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売買事例 1612-B-0224
相続人のいない不動産の共有者が死亡した場合の共有持分の帰趨

 不動産売却の相談を受けている。売却予定物件は持分共有であるが、共有者の1人が亡くなった。その人は相続人がいないので、共有持分は他の共有者に帰属すると考えてよいか。

事実関係

 当社は不動産売買の仲介業者であるが、顧客から一戸建の売却の相談を受けている。その一戸建は、相談者と義理の姉との共有名義である。元々、この一戸建は、義姉の夫である、相談者の兄が所有していたが、数年前に兄が亡くなり、兄夫婦には子がいないため、配偶者である義姉と、2人兄弟の弟である相談者が法定相続分で相続した。持分は、土地、建物とも、義姉が4分の3、相談者が4分の1の共有となっている。
 最近、一戸建に1人で住んでいた義姉が亡くなった。相談者は別の場所に自宅を所有しており家族と住んでいるため、義姉の住んでいた一戸建は、今後、利用する予定はないので売却することを決めた。義姉の両親はすでに他界し、兄弟姉妹もいないため、相続人はいない。相談者によれば、義姉は、遺言書を残していないようだ。

質 問

1.  共有不動産の一方の共有者が亡くなり、その共有者に相続人がいない場合、共有者の不動産持分は、他の共有者に帰属すると考えてよいか。
2.  相続人のいない死亡した共有者の不動産持分が、他の共有者に帰属しない場合があるのか。
3.  亡くなった義姉に相続人がいないことを戸籍謄本等で確認すれば、共有者は相談者のみなので、相談者と媒介契約を締結してもよいか。
4.  亡くなった共有者の持分が、他の共有者へ所有権移転されるには、どのくらいの期間がかかるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ―必ずしも、死亡した共有者の不動産持分が、他の共有者に帰属するとは限らない。
 質問2.について ― 遺言による受遺者、相続債権者、特別縁故者がいるときは、他の共有者に優先する。
 質問3.について ― 媒介契約は、裁判所による一定の手続終了後に締結しなければならない。
 質問4.について ― 裁判所へ相続財産管理人選任の申立をしてから、共有持分が他の共有者へ帰属するまでは、少なくとも1年の期間がかかるとされている。
2.  理 由
⑵について
 被相続人に相続財産があるときは、通常、被相続人に相続人がいれば、その相続人が相続財産の一切の権利義務を承継する(一身に専属したものは除く)。相続財産である不動産に共有者がいても、被相続人に相続人がいれば、その相続人が、不動産の持分を承継する。他の共有者は、共有者だからと言って相続の影響を受けることはない。なお、被相続人に相続人や共有者等が存在しない場合には、裁判所による一定の手続を経た後に、なお残った相続財産が国庫に帰属することになる。
 不動産の共有者が死亡し、戸籍上の法定相続人は存在しないが、他の共有者がある場合、共有者の持分はどのような取扱いになるのかが、従前、裁判上も学説上も分かれていた。共有者の持分は、「直ちに他の共有者に帰属する」のか「一定の手続きを経たのちに他の共有者に帰属する」かの両論である。
 前説は、民法第255条の規定は、「死亡して相続人がいないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」とされ、相続財産が共有の不動産のみで、相続人が存在しないときには、直ちに他の共有者が持分を引継ぐことができ、相続財産管理人の選任や手続も必要ないとの解釈である。
 後説は、「特別縁故者に対する相続財産の分与(同法第958条の3)後に、処分されなかった相続財産が国庫に帰属する(同法第959条)」と民法は規定している。そのため、相続人がいない場合、共有財産が、他の共有者に帰属する時期は、裁判所による一定の手続を経た後であるとの考え方である。
 この両論に対し、最高裁は、特別縁故者への財産分与の方が、民法第255条の規定に優先すると判示した。亡くなった共有者の相続人が不存在であったときでも、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了し、裁判所による特別縁故者への財産分与をしなかった又は分与をしても共有持分が相続財産に残存することが確定したときにはじめて、他の共有者に帰属することになると解すべきとした(【参照判例】参照)。
 従って、受遺者や相続債権者に対する清算手続、特別縁故者に対する財産分与の手続きを経て、なお共有持分が残存する場合に、共有者へ帰属することになる。
 なお、区分所有建物であるマンションの敷地は、区分所有者が共有しているが、専有部分と敷地利用権の分離は、原則、禁止されている(建物の区分所有等に関する法律第22条)。区分所有者に相続が発生し、相続人や受遺者、特別縁故者等がいない場合でも、土地の共有持分は他の共有者に帰属することはない。民法第255条の適用除外であり、国庫に帰属することになる(同法律第24条)。
⑷について
 被相続人に、法定相続人がいない場合でも、相続債権者や受遺者への弁済及び特別縁故者への財産分与を行う必要がある。被相続人の共有持分を他の共有者へ帰属させるときも、同様の手続が必要である。国庫への帰属又は他の共有者への帰属するための手続は家庭裁判所において行うが、手続の概略は次の通りである。帰属までの期間は少なくても1年はかかるとされている。
〈1〉 家庭裁判所に対する相続財産管理人選任の申立(民法第952条第1項)
〈2〉 相続財産管理人選任の公告(同法第952条第2項)
  ※公告期間2か月。
〈3〉相続債権者及び受遺者に対する請求申出の公告(同法第957条第1項) 
  ※公告期間2か月以上。なお、知れている債権者には各別に催告。
〈4〉相続人捜索の公告(同法第958条)
  相続人の不存在を確定させる。  ※公告期間6か月以上。
〈5〉特別縁故者の財産分与の申立(同法第958条の3)
申立期間は、相続人捜索公告の期間満了日の翌日から3か月以内。
〈6〉分与の審判もしくは申立却下の審判(同上)
〈7〉特別縁故者に対する分与財産の引渡(同上)
〈8〉残余財産の国庫への引継ぎ(同法第959条)

