不動産相談

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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1702-R-0171
賃貸人側管理業者の希望により、賃借人の鍵の返還時期が明渡日から遅れた場合、賃借人は延期期間分の賃料を支払わなければならないか

 当社は賃貸の媒介業者である。当社が紹介した賃借人が退去するが、賃貸人側管理業者の希望により、鍵の返還が、賃借人の通知した退去予定日から1週間遅くなった。賃貸人側管理業者は、延期した期間の賃料相当分を請求してきた。

事実関係

 当社は賃貸の媒介業者である。2年前に期間2年の居住用賃貸マンションの媒介をした賃借人が期間満了で更新せずに退去したが、賃借人から、退去時における賃貸借契約書の条文の解釈について相談されている。賃借人は、マンションを一括管理している管理業者に、満了日の1か月前に契約解除の申し入れをし、満了日の7日前には家財等を撤去したうえで、建物を明渡し、鍵を返却する旨を通知した。管理業者は、その日は他の業務があり、立会と鍵返却を1週間後にしてほしいとの要請があったので賃借人も了承した。賃借人が管理業者の都合により鍵の受取日を指定した満了日の7日後に管理業者に鍵を返還したところ、賃借人は、管理業者から、満期日である退去予定日を1週間過ぎているので、満了日の翌日から鍵の返還日までの、家賃及び管理費相当の7日分を日割計算した金額を請求されている。
 契約書の条文には、賃料について、「1か月に満たない期間の賃料は、1か月を30日として日割計算した額とする」としか記載されておらず、退去日と鍵の返還までの期間のズレの負担について特段明記されていない。

質 問

 賃借人が通知した退去日と、賃貸人又は管理業者に実際に鍵を返還した日とに期間のズレがあるときは、賃借人は、鍵の返還日までの賃料相当分を支払わなければいけないのか。

回 答

1.  結 論
 賃借人は、事前に通知した明渡予定日には鍵の返還が可能であったといえる。実際に返還をした日は、賃貸人側(管理業者)の都合により遅くなったのであり、通知した明渡日から鍵を返還した日までの日割り賃料相当分の金額を支払う必要はない。
2.  理 由
 賃借人が退去するときは、賃借人は、予め、賃貸人に対し、文書または口頭により退去日を通知したうえで、退去日までに家具や造作等の撤去、残存物の処理をし、公共料金等の精算をして明け渡す。また約定により、賃借人は、原状回復工事も明渡日までに完了しておくことが必要である。原状回復工事については、退去時に賃貸人と賃借人が立会い、費用分担額を双方が合意し、賃貸人が工事を実施するケースも多い。
 鍵等の賃貸人から貸与されたものについては、通知した明渡予定日である退去・明渡を確認したとき、または、退去立会の際に返還するのが通常である。
 当然ながら、賃借人が、賃貸人に対し通知をした明渡日に、建物内に家具や残存物があれば、賃借人の明渡は完了していないことになり、賃貸人は、賃借人に対し、明渡完了日までの賃料相当分を請求することは可能である。賃貸借契約の約定により、賃貸人がすべき原状回復が未了の場合も同様に請求可能である。
 賃借人が、建物内の家具等を撤去し原状回復も終了していれば、賃貸人への建物明渡が可能である。賃借人が鍵を返還する準備も整い、賃貸人は、これによって、建物の事実的支配を取得できる状態にあり、その時点で建物を明け渡したと解されている。賃貸人の希望により、実際の賃貸人の鍵の受領が遅れたとしても、鍵の返還できる状態となれば、その時点が明渡と認められる(【参照判例】参照)。
 別の言い方をすれば、賃借人は、建物明渡し準備を完了し、退去と鍵返還の日を賃貸人側に通知した段階で、債務の履行を提供しているのであり、これが実現しなかったのは、賃貸人側の都合による、いわゆる「受領遅滞」であるので、賃借人が責任や金銭的負担を負う理由はないことになる。

参照判例

 東京地裁平成25年8月30日 (要旨)
 賃借人は、平成○○年12月25日頃、同月31日限り、鍵を返還する旨を申入れ、同日までに本件建物内に賃借人が設置した造作・備品等をほぼすべて撤去して退去し、賃貸人に鍵を返還する準備を整えていたのであるから、賃貸人は、これによって、本件建物の事実的支配を取得したものというべきである。よって、賃借人は、同日限りで、賃貸人に対して本件建物を明け渡したものということができる。
 なお、賃貸人が鍵を受領したのは翌年1月10日であるが、これは、賃貸人の希望によるものであるから、上記判断を左右しない。

監修者のコメント

 ある者に権利があるか、ある者に義務があるかを判断する基準は、直接の法規範がなければ、「正義・公平」である。本ケースの延期日数分の賃料支払義務いかんは、回答のとおり、期間満了日に明渡しが完了したと価値判断することができ、支払義務はないとみることができる。しかし、そのような解釈を措いても、鍵の返還が遅れた理由に鑑みれば、管理業者の請求は、「正義・公平」の観点から到底認められるものではない。

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