体信用生命保険により残債務は完済されることになっている。
 当社は妻に、マンションを売却するには、マンションの名義を遺産分割協議により、相続人へ登記する必要があり、未成年者が相続人の中にいるときは、通常は、家庭裁判所で未成年者のために特別代理人を選任し、その特別代理人と妻の間で遺産分割協議を行う必要があり、相続登記までの期間とマンション売却による決済までの期間は相応の時間がかかることを説明した。家族は、現在も引き続きマンションに住んでいるが、妻は、出来るだけ早期に売却できることを望んでいる。

質 問

1.  相続人に未成年者がいる場合、相続登記をするには、相続人である親権者は、必ず未成年者に特別代理人を選任して遺産分割協議をしなければならないか。
2.  未成年者と親権者とが共有の不動産を売却する場合も、未成年者の代理人として選任された特別代理人が売却手続を代理するのか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 相続人の中に未成年者がいる場合でも、特別代理人を選任せずに、親権者である相続人の親が単独で相続登記をすることができる方法がある。
 質問2.について ― 親権者である未成年者の親は、子の代理人として共有不動産の売買契約ができ、特別代理人を選任する必要はない。
2.  理 由
⑵について
 不動産等の財産の所有者が死亡した場合、財産を売却するときは、被相続人の遺言によるか、遺言のないときは複数相続人間の遺産分割協議を経て、相続を原因とする所有権移転登記をする必要がある。不動産は、相続人または被相続人の指定する受遺者に相続登記をしなければ買主への所有権移転登記ができない。
 通常、未成年者が遺産分割協議や不動産売買等の法律行為をする場合には、親権者が法定代理人として未成年者に代わり手続を行うことがある(民法第824条)。親権者は両親が共同して行わなくてはならないが、両親が離婚した場合は、父母の協議または裁判所の審判により一方が親権者となり(同法第819条)、父母の一方が死亡したときは、他の一方が親権者となる(同法第818条)。
 未成年者が遺産分割協議をする場合、親権者は法定代理人として未成年者に代わり手続を行うことになるが、相談ケースのように、死亡した夫の妻であり未成年者の親権者でもある母親と、未成年者の子とは、ともに遺産分割の当事者であり、母親が子の代理をすると母親の都合のよい分割になる可能性があり、代理する行為は利益相反行為にあたり、子の法定代理人となることができない。親権者は、未成年の子のために特別代理人の選任を家庭裁判所に申立てなければならず(同法第826条)、子が複数いるときには、それぞれの子に特別代理人の選任が必要となる。親権者である母親が、家庭裁判所に特別代理人の選任の申立てをしてから審判までは、3週間程度を要するといわれている。なお、未成年者に親権者がいない場合は、親族等の請求により未成年後見人を選任することができる(同法第839条、同法第840条)。その後、特別代理人を交えて他の相続人との遺産分割協議が行われ、相続登記が終了するまでには相応の時間を要する。
 しかしながら、不動産を売却するために不動産の相続登記までの期間を短縮することが可能である。原則、不動産の相続登記の申請は、遺言書のない場合は、相続人である複数権利者が共同でしなければならないが(不動産登記法第60条)、法定相続分による共同相続登記は相続人の1人が、相続人全員のために単独で申請することができる(明治33年12月18日法務省(旧司法省)民刑局長回答)。法定相続分に従って登記することは、保存行為と解され(民法第252条但書)、親権者である母親と未成年者の子の利害が対立する利益相反には該当しないからである。なお、共有者の1人の申請による法定相続分の登記の場合でも、共有者1人の持分のみの登記をすることはできない(昭和30年10月15日法務省民事局長回答)。母親の単独申請による相続登記をすることにより、未成年者のための特別代理人の選任と遺産分割協議の手続の時間の短縮と手間を省くことができる。
 法定相続分で不動産の共同相続登記をした後は、母親は未成年者の法定代理人として、子の持分を含め売却することができる。売買契約書への記名押印、所有権移転等の一連の手続ができる。不動産の売却行為は、親子間の利害関係が対立することがなく、利益相反行為には当たらないとされている。

参照条文

 民法第252条(共有物の管理)
   共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
 同法第818条(親権者)
   成年に達しない子は、父母の親権に服する。
   子が養子であるときは、養親の親権に服する。
   親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。
 同法第819条(離婚又は認知の場合の親権者)
   父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
   裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
  〜⑥ (略)
 同法第824条(財産の管理及び代表)
   親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。
 同法第826条(利益相反行為)
   親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
   親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
 同法第839条(未成年後見人の指定)
   未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。
   親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定により未成年後見人の指定をすることができる。
 同法第840条(未成年後見人の選任)
   前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様とする。
  ・③ (略)
 不動産登記法第60条(共同申請)
   権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
 法務省(旧司法省)民刑局長回答(明治33年12月18日民刑第1611号)
   共同相続人(共有者)の1人は、全員のための所有権保存登記の申請は共有財産の保存行為としてできる。
 法務省民事局長回答(昭和30年10月15日民事甲第2216号)
   共同相続人の一人の持分のみについては、その相続登記をすることはできない。

監修者のコメント

 ある法律行為が、利益相反行為に当たるかどうかの判断基準については、かつては形式(外形)的判断説と実質的判断説との対立があったが、民法第826条第1項の趣旨は、未成年の子の不利益において親権者が利益を得ることを防止することにあるとして、実質的に判断する考えが有力であり、裁判例の傾向もそうである。もっとも、いずれの見解に立っても「利益相反行為」とは、親権者にとって利益であって未成年の子にとって不利益となる行為または親権に服する子の一方にとって利益であって、もう一方の子にとって不利益となる行為という意味である。たとえば、親権者が金融機関から融資を受けるに際して、自らの債務を担保するため、子と共有の不動産全体に抵当権を設定する行為は、利益相反行為である。また、本相談にある遺産分割協議は同じ相続人として親権者と子は利害が対立する関係にあるので、利益相反行為である。
 これに対し、親権者と子が共有している不動産を第三者に売却する行為は、これに当たらない。この場合、親権者にとり利益で子に不利益という関係はない。買主に対する売主の地位に立つ親権者と子は、いわば利害が共通しているからである。この点については、比較的、法律に詳しい人でも、子のための特別代理人の選任が必要と誤解していることが、しばしば見受けられる。
 相続分に従って相続登記を行い、売買契約書の売主欄に、母が自分の名の署名捺印を行うと共に、子の氏名○○親権者法定代理人△△と記載し、母の印を押捺することで足り、何ら面倒なことを考える必要はない。

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