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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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2012-B-0282
越境されているビルの売買に伴う撤去承継合意文書の有効性

 ビルの1棟売りを媒介するが、このビルについては、隣地のビルが約1cm越境しているため、ビルの所有者同士で、「越境者○○○○は、当該越境ビルを建て替える際には、その越境部分を撤去する。この合意内容は、互いにビルを譲渡した場合には、次の所有者にも承継される。」という合意文書が取り交わされている。このような場合は、次の所有者との間で、同じような合意文書を取り交わさなくてもよいと思うが、どうか。このようなビルの越境に、時効はあるか。

事実関係

 ビルの1棟売りを媒介するが、売主が平成10年にビルを新築したときに、隣りのビルが約1cm越境していたため、ビルの所有者同士で、「越境ビルの所有者は、ビルの建て替えの際に、越境部分を撤去する。」旨の合意をした。
 なお、この合意文書には、「互いにビルを譲渡した場合には、次の所有者にもこの合意内容が承継される。」という文言がある。

質 問

1.  このような文書が取り交わされている場合、今回の売買の買主にもその合意内容が承継されると思うので、買主との間であらためて文書を取り交わさなくてもよいと思うが、どうか。
2.  このようなビルの越境にも、時効はあるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― あらためて文書を取り交わす必要がある。
 質問2.について ― 隣地の所有者が越境の事実を知っている限り、時効は成立しない。
2.  理 由
について
 本件のビルの所有者間の合意文書は、あくまでも当該所有者間の合意文書であって、次の所有者(買主)との間の合意文書ではない。
 したがって、その文書の中に、「次の所有者(買主)にも承継される。」と書いてあっても、その内容を次の所有者である買主が承諾しない限り、実質的な承継の効力は生じない。つまり、本件の合意文書は、売主が、その文書の内容を買主に承諾させる義務を負う文書だということである。
について
 土地の越境について所有権の取得時効が成立するためには、越境者が、その越境について善意・無過失の場合に10年間、悪意の場合には20年間占有(越境)を継続しなくてはならない(民法第162条)。
 しかし、いずれの場合においても、その占有は、「所有の意思」をもった占有でなければならないので(同法同条)、その隣地の所有者が越境の事実を知っている限り、越境者は「所有の意思」を有さないものとされ、取得時効が成立することはない。

参照条文

 民法第162条(所有権の取得時効)
   20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
   10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

監修者のコメント

 本ケースのような越境とか、通路の使用承諾あるいは一定の建物を建てないといった隣地所有者との覚書・協定が世上しばしば存するが、その中に所有権を譲渡し、第三者の所有になったとしてもその内容は承継される旨の条項を入れることが多い。しかし、回答のとおり、その合意は第三者に直接効力が及ばない。所有権の譲渡人が譲受人にその内容を承継させる義務を相手方当事者に負うという効果があるだけである。もっとも、その内容を知りながら譲り受けた新所有者が、内容の拘束を受けない旨の主張をすることが、信義則あるいは権利濫用といった一般条項によって認められないことは十分にあり得るが、やはり改めて書面化しておいたほうが良い。
 時効取得の問題については、本ケースでは越境者には「所有の意思」がないので、回答とおりその成立はないが、「所有の意思」というのは、所有者と同じような支配をもってする占有のことで、占有の原因である事実の客観的性質により決まる。したがって、本ケースの越境側の所有権が転々譲渡され、譲受人が合意文書の存在を知らなかった場合は、時効取得の成立もあり得る。

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