不動産相談

当センターでは、不動産取引に関するご相談を
電話にて無料で受け付けています。

専用電話:03-5843-208110:00~16:00(土日祝、年末年始 除く)

相談内容:不動産取引に関する相談(消費者、不動産業者等のご相談に応じます)

<ご注意>
◎ たいへん多くの方からご相談を受け付けており、通話中の場合があります。ご了承ください。
◎ ご相談・ご質問は、簡潔にお願いします。
◎ 既に訴訟になっている事案については、原則ご相談をお受けできません。ご担当の弁護士等と協議してください。

ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

== 更に詳しい相談を希望される方は、当センター認定の全国の資格保有者へ ==

不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2002-R-0214
ビルを購入した新賃貸人は、賃借人の使用している看板の撤去を求めることができるか

 テナントビルの新賃貸人が、賃借人に対し、かねてより賃借人が設置している看板等を撤去してほしいと言ってきた。要求通りに撤去しなければならないか。

事実関係

 当社は、不動産の売買・賃貸の媒介業者である。当社が売買を媒介した駅前のテナントビルをオーナーチェンジした新賃貸人(譲受人)が、賃借人が設置している看板を撤去してほしいと言ってきた。この賃借人は、旧賃貸人の頃から飲食店として店舗を賃借している。
 このビルは5階建てで、1階は飲食店や小売店、2階以上は事務所が入居している。この賃借人が営む飲食店は1階の奥まった場所にあるため、旧賃貸人の承諾を得てビルの入り口付近の外壁に、店舗業態である中華料理店である旨と店舗名が記載された、大き目の看板を設置している。そのほか、ビルの入り口付近の通路部分にも店舗の料理写真をパネルで設置している。
 当社は、この収益ビルの旧賃貸人と新賃貸人との売買契約の際に、賃借権のあるテナントが数店入居しておりこれらの賃借権は新賃貸人が承継すること、また、当該飲食店に関しては、ビルの入り口付近の外壁に看板の設置があることも、契約書にも記載している。
 しかし、ビルの引渡後、新賃貸人が、看板を設置しているのはこの飲食店のみであるとして、入り口付近の通路にある料理写真のパネルとともに、賃借人に対して撤去を求めてきたと、当社に相談があった。

質 問

 ビルの新賃貸人は、所有権を理由に、旧賃貸人が承諾していた賃借人の店舗看板等を撤去させることができるか。

回 答

1.  結 論
 新賃貸人は賃借人に対し、看板を撤去させることはできないと考える。
2.  理 由
 旧賃貸人と賃借人との間で締結された建物の賃貸借契約は、その建物を売買等で取得した譲受人である新賃貸人に対してもそのまま承継される。相談ケースのように旧賃貸人と賃借人が合意した看板等の設置についても、新賃貸人へと承継されると解する。
 判例では、新賃貸人が賃借人に対し、建物の地下にある飲食店が旧賃貸人との合意により1階部分の外壁に設置した看板等の撤去の請求をした裁判において、①看板等は、建物部分における店舗の営業の用に供されており、建物部分と社会通念上一体のものとして利用されている、②賃借人が看板等を撤去せざるを得ないこととなると、通行人らに対し建物部分で営業をしていることを示す手段はほぼ失われ、その営業の継続は著しく困難となることが明らかで、賃借人には看板等を利用する強い必要性がある、③旧賃貸人の承諾を得ている、④新賃貸人が看板等の設置場所の利用について具体的な目的がなく、建物の所有に支障がない、として、新賃貸人の請求を「権利の濫用に当たるというべきである」と判示して退けた(【参照判例】参照)。
 看板設置について、旧賃貸人と賃借人との間で別個の契約がなされていたり、景観条例や屋外広告物条例に適合しておらず、所有者に指導があったりしたときも、撤去せざるを得ない場合がある。
 テナントビル等の売買に際し、賃借人がいるときは、賃貸借契約の内容の確認は必須であるが、外壁、屋上・搭屋や共用部分などの看板等の設置の有無や設置されている場合の使用基準や権原等を確認し、新賃貸人である譲受人への事前の説明及び売買契約書への記載が必要であろう。
 なお、ビルの袖看板や外壁看板などに関しては、道路法による占用許可、自治体の広告物条例等の規制を受け、設置自体が認められないことや、大きさ・デザイン・色彩等の規制を受ける場合もあるので、宅建業者としてはこれらの点も十分な調査と説明が必要となる。

参照条文

 民法第1条(基本原則)
  ・② (略)
   権利の濫用は、これを許さない。

参照判例

 最高裁平成25年4月9日判 判タ1390号142頁(要旨)
 本件看板等は、本件建物部分における本件店舗の営業の用に供されており、本件建物部分と社会通念上一体のものとして利用されてきたということができる。― (中略) ― 賃借人において本件看板等を撤去せざるを得ないこととなると、本件建物周辺の繁華街の通行人らに対し本件建物部分で本件営業をしていることを示す手段はほぼ失われることになり、その営業の継続は著しく困難となることが明らかであって、賃借人には本件看板を利用する強い必要性がある。他方、売買契約書の記載や、本件看板等の位置などからすると、本件看板等の設置が本件建物の所有者の承諾を得たものであることは、新賃貸人において十分知り得たものということができる。また、新賃貸人に本件看板等の設置箇所の利用について特に具体的な目的があることも、本件看板等が存在することにより新賃貸人の所有に具体的な支障が生じていることもうかがわれない。そうすると、上記の事情の下においては、新賃貸人が賃借人に対して本看板等の撤去を求めることは、権利の濫用に当たるというべきである。

監修者のコメント

 本ケースは、【参照判例】の最高裁判例の事案と類似の事案であるが、最高裁は、類似の事案について、賃貸人の看板撤去請求を権利の濫用に当たるとして斥けている。
 もっとも、この原審である東京高裁は、「本件看板等の設置権原は、その賃借権の範囲に含まれていないから、これを賃貸人に対抗できず、かつ、撤去を求めることが権利の濫用に当たる事情も認められない」として、賃貸人の請求を認めている。
 旧賃貸人が賃借人と取り決めた内容は、それが法令や条例に違反している場合は別として、新賃貸人が承継しなければならない。テナントビルのオーナーチェンジの場合、新所有者(新賃貸人)が、このことを誤解し、当事者が変わったのだから、契約内容の変更を求めることができると考えている人もいるので、とくに買主が素人の場合は、そのことを十分に説明されたい。

当センターでは、不動産取引に関するご相談を
電話にて無料で受け付けています。

専用電話:03-5843-208110:00~16:00(土日祝、年末年始 除く)

相談内容:不動産取引に関する相談(消費者、不動産業者等のご相談に応じます)

<ご注意>
◎ たいへん多くの方からご相談を受け付けており、通話中の場合があります。ご了承ください。
◎ ご相談・ご質問は、簡潔にお願いします。
◎ 既に訴訟になっている事案については、原則ご相談をお受けできません。ご担当の弁護士等と協議してください。

ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

更に詳しい相談を希望される方は、
当センター認定の全国の資格保有者へ

不動産のプロフェッショナル

過去の事例(年別)

  • 賃貸
  • 売買

ページトップへ

single