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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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2002-R-0213
建替えの噂のある分譲マンションの賃貸媒介時の重要事項説明

 建替えの噂のある分譲マンションの賃貸借を媒介する場合、その建替えに伴い、借主の権利がどうなるか等について、ある時点以降は重要事項として説明すべきであると思うが、その説明はいつの時点から行うべきか。その際の説明事項はどのようなものか。

事実関係

 当社は、先日建替えの噂のある分譲マンションの賃貸借の媒介をしたが、そのときは管理組合に聞いても、いつからそのような動きになるのかは全くわからないということだったので、噂のあることだけを告知して、それ以外のことは一切説明しなかった。
 しかし、その噂がその後かなり具体的になってきた場合には、これから入居する借主の権利が建替え時にどうなるのかなど、正式な重要事項として説明をしておく必要があると思われるので、この際、その説明の時期(タイミング)と説明の内容等について知っておきたい。

質 問

1.  正式な重要事項として説明すべき時期は、いつの時点以降からと考えるべきか。
2.  その際に説明すべき事項は、具体的にどのような事項か。
3.  建替えの決議がなされたり、建替組合が設立された場合には、借主の借家権は消滅してしまうのか。その際に、借主が貸主に請求できる権利にはどのようなものがあるか。貸主からの明渡しの「正当事由」が認められる可能性はあるか。

回 答

 質問1.について ― 少なくとも、噂があることを知った以上、その時点以降からは、管理組合からその噂の内容を確認したうえで、建替えのための理事会等が開かれる予定があるとか、その準備に入っているといった説明があった場合にはそれも含めて、正式な重要事項として説明すべきである。
 質問2.について ― その際に説明すべき事項は、管理組合から説明があった事項のほか、少なくとも次の事項については、確認し得た範囲内において説明すべきである。
 建替え決議の時期の見通し(予定)
 建替え決議があったときは、借主の借家権が当然に消滅するのか否か。
 建替え決議があったときに、貸主が借主に対し建物の明渡しを請求するのか否か。明渡しを請求する場合には、貸主は借主に対し立退料等の支払いをする意思があるか否か。明渡しを請求しない場合には、貸主が引き続き施行再建マンションの貸主になるのか否か(貸主にならない場合は、通常「建替組合」が貸主になる)。その場合の賃貸条件はどのように決められるのか。
 借主が施行再建マンションへの入居を希望しない場合には、貸主に代わり、建替事業の施行者(通常は「建替組合」)から建物の明渡しに伴う補償金が支払われるのか否か。
 質問3.について ― 建替えの決議がなされたり、建替組合が設立されても、借主の借家権は当然には消滅しない。その場合の借主の権利としては、建替事業の施行者(通常は「建替組合」)に申し出ることにより施行再建マンションに入居することができることである(マンションの建替えの円滑化等に関する法律第60条第4項)。しかし、入居を希望しない場合には、借主の借家権は施行再建マンションの権利変換の期日に消滅し、借主に対し補償金が支払われる(マンションの建替えの円滑化等に関する法律第56条第3項、第75条第1号)。これにより、その時点で借主はマンションを立ち退くことになる。このように、借主の権利は貸主に対する請求というよりも、建替事業の施行者への請求というかたちに変わるのであるが、もし従前の貸主が施行再建マンションの区分所有者になり、権利変換後も引き続き貸主として居室を貸すというのであれば、その工事の完了の公告の日までに新たな賃貸条件を当事者間で話し合うことになる(マンションの建替えの円滑化等に関する法律第83条第1項・第2項)。しかし、貸主が区分所有者にはなるが、その新しいマンションには自分が住むというようなことにでもなれば、その場合には貸主としてはその前の段階で賃貸借契約を終了させ、借主に立ち退いてもらわなければならない。したがって、そのような場合には、たとえば貸主から借主に対し一定の立退料等を支払うことによって円満に契約を終了させ、建物を明け渡してもらうということも考えられるが、一方で貸主があらかじめ(期間満了1年前から6か月前までの間に)借主に対し更新拒絶の通知をしたり、解約の申入れをしていた場合には、その建替えの決議等があることが「正当事由」として認められる可能性があるので、そのような場合には必ずしも立退料等の支払いによる円満立退きの方法がよいのかどうかは一概に言えない。あくまでもその時点における当事者の意思によるということであろう。

