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1908-B-0262掲載日:2019年8月
売主の瑕疵担保責任に関する売主からの契約解除の可否
土質の良くない土地の売買を媒介するにあたり、土地の瑕疵についてのトラブルを避けるために、売主からも契約解除ができるようにしたいが、できるか。このような土地について調査義務違反を問われないようにするためには、どのような調査をすればよいか。
事実関係
当社は、このたび土質のあまり良くない河川沿いの土地(約5,000㎡)の売買の媒介をすることになった。
買主は、そこに配送センターをつくることにしており、倉庫以外の一部の建物(事務所棟)は鉄筋コンクリート造・5階建ての建物にする予定である。そのため、売主としては、土地を引渡したあとの土地の瑕疵によるトラブルを避けるために、一定の場合には、売主からも売買契約を解除することができるようにしたいと、当社に申し入れがあった。
なお、土質の調査については、売主は行わず、土地の引渡し後、買主が自己の負担で行うこととし、そのための調査費用相当額をあらかじめ売買代金から控除するということで、双方が合意をしている。
質 問
1. | そもそも、売主の瑕疵担保責任の問題に関し、売主から契約の解除ができるのか。媒介業者としては、どのように対応したらよいか。 |
2. | 本件の取引において、媒介業者が調査義務違反に問われないようにするためには、どのような調査をすればよいか。 |
回 答
⑴ | 質問1.について ― 売買の目的物に瑕疵が発見された場合に、売主からも売買契約を解除することができるとする特約は、原則として有効である。ただ、問題はその瑕疵がどの程度のものであれば解除ができるのかをある程度明確にしておかないと、その解除権の行使が有効なのかどうかといったトラブルの発生が考えられる。 したがって、貴社の対応としては、本件の特約・解除を有効なものとするためにも、売主も契約を解除することができるとする「瑕疵」が、たとえば、買主が土質の調査をした結果、その土地が土壌改良を必要とし、その期間が一定期間以上にわたるとか、一定額以上の費用がかかるなど、買主自身も売買契約を解除するであろうと考えられるような場合であることを具体的に定めておくことが望ましいであろう。 |
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⑵ | 質問2.について ― 本件の取引において、媒介業者が調査義務違反に問われないようにするためには、少なくともその土地の歴史(洪水被害の有無など)と、可能であれば近隣土地における建築物・工作物の工法等(基礎の深さなど)についての調査を行い、もし役所に土質についての資料やハザードマップなどがあれば、その資料についての説明も必要となろう。 なお、本件の土地が準工業地域や工業地域に存在している場合には、たとえば、過去にその土地や隣接地に工場等が建っていた場合は、どのようなものを扱う工場等であったかなどの調査が必要になってくることは言うまでもないことである。 |
参照条文
○ | 民法第570条(売主の瑕疵担保責任) | |
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。 | ||
○ | 同法第566条(地上権等がある場合における売主の担保責任) | |
① | 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。 | |
② | ③ (略) |
監修者のコメント
売買契約をはじめ契約一般には、「契約自由の原則」があり、当事者が自由な意思で合意した内容は原則として有効である。ただ、自由な合意を認めることが正義・公平の観点あるいは社会公共的見地からみて容認できない場合は、法律によって特別に効力を否認している。特別法でなくても、民法解釈上「公序良俗」「信義則」などの一般条項によって合意の効力を認めないこともある。
本ケースにおいて、土地の瑕疵が発見されたような一定の場合は、売主からも解除できるという特約は、買主もそれで良いと認識して契約した以上、有効と解して差し支えないと解される。契約において、双方からの解除原因を特約したり、一定の解除条件を定めることは、民法の一般条項や他の特別法に抵触しない限り、契約自由の範ちゅうに属するものであり、本質問の約定もそれらの法規に抵触しないと考える。ただ、売主からの解除のみ認め、買主の解除は認めないなど極めて不公平な特約の場合は、信義則などの適用により約定の効力が認められないという余地があるにすぎない。
なお、調査義務違反を問われないための方策は、回答の内容で万全である。