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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
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1808-B-0248
業者売主の場合の残金決済前の買主のリフォーム工事と宅建業法との関係

 宅建業者が売主で宅建業者以外の者が買主となる売買契約において、買主の希望により買主が残金決済前にリフォーム工事を行う場合の売主のリスクヘッジの方法として、買主に債務不履行があった場合のリフォーム工事の出来形部分の所有権放棄と、売買代金の20%相当額の違約金を定めた場合、それらの約定は宅建業法に抵触するか。契約の当事者は、リフォーム工事の途中で手付解除をなし得るか。

事実関係

 当社は宅建業者であるが、先日、不動産流通推進センターの相談員に、一般個人間の売買で、買主の希望により買主が残金決済前にリフォーム工事を行う場合の売主のリスクヘッジの方法を聞いた。
 その際、相談員から、買主に債務不履行があったときは、買主の原状回復義務を免除するため、リフォーム工事の出来形部分の所有権を買主が放棄するようあらかじめ約束させる方法を提案された。

質 問

1.  上記【事実関係】にある所有権放棄条項は、宅建業者が売主で宅建業者以外の者が買主となる取引において、違約金の額を売買代金の20%相当額とする違約金条項を定めたときであっても、有効か。
2.  上記のリフォーム工事が行われている最中の手付解除は認められるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.については原則として、有効と解される。
 質問2.については認められるが、当事者間で特段の定めをしていない限り、各当事者にリフォーム工事に関する原状回復義務が残ると解される(民法第545条)。したがって、買主が手付解除をする場合にはリフォーム工事の出来形部分の所有権放棄条項が生きるが、売主が手付解除をする場合には、その間に買主が投下したリフォーム工事の費用相当額については、原則として売主に別途賠償義務が生じると解される(同条第3項)。
2.  理 由
について
 宅建業法は、宅建業者が売主で宅建業者以外の者が買主となる売買契約においては、当事者の債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、または違約金を定めるときは、これらを合算した額が売買代金の20%を超えることとなる定めをしてはならないと定めている(宅建業法第38条)。
 しかし、本件の所有権放棄条項は、一般に契約の解除により買主に生じた原状回復義務を免除するための条項であり、買主の利益になる条項であるから、売主に対する損害賠償の額を予定したり、違約金を定めるというものではないので、宅建業法に抵触するものではなく、原則として有効と解される。
について
 手付解除は、宅建業者が売主で宅建業者以外の者が買主となる売買契約においても、その契約の相手方が履行に着手するまでは、いつでも行うことができる(宅建業法第39条)。本件の場合には、買主のリフォーム工事の着手が履行の着手に当たるかが問題となるが、リフォーム工事そのものは通常売主が関与しないところで、それも売買契約とは別個の契約により行われているものであるから、それがいかに売買契約に付帯して締結された契約だとしても、売買契約上の履行の着手にはなり得ないし、またリフォームのための事実上の建物の引渡しについても、本来の売買契約上の引渡しではないので、買主は手付解除をなし得ると解されるからである。
 このように、売買契約の当事者は、相手方が履行に着手するまではいつでも手付解除がなし得るのであるが、問題は、手付解除をした場合に、リフォーム工事についての原状回復の問題が残るということである。なぜならば、リフォーム工事の契約は、買主が建築業者と締結するものであるが、その工事を売主が許諾している以上、売主・買主双方にその原状回復義務があると考えるべきだからである。
 なお、手付解除の場合の民法第557条第2項の規定は、本件のような契約形態で行われるリフォーム工事後の手付解除の場合には、原則として適用されないと解される。

参照条文

 民法第545条(解除の効果)
 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
   前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
   解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
 同法第557条(手付)
 買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
   第545条第3項の規定は、前項の場合には、適用しない。
 宅地建物取引業法第38条(損害賠償額の予定等の制限)
 宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の十分の二をこえることとなる定めをしてはならない。
   前項の規定に反する特約は、代金の額の十分の二をこえる部分について、無効とする。
 同法第39条(手附の額の制限等)
 宅地建物取引業者は、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の十分の二をこえる額の手附を受領することができない。
   宅地建物取引業者が、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手附を受領したときは、その手附がいかなる性質のものであっても、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手附を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
   前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。

監修者のコメント

 手付解除の場合は、損害賠償の問題が生じないという民法第557条第2項の規定は、本件のようなリフォーム工事の原状回復の問題とどう関わるのか、ひとつの問題である。回答のとおり、リフォーム工事は売買契約とは別の契約の問題であるから、売主からの手付倍返しによる解除のときは、売主に賠償義務が生ずると解するのが正しいと思われるが、解除までに行われたリフォーム工事の費用が、手付倍返しによる買主の利得すなわち手付金相当額に比べ、はるかに少ないという場合は、同じように別途賠償義務があると結論づけてよいか争われる余地はある。

より詳しく学ぶための関連リンク

“スコア”テキスト丸ごと公開! 「原状回復義務」

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