参照条文

 マンションの建替えの円滑化等に関する法律第56条(権利変換を希望しない旨の申出等)
   第14条第1項の公告又は個人施行者の施行の認可の公告があったときは、施行マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者は、その公告があった日から起算して30日以内に、施行者に対し、第70条第1項及び第71条第2項の規定による権利の変換を希望せず、自己の有する区分所有権又は敷地利用権に代えて金銭の給付を希望する旨を申し出ることができる。
   (略)
   施行マンションについて借家権を有する者(その者が更に借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)は、第1項の期間内に施行者に対し、第71条第3項の規定による借家権の取得を希望しない旨を申し出ることができる。
  〜⑦ (略)
 同法第60条(区分所有権及び敷地利用権等)
   権利変換計画においては、第56条第1項の申出(注)をした者を除き、施行マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者に対しては、施行再建マンションの区分所有権又は敷地利用権が与えられるように定めなければならない。組合の定款により施行再建マンションの区分所有権及び敷地利用権が与えられるように定められた参加組合員に対しても、同様とする。
(注) 区分所有者の権利変換を希望しない旨の申出
   (略)
   権利変換計画においては、第1項の規定により与えられるように定められるもの以外の施行再建マンションの区分所有権及び敷地利用権並びに保留敷地の所有権又は借地権は、施行者に帰属するように定めなければならない。
   権利変換計画においては、第56条第3項の申出(注1)をした者を除き、施行マンションの区分所有者から施行マンションについて借家権の設定を受けている者(その者が更に借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けている者)に対しては、第1項の規定により当該施行マンションの区分所有者に与えられることとなる施行再建マンションの部分について、借家権が与えられるように定めなければならない。ただし、施行マンションの区分所有者が第56条第1項の申出(注2)をしたときは、前項の規定により施行者に帰属することとなる施行再建マンションの部分について、借家権が与えられるように定めなければならない。
(注1) 借家権を有する者の借家権の取得を希望しない旨の申出
(注2) 区分所有者の権利変換を希望しない旨の申出
 同法第75条(補償金)
   施行者は、次に掲げる者に対し、その補償として、権利変換期日までに、第62条の規定により算定した相当の価額に同条に規定する30日の期間を経過した日から第68条第1項の規定による権利変換計画又はその変更に係る公告(以下「権利変換計画公告」という。)の日までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額に、当該権利変換計画公告の日から補償金を支払う日までの期間につき権利変換計画で定めるところによる利息を付したものを支払わなければならない。この場合において、その修正率は、国土交通省令で定める方法によって算定するものとする。
   施行マンションに関する権利又はその敷地利用権を有する者で、この法律の規定により、権利変換期日において当該権利を失い、かつ、当該権利に対応して、施行再建マンションに関する権利又はその敷地利用権を与えられないもの
   隣接施行敷地の所有権又は借地権を有する者で、この法律の規定により、権利変換期日において当該権利を失い、又は当該権利の上に敷地利用権が設定されることとなるもの
 同法第83条(借家条件の協議及び裁定)
   権利変換計画において施行再建マンションの区分所有権が与えられるように定められた者と当該施行再建マンションについて第60条第4項本文の規定により借家権が与えられるように定められた者は、家賃その他の借家条件について協議しなければならない。
   第81条の公告の日までに前項の規定による協議が成立しないときは、施行者は、当事者の一方又は双方の申立てにより、審査委員の過半数の同意を得て、次に掲げる事項について裁定することができる。
    賃借の目的
    家賃の額、支払期日及び支払方法
    敷金又は借家権の設定の対価を支払うべきときは、その額
  〜⑦ (略)

監修者のコメント

 重要事項説明としては、回答のとおりであるが、建替えの具体的な動きがまだない段階でも、建替えの噂があることを知った以上、仲介業者としては、その噂じたいの告知義務があると考えるべきである。建物賃貸借について極めて短期の定期借家は別として、多くの賃借人は、更新を前提とした長期の居住を前提として入居するのが通常で、いつになるとしても建替えが近くあり得るのが分かっていれば借りなかったということがあり得る。すなわち、業者の告知義務を規定した宅建業法47条1号の宅建業者の相手方等(顧客)の「判断に重要な影響を及ぼすこととなる」事項に該当するからである。

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