不動産相談

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
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2010-B-0281
特定の相続人に「相続させる」との遺言がある場合、対象の相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合、代襲相続されるか。

 当社は宅建業者であるが、不動産の売買や賃貸の媒介や賃貸管理を長年取引している地主が亡くなった。推定相続人の1人に全遺産を相続させる旨の遺言があったが、その相続人は地主の死亡以前に死亡していた。遺言で指定されていた相続人の子は代襲相続権があると言っており、他の相続人は、分割協議が必要であるとお互いに主張している。

事実関係

 当社は、不動産売買・賃貸の媒介兼管理業者である。懇意にしている高齢の地主が亡くなり、相続が発生した。地主である被相続人は、遺言書を作成していたが、遺言書は被相続人の長男に全遺産を「相続させる」旨の内容であった。被相続人には長男と次男の2人の子がいたが、長男は、被相続人の死亡前に亡くなっていた。長男には、子が2人いて、長男の子は、長男に相続させる旨の被相続人の遺言は、長男に財産を承継させたいという被相続人の意思があり、その意思は長男の子に承継されるものであると主張していて、遺言による遺産の承継は代襲相続されるものとして自分達が承継したと考えている。
 これに対して被相続人のもう1人の法定相続人である次男は、遺言は、被相続人の死亡時からその効力が生じ、被相続人の死亡時に遺産を承継するとされた者が存在していなければならず、被相続人が遺言により遺産分割方法を指定しても、遺言で指定された相続人が死亡していた場合は、その遺言は無効であると言っている。
 当社は、被相続人である地主の生前に所有していた賃貸物件の管理や媒介、土地の売却の媒介、不動産活用等、様々な形で関わっていたので、今後誰と取引の話をしていくのかが気になり、残された財産を誰が引き継ぐのかに関心がある。また、長男の子らから、相続する不動産の一部を売却したいとの相談が当社にあった。当社は売却の話をすぐに進めていいのか迷っている。

質 問

 遺言者が、推定相続人の1人に遺産の全てを相続させる旨の遺言書を作成していたが、遺言者の死亡前に、遺言者から指定された相続人が死亡しているときは代襲相続ができるか。

回 答

1.  結 論
 原則として、遺言者の死亡前に、遺産の承継人として指定されていた相続人が死亡している場合には、代襲相続はされないと解されている。
 したがって、他の相続人が言うとおり、遺産分割協議が必要であり、これが固まるまでは、不動産売却の話を進めるべきでない。
2.  理 由
 相続は、人の死亡によって開始する。被相続人の遺産は、遺言があれば遺言に従って遺産の承継が指定された者に承継される(同法第985条)。遺言で「相続させる」場合は、相続人に限られるが、承継者を指定する「遺贈」は、相続人以外も指定することができる。遺言がないときは、相続人に法定相続分の権利が発生するが、相続人全員が遺産の分割を協議し、協議が調えば、法定相続分に拘束されずにそれぞれが承継することになる(民法第907条)。遺言者が、特定の遺産を、特定の相続人に「相続させる」旨の遺言をした場合には、相続開始と同時に遺産分割を要せずに、その特定された相続人がその財産を取得するが、相続財産が不動産の場合、相続または遺贈を受けた者は単独で所有権移転登記をすることができる。
 遺言者の相続開始前に、相続人以外の遺贈された受遺者が死亡していたときは、その遺贈は効力が発生せず、相続財産を取得することができない(同法第994条第1項)が、被相続人が遺言していない法定相続の場合は、死亡した相続人の子が相続権を代襲して相続人となる(同法第887条第2項)。
 相談ケースの被相続人が遺言で、特定の相続人に対して特定の財産を相続させる旨の遺言をしたが、その相続人が被相続人死亡の前に死亡していた場合は、代襲相続権が発生するのであろうか。「相続させる」旨の遺言は、相続人に対する遺産分割方法の指定と解されている。裁判例では、代襲相続を認めていたものがあったが、近年、最高裁判例により、「推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していた特段の事情のない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である」として、原則、代襲相続を否定している。しかしながら「遺言者は、一般に、各推定相続人との関係においては、その者と各推定相続人との身分関係及び生活関係、各推定相続人の現在及び将来の生活状況及び資産その他の経済力、特定の不動産その他の遺産についての特定の推定相続人の関わりあいの有無、程度等諸般の事情を考慮して遺言をするものである」と遺言者の遺言に関する心情を斟酌しながらも、「『相続させる』旨の遺言をした遺言者は、通常、遺言時における特定の推定相続人に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまるものと解される」と判断し、ただ、「相続させる」旨の遺言の条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから代襲相続を認める場合もあることを示唆している(【参照判例】参照)。
 複数相続人がいる場合に、遺産を散逸させないためや事業継続のために、特定の相続人を指定して遺言する遺言者も多い。遺言を作成するに際しては、遺言者の意思を明確にするとともに、推定相続人が遺言者よりも先に死亡することを想定した上で、例えば、「長男が死亡した場合は、長男の子に相続させる」等の一文を入れておく配慮も必要であろう。

参照条文

 民法第887条(子及びその代襲者等の相続権)
   被相続人の子は、相続人となる。
   被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
   前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
 民法第907条(遺産の分割の協議又は審判等)
   共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
   遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
   (略)
 同法第908条(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)
   被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
 民法第985条(遺言の効力の発生時期)
   遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
   遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。
 民法第994条(受遺者の死亡による遺贈の失効)
   遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
   停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

参照判例

 最高裁平成23年2月22日 判タ1344号115頁(要旨)
 被相続人の遺産の承継に関する遺言をする者は、一般に、各推定相続人との関係においては、その者と各推定相続人との身分関係及び生活関係、各推定相続人の現在及び将来の生活状況及び資産その他の経済力、特定の不動産その他の遺産についての特定の推定相続人の関わりあいの有無、程度等諸般の事情を考慮して遺言をするものである。このことは、遺産を特定の相続人に単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定し、当該遺産が遺言者の死亡の時に直ちに相続により当該推定相続人に承継される効力を有する「相続させる」旨の遺言がされる場合であっても異なるものではなく、このような「相続させる」旨の遺言をした遺言者は、通常、遺言時における特定の推定相続人に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまるものと解される。
 上記のような「相続させる」旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、上記の場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していた特段の事情のない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である。

監修者のコメント

 相談ケースの法的結論は、回答に掲記の最高裁判例により、ケリがついたということができるが、受遺者が遺言者より先に死亡したときは、遺言者が判断能力を欠如していない限り、その死亡の事実を知ることが通常と思われるので、改めて遺言書を書き換えるべきであることは言うまでもない。

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