不動産相談

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不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2004-B-0274
レインズに登録した売買情報を他業者が広告するときは売主の承諾は必要か

 当社は、売買の媒介業者であるが、売却の依頼を受けた不動産をレインズに登録する際に広告転載区分を「可」とし、他業者が広告掲載した。売主は、売主の承諾なしに依頼していない業者の広告に掲載されるのは納得がいかないと主張している。

事実関係

 当社は不動産売買の媒介業者である。当社は、会社を定年退職し、自宅を売却した後は出身地にUターンを希望している売主と、マンションの売却の専任媒介契約を締結した。当社は売主に対し、専任媒介契約は、レインズに登録する義務等があり、さらに販売方法として自社のホームページや不動産ポータルサイトへの掲載、新聞折込チラシへの掲載など、買主を探すための広告等を行うことをついて説明した。売主は、広告や販売方法についての希望や異論もなかった。当社は、当該マンションの売却情報をレインズ(不動産流通機構)に登録の際に、売主は早期の売却を希望していることもあり、より買主を広く探すため、物件情報の広告転載区分を「可」とした。
 レインズへ登録して2週間後、売主から、他の宅建業者の折込チラシや不動産広告ポータルサイトに売主の不動産物件広告が掲載されていると当社へ連絡があった。売主は、不動産の売却は当社に依頼したのであり、他の業者が売主に無断で掲載するのは承服できないと言ってきた。理由は、他の業者には売却を依頼しておらず、何社もの業者の広告に掲載されると情報が出回りすぎて希望価格で売却するのが難しくなり、低い価格で売らざるを得なくなるのではないかと懸念している。

質 問

 媒介業者は、依頼を受けた不動産の売却にあたり、他の業者が広告掲載をすることを売主に予め告げる必要があるのか。

回 答

1.  結 論
 媒介業者は、売主との特段の合意又は特段の事情がないかぎり、広告方法について売主の了解を得る必要はない。他の媒介業者による広告についても、元付業者の承諾があれば、売主の承諾は不要と解される。しかしながら、売却の依頼者は、依頼していない宅建業者の広告掲載を望まない場合や予想しないこともあるので、媒介業者は、依頼者に対して広告や販売活動について十分説明しておくことが望まれる。
2.  理 由
 不動産の媒介契約制度は、依頼者が宅建業者に不動産の媒介を依頼する際、契約内容を書面化し、依頼内容を明確化することによって、依頼者保護、紛争の防止及び不動産流通の円滑化を図る目的で導入された。導入前は、販売活動の不明確さや依頼者の意に沿わない取引などが問題となっていた。媒介契約制度の整備に伴い、レインズ(不動産流通機構)が創設され、一定の媒介契約類型は、レインズへの登録が義務となり、レインズを介して他の宅建業者も登録情報を活用して広く契約の相手方を探索することが可能となった。それまでは、媒介の依頼を受けた媒介業者が物件を公開しないことも散見され、成約までの期間が長引くなど消費者保護に欠ける面があった。
 宅建業者は、専任媒介及び専属専任媒介を締結したときは、一定期間内にレインズへの登録の義務が課され、さらに業務処理状況の報告義務がある。業者の媒介活動に要した販売経費や広告費等は、取引の相手方(買主)が見つかり、売買契約が成立して、始めて請求することができる。そのため、依頼者から依頼を受けた媒介業者は、業者の判断と責任、負担で販売活動や広告活動を適宜行うことができる(【参照判例】参照)。販売活動の一環として、他の媒介業者を介して広告を掲載することも自由である。相談ケースのようにレインズ登録の際に、レインズ会員である他業者が広告を掲載することを認めれば、他の宅建業者は、元付業者の承諾なしに自社の広告に情報を掲載することができる。
 レインズの登録項目の広告転載区分は、他の宅建業者が、元付業者に確認することなく自由に広告を掲載してもよいというものである。なお、レインズ規約では、広告転載区分が可でないときは、広告掲載を望む他の宅建業者は、登録業者から書面による承諾を得る必要がある。
 しかしながら、依頼者の不動産売却の理由は様々であり、必ずしも売却理由がムーブアップ(生活向上)のためだけではなく、ローン返済困難や資金繰りなどムーブダウン(生活低下)のことも多い。そのため依頼者によっては、売買契約が成立するまでは近隣に知られたくない、売却を公にしたくない等の理由で、インターネット広告掲載、折込チラシ掲載、チラシポスティング、オープンハウス開催等、不動産媒介に一般的に有効と思われる広告活動の全部や一部を制限されたり、契約の相手方を制限されることもある。依頼者の意思に反して販売活動をしたことにより、依頼者に損害を与えたときは、注意義務違反により損害の賠償を請求されることがある(民法第709条)。
 媒介業者は、媒介にあたり、売主の売却理由を確認したうえで、買主の探索方法の広告や販売活動について、依頼者に十分説明し、理解を求めておくことが必要である。また、他の宅建業者は、レインズ登録物件を広告するときや顧客に紹介する際は、登録業者に物件の存否や価格変更有無等を確認することによりトラブル発生を防ぐことになろう。

参照条文

 民法第709条(不法行為による損害賠償)
   故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

参照判例

 東京高裁平成3年5月9日 判タ766号241頁(要旨)
 不動産仲介契約においては、特段の合意がないかぎり、仲介業者は、依頼者の承諾を得ることなく中間業者を利用するなど適宜の方法によって広く契約の相手方を捜すことができ、契約が成立したときのみ報酬を請求できるものであり、契約の相手方を捜すのに費用を要してもその償還請求権を有しない。他方、依頼者も、仲介業者がどのような方法で契約の相手方を捜してきても、その相手方と契約を締結するか否かの自由をもち、契約の締結を強制されることはなく、仲介契約を自由に解除することができるのが原則である。このことから考えれば、仲介の依頼を受けた仲介業者は、依頼者から契約の相手方を捜す方法について指定され、又は一般広告を禁止する旨の意思を伝えられたとか、依頼の趣旨、内容その他の具体的状況からして、一般広告をすることが依頼者の意思に反するおそれが客観的にあるといった特段の事情がないときは、仲介物件に関する情報を一般需要者向けの不動産情報誌に掲載するなど適宜の広告方法を用いて広く顧客を捜すことが許されると解するのが相当である。

監修者のコメント

 媒介業者が契約の相手方を探す手段・方法については、依頼者と特別の約束をしない限り、自らの裁量によって決めることができるのは、回答及び参照判例のとおりである。
 したがって、質問ケースに対する法的な解釈は回答のように、売主にあらかじめ告げる必要はないが、依頼者にはいろいろな事情があるのであるから、自らが依頼していない業者の広告に掲載されることを予想していなかったという心情は理解できないわけではない。レインズ登録の際に広告転載区分を可とすることも依頼者に説明しておくことが、もめることを避けるために望ましい。

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