参照条文

 民法第255条(持分の放棄及び共有者の死亡)
 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
 同法第951条(相続財産法人の成立)
 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
 同法第952条(相続財産の管理人の選任)
   前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。
   前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。
 同法第957条(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
   第952条第2項の公告があった後2箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、2箇月を下ることができない。
 (略)
 同法第958条(相続人の捜索の公告)
 前条第1項の期間の満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、相続財産の管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、6箇月を下ることができない。
 同法第958条の2(権利を主張する者がない場合)
 前条の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人並びに相続財産の管理人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使することができない。
 同法第958条の3(特別縁故者に対する相続財産の分与)
   前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
   前項の請求は、第958条の期間の満了後3箇月以内にしなければならない。
 同法第959条(残余財産の国庫への帰属)
 前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第956条第2項の規定を準用する。
 建物の区分所有等に関する法律第22条(分離処分の禁止)
   敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
  ・③ (略)
 同法律第24条(民法第255条の適用除外)
 第22条第1項本文の場合には、民法第225条 (同法第264条において準用する場合を含む。)の規定は、敷地利用権には適用しない。

参照判例

 最高裁平成元年11月24日 判タ714号77頁(要旨)
 共有者の1人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その共有持分は、他の相続財産とともに、法第958条の3の規定に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産分与がされず、当該共有持分が承継すべきもののないまま相続財産として残存することが確定したときにはじめて、法第255条により他の共有者に帰属することになると解すべきである。

監修者のコメント

 相続財産法人が成立し、相続財産管理人が選任されるのは、「相続人のあることが明らかでないとき」であるが(民法第951条)、これには、「相続人のないことが明らかであるとき」も含まれると解されている。なぜなら、相続人のないことが明らかである場合について民法は何ら規定していないし、そもそも理論的には相続人が出現する可能性が絶対にないとは言い切れないからである。従って、本ケースのように「相続人のいないとき」も、相続財産法人が成立し、その管理人が選任され、回答にあるような手続きが進められることになる。
 なお、これに関連して、しばしば誤解されるのが、相続人が行方不明や生死不明の場合である。相続人がいることは、戸籍上明らかであるが、その者が行方不明とか生死不明のときは、民法第951条の適用はなく、不在者の財産管理の規定(民法第25条以下)または失踪宣告の規定(民法第30条以下)により処理することとなる。

より詳しく学ぶための関連リンク

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