不動産相談

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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1802-R-0184
媒介業者による賃貸人の資力信用調査の必要性

 抵当権の設定されている賃貸物件を媒介したが、その後、抵当権が実行され、競売によりこの物件を第三者が取得したため、賃借人は明渡しを余儀なくされた。その際、賃借人に敷金返還がなされなかったため、賃借人は当社に対して、媒介業者における賃貸人の資力調査不足を理由に敷金相当額の損害賠償を求めてきた。

事実関係

 当社は賃貸物件の媒介業者である。2年前に、事業用ビル1棟を所有する賃貸人(法人)と、ビルの1室を事務所として利用する賃借人(法人)との間で、賃貸借契約を締結した。しかしこの度、賃貸人である法人が倒産し、抵当権が実行され、ビルが競売となり、第三者によって競落された。そのため賃借人は、競落して6か月後には賃借物件を明け渡さなくてはならなくなり、契約時に賃貸人に預託した敷金は返還されなかった。
 賃借人は、当該物件には抵当権が複数設定されていたのであるから、媒介業者は賃貸人の倒産を予期できたはずで、賃貸人の抵当権者に対する支払い状況や資力等に関し、調査して契約時に説明すべきっだったのにしなかったとして、当社に敷金分の損害賠償を請求してきた。
 なお、当社は、賃貸借契約時に、賃貸借物件には賃貸人を債務者とする複数の抵当権が設定されている旨を重要事項説明書に明記しており、賃借人に口頭でも説明している。

質 問

1.  媒介業者は、抵当権が設定されている賃貸借物件について、物件を所有する賃貸人の資力や債権者に対する支払い状況について調査し、重要な事項として賃借人に説明をしなければいけないのか。
2.  媒介業者は、賃貸借物件の抵当権実行により競落されたときは、賃貸人の資力等の調査不足による不法行為により、賃借人に対してその損害を賠償しなくてはいけないのか。

回 答

1.  結 論
 媒介業者は、賃貸人の抵当債務についての支払い状況や資力等の経済的信用性について、疑うべき事情がない限り調査する義務を負っていない。したがって、賃借人に説明すべき重要な事項にはあたらない。
 原則的には、媒介業者は賃借人に対し、賃借物件の競落により賃借人に発生した損害を賠償する義務はない。
2.  理 由
について
 媒介業者は、賃貸借の取引の際は、重要事項として、取引する宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容を説明すれば足りる(宅地建物取引業法第35条第①項)。賃貸人に債権者から抵当権実行である差押や競売開始決定等が迫っていたり、当該物件の賃料債権が一般債権者から差押えられていたり、または賃貸人の経済力が著しく低下し債務の返済に支障をきたしていたり等の状況を知り得ない限り、媒介業者には、賃貸人の資力や返済能力について調査したり、賃借人に説明する義務はない。
 判例においても、「不動産業者が債務者である賃貸人や債権者への債権債務の内容や履行状況の聞き取りは困難」として、そこまでの調査義務はないとしている(【参照判例】参照)。
について
 上記の通り、媒介業者は、特別な事実を知り得ない限り、賃貸人の資力について調査する義務はない。取引時においては、登記されている抵当権等の権利の種類と内容を記載して重要事項として説明すればよい。よって、賃借人のいう不法行為には当たらず、取引で生じた損害を賠償する義務はないと考える。
 なお、抵当権が実行され、競売により第三者へ所有権が移ることはあり得ることである。宅建業者を当事者としない限り、賃貸借物件に抵当権が設定されているときは、「抵当権が設定されており、その抵当権が実施され、競売による買受人から明渡しを求められたときには、6か月の期間内に明け渡さなければならならず、賃貸人に預け入れた敷金等については返還されない」旨を重要事項説明書に記載し、抵当権が設定されている賃貸取引のリスクを賃借人に説明しておくことが必要である。

参照条文

 民法第395条(抵当建物使用者の引渡しの猶予)
 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
 競売手続の開始前から使用又は収益をする者
 (略)
 (略)
 宅地建物取引業法第35条(重要事項の説明等)
 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
 当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあつては、その名称)
~十四 (略)
〜⑤ (略)

参照判例

 東京地裁平成19年6月5日判決(要旨)
 不動産業者に調査義務を課したとしても、賃貸人とその抵当権者等の間の債権債務の内容や履行の状況を探るには根抵当権者等からの聴取調査が必須と考えられるが、根抵当権者等は被担保債権の債務者でない不動産業者の聞き取りに対しては、根抵当権者の照会でないと応じないか、又は少なくとも根抵当権者等の同意を得ない限り、不動産業者の調査に応じないことが予想されるから、そのような義務を不動産仲介業者に認めることは困難と言わざるを得ない。

監修者のコメント

 賃貸借の対象となる不動産に抵当権が設定されているケースは、何ら珍しいことではない。しかし、抵当権の設定登記のある不動産を媒介する宅建業者に、その抵当権の被担保債権に関する状況を調査せよ、ということは不可能を強いることになる。したがって、回答のとおり、媒介業者には原則として、当事者の資力・信用についての積極的な調査義務はない、ということができるが、少なくとも賃貸人の経済的状況が悪化していることを知っていたとか、容易に知り得たという場合は、それにより質問のようなケースで賃借人に損害が生じたのであれば、損害賠償責任発生の余地がある。
 したがって、宅建業法で要求されている重要事項説明において、必要最小限の登記事項の他に、その抵当権の存在による効果すなわち万が一の場合の法的効果を説明しておくことが望ましい。

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