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掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2004-R-0216
建物賃貸借契約の始期到来前の解約と媒介手数料の返還の要否

 始期付建物賃貸借契約の媒介において、借主から始期到来前にキャンセルの申し出があったので、媒介業者として、借主から貸主に対し、その損害として賃料の1か月相当額を支払ってもらうように対応したが、その対応は正しいか。その場合、媒介業者はすでに借主から受領している媒介手数料を返還しなくてはならないか。

事実関係

 当社は、賃貸管理業者兼媒介業者である。このたび当社が管理をしている賃貸物件の賃貸借の媒介をしたが、借主が入居する前に、借主に転勤辞令が出たために、急きょ当事者間で賃貸借契約を解約し、借主が貸主に差し入れている敷金の中から、賃料の1か月分相当額を貸主の損害として、借主から貸主に支払うよう合意をしてもらった。しかし、この契約が入居日を始期とする始期付の賃貸借契約になっているため、当社がすでに借主から受領している媒介手数料を借主に返還しなくてはならないのかどうか、判断に迷っている。

質 問

1.  当社は、媒介業者として、貸主の損害について、借主から貸主に対し賃料の1か月分相当額を支払うように対応したが、この対応は正しいか。
2.  当社は、借主に対し媒介手数料を返還しなくてはならないか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 当事者が貴社の対応に納得しているのであれば、正しい対応といえる。
 質問2.について ― 返還しなくてもよい。ただ、本件の場合はキャンセルの理由が借主の転勤ということであるから、貴社に非はないと考えてよいが、ケースによっては、媒介時の媒介業者の説明・案内が不十分だったためのキャンセルということもあるので、そのようなケースの場合には、手数料を返還するということも、トラブル回避のためには望ましい対応の1つといえよう。
2.  理 由
について
 当事者が賃貸借契約を解約することは、当事者の自由である。その場合に、当事者の一方が他方に支払う損害賠償金の支払いについて、媒介業者が、過去の経験に基づいて媒介業者としての考え方を当事者にアドバイスすることは、法的に何ら問題はない。
 問題は、そのアドバイスの内容であるが、それでもそのアドバイスの内容を当事者が是とし、それに基づいて当事者が合意をしたのであれば、その内容が妥当なものである限り、それはむしろ媒介業者として正しい業務を行ったということがいえよう。
について
 媒介業者の報酬請求権は、媒介業者が、その媒介によって依頼された契約を成立させたときに発生すると解されている。つまり、「成功報酬」である。
 しかし問題は、その契約が有効に成立していなければ発生しないのかどうか、すなわち停止条件付の契約であるとか、始期付の契約の場合には報酬請求権は発生しないのかどうかということである。
 この点については、判例は、停止条件付のものはその判断が分かれているが、始期付のものについては、その「始期」が必ず到来するものであるだけに、裁判で争われた事例を見ることはない。ということは、始期付の契約においては、当事者が契約の締結と同時に報酬請求権が発生することを認め、報酬を支払っているものとされよう。

参照条文

 民法第127条(条件が成就した場合の効果)
   停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
   解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時から効力を失う。
   (略)
 民法第135条(期限の到来の効果)
   法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない。
   法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。

監修者のコメント

 報酬請求権は、売買でも賃貸借でも、媒介の目的である売買や賃貸借の契約が成立することにより、全額について発生する。実務で行われている契約時半額、履行完了時半額というのは、請求権の発生要件を定めたものではなく、特約がない限り、発生した全額のうちの支払時期を定めたものと解される。
 いずれにせよ、本件の事実関係をみる限り、「合意解約」と考えられ、一旦発生した報酬請求権に消長を来たさない。

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