不動産相談

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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1712-B-0239
分筆前の土地の一部の売買契約の可否

 当社は売買の媒介業者であるが、土地の所有者から土地の一部の売却を依頼されている。売却する土地は入り組んでいる複数の筆にまたがり、複数筆のそれぞれの一部土地を新たに一つの区画として売却する。土地の取引は一筆単位でないと土地の特定も面積も分からないと思うが、土地の分筆をしてなくても売買契約をすることができるのか。

事実関係

 当社は都市近郊で営業を行っている不動産売買の媒介業者である。土地の購入希望者に土地を紹介しているが、条件に合う物件が見つからないでいたところ、地元の地主が土地の売却を依頼してきた。地主は近隣に複数の土地やアパートを賃貸し、不動産からの所得で生計を立てている。地主は賃貸マンションの建築を計画しており、建築資金の捻出のために所有している土地の一部を売却する。地主の希望している土地の位置と面積は購入希望者とも合致し、売買契約に向けて交渉しているところである。地主の所有している土地は、土地の所在地番が入り組んでいるため、筆ごとの土地表示ができない。売却予定の土地は、後記の概略図のとおり、3筆の土地にまたがっており、それぞれの一部を併せ、角地の方形の区画の状態にして引渡す予定である。

質 問

1.  土地の分筆前に、一部土地の売買契約を締結することができるか。
2.  一筆の土地の一部を売買することができる場合、重要事項説明書及び売買契約書にはどのように記載するのか。

回 答

1.  結 論
 売買の対象である土地が具体的に特定されていれば、一筆の土地の一部の売買契約ができる。また、買主が売主に代金全額を支払えば、分筆登記前でも、買主は当該土地の所有権を取得することができると解されている。
 土地測量図や概略図面に売買対象土地の位置を明確にした上で、重要事項説明書及び売買契約書等には、売買対象土地の『所在地番の一部』として、筆ごとの面積及び合計面積を記載する。
2.  理 由
について
 民法では、一個の物の上には同じ内容の物権は一つしか成立しないという一物一権主義という基本原則がある。土地の所有権は土地の所有者に帰属し、その所有権に他人の所有権が同時に成立することはない。自分の所有権にありながら、他人の所有でもあるということはないのである。一つの不動産に複数の所有者が共有者としていることがあるが、複数人が持分権を共有しているとされ、所有権が複数存在する状態ではないと解され、一物一権の概念に反するものでないとされている。
 また、不動産には抵当権が付されていることが多い。所有権としての物権と抵当権という物権は、同じ内容の物権ではなく、一つの不動産上に両物権が存在することは認められている。抵当権が複数存在することもあるが、同順位のものはなく、必ず順位が付されており、異なる物権とみることができる。不動産に関する一物一権主義の例外として、集合住宅等の区分所有権がある。一棟の建物を、複数所有者がそれぞれの部屋を所有権として所有する形態である。区分所有法は民法の特別法として制定され、特別法が優先される(区分所有法第1条)。
 一筆の土地の一部を所有者が、所有者以外に売却することは、一見、物権である所有権が複数人になり、一物一権主義に反するように思えるが、土地は連続した平面の一部を権利の客体(所有権)として客観的、人為的に区分した土地の一筆として登記簿に表示するものを一単位として個数を確定したものである。土地の売買においては、一筆の土地の単位が必ずしも取引の目的とは限らず、必要とされる範囲の土地を取引当事者が自由に定めることができる。売買契約に定める目的物や広さ、現地の状況等から判断される一区分を対象とする場合には、必ずしも一筆単位が売買対象とは限らない。裁判例でも、「一筆の土地を区分して、その土地の一部を売買の目的とすることはでき」、「買主は、売買の当事者間において、具体的に特定していれば、分筆していなくても土地の一部の所有権を取得することができる」としている(【参照判例①】参照)。売買目的の土地が当事者間で特定していることが必須であるが、特定していれば、土地の一部だけ所有権を移転するということが可能である。
 なお、土地の一部の所有権の移転はできても、それを登記することはできず、第三者に対する対抗力は発生しない。対抗力を持たせるためには、土地の一筆を分筆した上で買主名義に所有権移転の登記をする必要がある。相談ケースのように、複数筆の土地からそれぞれ一部売買して分筆登記した場合は、新たな地番としての3筆が生じるが、分筆後にその3筆を合筆登記して一筆の土地の表示にすることもできる。
 反対のケースで、土地の取引において、二つの借地が一筆であった場合、塀等で明確に区分されていたときは、一つの借地についての売買において目的物の地番(一筆)を記載したときでも、一方土地の売買としては認められるが、他方土地を含んだ売買として認めることは、経験則上是認することができないというべきである(【参照判例②】参照)とされているので注意が必要である。
について
 一筆の土地の一部が売買契約の対象になる場合は、前記のとおり、売買対象部分の位置及び面積を特定する必要がある。契約地番は、売買対象土地である3筆すべての地番の一部とし、面積は3筆の合計を記載する。事前に測量ができ、各筆の売買対象部分の面積が確定しているときは、売却対象の一部土地の面積も記載した方がよいであろう。測量する場合は、売買対象部分の予定分筆線を記入したものを重要事項説明書及び売買契約書にも添付する。事前に測量をしないときは、媒介業者が、土地の概略図を作成の上、分割予定線を記載し、売買対象部分を明確にし、添付することになる。対象部分には、囲み線を入れ色塗りまたは斜線等で明確にしておく。そして、現地には仮杭等を設置するなどして売買対象位置を明確にしておくことが必要であろう。
 また、媒介業者は、契約時には面積が確定していないため、測量の上面積を確定したとしても売買契約上の代金で決済(公簿売買)するのか、確定面積で実測精算をするのかを、当事者の意向を確認した上で約定しておくことも必要である。更に、実測売買や分筆登記をするのであれば、売主は、残代金支払いまでに測量図を作成・交付、分筆登記する旨、また、隣地が他の所有者の場合、隣地所有者の協力が得られないなどの理由で測量図が交付されない場合の取扱いについて約定をしておくことも必要である。

