不動産相談

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不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
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1902-B-0256
売主が消費税課税業者の場合、建物分の固定資産税等清算金に消費税が課税される根拠

 当社は売買の媒介業者であるが、不動産の売買契約に伴う固定資産税の清算をするときに、売主又は買主から清算金額は税金の清算でないか、税金であれば清算金に消費税が課税されるのはおかしいのではないかと問われることがある。

事実関係

 当社は宅建業者であるが、一般法人が所有していたビルの売買の媒介をした。買主は不動産経営を考えていた個人であるが、投資用の収益物件を購入するのは初めてである。残金決済を2週間後に控え、当社から買主に対して所有権移転に必要な書類及び残代金額、固定資産税等の清算金等を記載した明細書を通知したところ、買主は、固定資産税及び都市計画税の清算額が間違っているのではないかと連絡してきた。売買契約書には、固定資産税等を含む公租公課等の分担について、引渡完了日の前日までの分は売主の負担、引渡完了日以降の分を買主の負担とし、起算日は1月1日として、引渡完了日に清算する旨を約定している。売買契約の際の重要事項説明書には、売買代金以外に売主・買主間で授受される金銭の額として、固定資産税等の清算金の額を記載して説明している。記載した金額は、売主に通知されている固定資産税等の納税通知書により当該年の金額を引渡予定日を基準日として売主、買主に按分して、買主の負担する金額を記載した。
 当社は、売主が消費税課税事業者のため、固定資産税等の清算金額のうち、建物分の清算金額に消費税額を加算した額を明細書に記載したところ、買主は、固定資産税や都市計画税の税金に対して消費税を加算するのは二重課税であり、不当ではないかと主張している。都心に近い場所に所在するビルであり、固定資産税分の清算金の消費税の額も多額で買主の負担も大きい。

質 問

 不動産の売買契約において、売主が課税事業者の場合に買主が負担する固定資産税等の清算金に消費税が課税される根拠を知りたい。

回 答

1.  結 論
 固定資産税等の課税対象資産の譲渡の際に固定資産税等の未経過分に相当する金額は、譲渡資産の譲渡金額の一部とされるため、売主が課税事業者であれば、清算金額のうち建物に相当する割合の金額に消費税が課税される。
2.  理 由
 固定資産税及び都市計画税は、土地や建物の所在する市区町村が1月1日時点の土地や建物の所有者に対して賦課する税金である(地方税法第343条、同法第359条、同法第702条、同法第702条の6)。課税時点後に所有者が代わっても課税関係は変動せず、新所有者が納税義務を負担するのではなく、あくまで納税義務者は1月1日の所有者である。そのため、売買契約の際は、売主の不動産の所有期間が1年にも満たないにもかかわらず、全額の税額を支払うのは不合理であるところから、通常、不動産売買では固定資産税等相当額の清算が行われる。引渡日を基準として、売主、買主で按分して未経過分に相当する金額を買主が売主に支払う。清算についての法律上の規定はなく、いわば不動産取引の慣行・慣習である。
 清算の仕方は、1月1日を起算日とする場合と4月1日の場合があるが、関東では1月1日、関西では4月1日とすることが多い。1月1日を起算日とするのは所有者に課税されるのが1月1日であることを基礎とし、4月1日は納税期間の始期が4月以降となることを理由としているとみられる。清算期間の基準日は引渡完了日を境にして、完了日前日までの分は売主の負担、完了日以降を買主負担としている。日割り計算することが多いが、月割りで清算することもあり、当事者の合意で自由に設定することができる。清算しない合意も有効であり、必ず清算しなければいけないわけではない。売買当事者が、固定資産税等の清算金を固定資産税等の清算と認識していても、売主に租税徴収権や求償権が生じるものではなく、売主の未経過固定資産税等相当額(清算金)の受領は、あくまで取引当事者間の契約によって初めて生じるものとされている(【参照裁決】参照)。
 そして、不動産売買に伴い、売主が当該不動産に対して課された固定資産税等相当金額を清算して収受する金額は、売買金額と別に収受する場合であっても、その清算金額は売買代金に含まれるとされている(消費税法基本通達10-1-6)。売主の譲渡所得の総収入に加算され、買主の購入対価、つまり売買代金の一部となる。
 清算金額は売買代金の一部であり、売主が課税事業者であれば、買主との間で授受される清算金は消費税の課税対象となる(消費税法第28条)。売主の収受する清算金額のうち土地の割合に相当する金額は、土地の対価であり消費税法上は非課税売上であるが、建物の割合に相当する金額は課税売上となる。
 このように固定資産税等の清算金は、売買代金に加えられるので、厳密に言えば媒介業者が受取ることのできる報酬額の算定基準に含まれる。また、売買契約書に貼付する印紙税額に影響を与える場合がある。

