不動産相談

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不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1810-R-0194
賃借人の滞納賃料を保証会社が代位弁済した場合、賃貸借契約の賃借人の債務不履行は解消されるか

 賃貸借契約において、賃貸人は、家賃保証会社を利用している。賃借人の滞納があったため、賃貸人は、保証会社の代位弁済により、賃料相当分の支払を受けているが、賃借人の滞納が継続している。賃貸人は、滞納している賃借人との間の賃貸借契約を解除することができるか。

事実関係

 当社は、賃貸の媒介兼管理業者である。1年前に期間を2年間とする賃貸マンションの賃貸借契約の媒介をした。賃貸借契約は、賃貸人の希望もあり、賃借人の連帯保証人を立てない場合は、家賃債務保証会社(以下「保証会社」。)を利用することも認めることにしたものである。ところが、賃借人は、賃貸借契約の開始直後から、賃料の不払が始まり、当社は管理会社として、賃借人に賃料支払の督促をした。入居開始から半年間は、毎月1、2か月遅れながらも、賃借人は賃料の支払をしていたが、延滞が続くので、賃貸人は保証会社との賃貸借保証契約に基づき、保証会社に代位弁済(家賃相当分の立替払)を請求し、保証会社から家賃相当分の支払を受けている。保証会社との契約では、保証会社は賃借人の債務を最大で賃料の12か月相当分を保証するものであるが、賃借人は、その後も滞納が続き、現在では5か月間の滞納となっている。
 賃貸人は、このままでは、安定的な家賃の入金の確保は難しいと考え、当社に対し、賃借人との賃貸借契約を解除したいと相談されている。

質 問

1.  賃貸人と保証会社の間の保証契約に基づき、賃借人の滞納賃料5か月分を、保証会社が代位弁済により賃貸人に支払ったときは、賃借人には賃貸人に対する賃料不払はなくなったと言えるか。
2.  賃貸人は、賃借人との間の賃貸借契約を解除し、賃借人に対し建物の明け渡しを要求することができるか。

回 答

1.  結 論
 保証会社が賃借人の滞納賃料を代位弁済により賃貸人に支払ったとしても、賃借人の賃貸人に対する賃料不払いは継続していると解される。
 長期間の賃借人の賃料不払により、信頼関係は破壊されたと言える可能性があり、賃貸人は、賃貸借契約を解除できる可能性が高いと考える。
2.  理 由
について
 賃貸借保証契約は、保証会社が賃借人の賃貸人に対する賃料支払債務を保証し、賃借人が賃料の支払を怠った場合に、保証会社が賃貸人に約定の保証限度額内で賃借人の賃料相当分を、賃貸人に支払うものである。保証会社が賃貸人に代位弁済した賃料相当額は、保証会社が賃借人に対し求償することになる。
 保証会社の賃貸人への賃料支払により、賃貸人に対する賃借人の支払債務は、見かけ上は解消されているかのようであるが、賃貸借保証委託契約に基づく保証会社の賃貸人への賃料支払は代位弁済であって、賃借人による賃貸人への賃料の支払ではない。賃借人の賃貸人に対する賃料の滞納状態は継続していると言える。
について
 賃貸人が要求している賃借人の債務不履行による賃貸借契約の解除について判断する場合、保証会社が代位弁済したかどうかは考慮せずに、賃料滞納の常態化により信頼関係が破壊しているか判断すれば足りると解され、賃貸人は、賃貸借契約の解除および建物明渡請求をすることが可能である(【参照判例】参照)。
 保証会社の活用は、賃貸人にとっては、賃借人に賃料滞納があっても、賃借人から収受する賃料相当額が確実に得られるという、借主の家賃不払リスクを軽減でき、賃借人にとっても、不動産の賃借が容易になる可能性が高くなる等、双方に利点がある。昨今の経済環境や核家族化、非正規雇用等の雇用形態の変化、職場・親類付合い希薄化や金銭保証の敬遠等、個人保証人の引き受け手の減少、保証人の責務が果たせない保証人の増加等の社会的背景により、賃貸借契約において、保証人に代わる保証会社の利用が徐々に広がっている。

参照条文

 民法第601条(賃貸借)
 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
 同法第620条(賃貸借の解除の効力)
 賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合において、当事者の一方に過失があったときは、その者に対する損害賠償の請求を妨げない。

参照判例

 大阪高裁平成25年11月22日 判時2234号40頁(要旨)
 本件保証委託契約のような賃貸借保証委託契約は、保証会社が賃借人の賃貸人に対する賃料支払債務を保証し、賃借人が賃料の支払を怠った場合に、保証会社が保証限度額内で賃貸人にこれを支払うこととするものであり、これにより、賃貸人にとっては安定確実な賃料収受を可能とし、賃借人にとっても容易に賃借が可能になるという利益をもたらすものであると考えられる。
 しかし、賃貸借保証委託契約に基づく保証会社の支払は代位弁済であって、賃借人による賃料の支払ではないから、賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するに当たり、保証会社による代位弁済の事実を考慮することは相当でない。なぜなら、保証会社の保証はあくまでも保証委託契約に基づく保証の履行であって、これにより、賃借人の賃料の不払という事実に消長を来すものではなく、ひいてはこれによる賃貸借契約の解除原因事実の発生という事態を妨げるものではないことは明らかである。

監修者のコメント

 回答に掲記の大阪高裁の事案は、賃料の不払いが12か月分もあり、また賃料保証会社の求償にも応じていないという事情を斟酌しての結論であるが、賃料保証会社の支払いは代位弁済であって、それによって債務不履行が解消されるわけではないという論理はおそらく異論のないところと考えられる。ただ、代位弁済した保証会社の求償に賃借人がすぐ応じたとか、賃料の不払い自体にやむを得ない事情があったとか、一定の事情によっては信頼関係がまだ破壊されたとはいえないケースもあり得るので、この裁判例を代位弁済が行われたケース一般に普遍化して当然解除も認められると解するのは必ずしも適切ではない。

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