参照条文

 民法第176条(物権の設定及び移転)
 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
 同法第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
 同法第555条(売買)
 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
 建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第1条(建物の区分所有)
 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。

参照判例①

 最高裁昭和30年6月24日 判タ50号25頁(要旨)
 一筆の土地といえども、これを区分して、その「土地の一部」を売買の目的とすることはできる。そして右「土地の一部」が、売買の当事者間において、具体的に特定している限りは、分筆手続未了前においても、買主は、右売買によりその「土地の一部」につき所有権を取得することができる。

参照判例②

 最高裁昭和61年2月27日 判タ601号43頁(要旨)
 一筆の土地の一部(以下「甲部分」という。)が右土地のその余の部分(以下「乙部分」という。)から現地において明確に区分され、甲部分は甲に、乙部分は乙にそれぞれ賃貸されたのちにおいて、甲が目的物を当該一筆の土地と表示して売買契約を締結したとしても、他に賃貸されている乙部分を含むとする旨の明示的な合意がされている等の特段の事情のないかぎり、取引の通念に照らして甲部分のみを売買の目的としたものと解するのが相当というべきである。(中略)他に特段の事情のないかぎり、甲が本件係争地(乙部分)を含む土地を買い受けたものと認めることは、経験則上是認することができないというべきである。

監修者のコメント

 本相談ケースの売買においては、できるだけ契約前に売買対象部分を分筆したうえで、売買契約書も重要事項説明書にも確定した登記簿上の地番を記載することが望ましい。測量をしないまま、図面と現地における何らかの措置をしただけでの売買契約締結は、面積または境界をめぐる紛争が潜在化している。

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