参照条文

 消費税法第28条(課税標準)
 課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額を含まないものとする。以下この項及び次項において同じ。)とする。ただし、法人が資産を第4条第4項第2号に規定する役員に譲渡した場合において、その対価の額が当該譲渡の時における当該資産の価額に比し著しく低いときは、その価額に相当する金額をその対価の額とみなす。
   (以下略)
 消費税法基本通達10-1-6(未経過固定資産税等の取扱い)
 固定資産税、自動車税等(以下「固定資産税等」という。)の課税の対象となる資産の譲渡に伴い、当該資産に対して課された固定資産税等について譲渡の時において未経過分がある場合で、その未経過分に相当する金額を当該資産の譲渡について収受する金額とは別に収受している場合であっても、当該未経過分に相当する金額は当該資産の譲渡の金額に含まれるのであるから留意する。
 地方税法第343条(固定資産税の納税義務者等)
 固定資産税は、固定資産の所有者(質権又は百年より永い存続期間の定めのある地上権の目的である土地については、その質権者又は地上権者とする。以下固定資産税について同様とする。)に課する。
  〜⑨ (略)
 同法第359条(固定資産税の賦課期日)
 固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とする。
 同法第702条(都市計画税の課税客体等)
 市町村は、都市計画法に基づいて行う都市計画事業又は土地区画整理法に基づいて行う土地区画整理事業に要する費用に充てるため、当該市町村の区域で都市計画法第5条の規定により都市計画区域として指定されたもの(以下この項において「都市計画区域」という。)のうち同法第7条第1項に規定する市街化区域(当該都市計画区域について同項に規定する区域区分に関する都市計画が定められていない場合には、当該都市計画区域の全部又は一部の区域で条例で定める区域)内に所在する土地及び家屋に対し、その価格を課税標準として、当該土地又は家屋の所有者に都市計画税を課することができる。
   (略)
 同法第702条の6(都市計画税の賦課期日)
 都市計画税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とする。

参照裁決

 広島国税不服審判所平成14年8月29日(要旨)
 地方税法の規定によれば、固定資産税等は、その賦課期日である毎年1月1日現在において、固定資産課税台帳に所有者として登録されている者に対して課されるものであり、賦課期日後に所有者の異同が生じたからといって、課税関係に変動が生じるものではなく、賦課期日後に資産の所有者となった者は、固定資産税等の納税義務を負担するものではない。
 また、当該資産の譲渡当事者間においても、固定資産税等を納めた譲渡人が、譲受人に対し、未経過固定資産税等相当額の求償権を取得するものでもない。
 そうすると、固定資産税等の未経過分名目での金員の授受は、当事者間の契約によって、初めて生じる債権債務関係に基づいてなされるものであって、これを未経過固定資産税等相当額の求償と評価することは現行法上できないから、立替金の清算という実質を有するものとはいい得ない。
 一方、固定資産税等の未経過分名目での金員の授受は、所有期間に応じて固定資産税等を按分計算により清算するのが公平だとの譲渡当事者間の意識に基づいてなされるものと思われるが、譲渡人はその意識を背景に当該金員の授受を持ち掛け、譲受人はこれに応じたにすぎないものと認められるから、その性質は売買条件の一つにほかならない。(中略)
 固定資産税等は、地方税法の規定から明らかなように、毎年1月1日を賦課期日としてその年の4月1日から始まる年度分の税として課税されるものであって、所有期間に対応して課税される建前にはなっていないのであるし、仮に、固定資産税等が期間コストの性質を有することを理由に、所有期間を観念するにしても、その場合の所有期間がいつからいつまでを指すかについて、地方税法は全く示していないのであるから、地方税法の解釈上、日割りによる不当利得返還請求権を導き出す余地はない。(中略)
 固定資産税等の未経過分名目での金員の授受が取引慣行となっていようとも、また、取引当事者が、これを固定資産税等の清算と認識していようとも、これによって譲渡人に租税徴収権や求償権が生じるものではなく、未経過固定資産税等相当額の受領は、あくまで取引当事者間の契約によって初めて生じるものにすぎないのであるから、これを譲渡所得の課税対象から除外する解釈はなし得ない。

監修者のコメント

 不動産売買に伴う固定資産税・都市計画税の清算については、回答のとおり当該年分について引渡日を基準として、按分することが殆んどである。そこで、そのような取扱いが税法あるいは何らかの法令で決まっていると誤解している人も多い。しかし、その取扱いは【参照裁決】も言うようにあくまでも売買当事者の合意に基づくものである。したがって、この清算合意(約定)をしなければ、当然には、買主が按分して負担することにはならない。稀ではあるが、媒介業者が清算の約定を契約者に書くことを失念し、契約後、当事者とトラブルになることがあるので注意されたい。
 また、1月1日起算と4月1日起算のいずれかによって、双方の負担金額が異なる場合があるので、当事者が納得できるよう丁寧な説明をする必要がある。

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