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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
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売買事例 1610-B-0221
媒介依頼を受けた不動産を、宅建業者が買い取り、転売することの是非

 不動産の売買仲介を中心に営業活動をしているが、時折、売却の媒介依頼者から当社にて買い取ってほしいとの要望が寄せられる。買取り希望の理由は様々ではあるが、不動産売却による早期の資金確保を理由としたものが多い。当社が媒介依頼を受けている物件を当社が買い取って転売することに、問題はないか。

事実関係

 当社は、不動産の媒介業者である。売却の媒介依頼を受けている不動産の所有者から、当該不動産を当社にて買い取ってほしいとの要望が寄せられた場合には、当社が買主となってその不動産を買い取ることもある。そのような不動産にはマンションや一戸建てが多く、買取り後は設備を入れ替えたり、内装リフォームをしたりした後に、消費者へと売却している。
 現在、媒介契約している一戸建てで売却に時間がかかってしまい、売買契約に至っていないものがある。売主は、事業資金捻出のために売却を希望しており、早期に資金を確保したいという希望を持っているようだ。そこで当社としては、売主に対して当社が購入するべく買取り金額を提示してみようと考えている。
 当社の買取り金額は、相場の60%程度の価額を考えている。売主には仲介手数料を払う必要がなくなるためその相当額、当社の販売経費と利益、物件を売却できるまでの期間リスクなどを鑑み、それらを査定価額から差し引いて、相場の60%程度という買取り金額をはじき出した。

質 問

 所有者から土地建物の売却の媒介を依頼されたが、その不動産を当社が買い取った後にリフォーム工事をしないまま第三者へと転売することに、問題はあるか。

回 答

1.  結 論
 購入価格や説明の仕方いかんによっては問題がある。媒介を依頼された宅建業者は、「売買契約によるべき合理的根拠」(【参照判例①】)がない限り、不動産を買い取り、売主となって第三者に売却する取引はすべきではなく、媒介契約で取引をすべきである。
2.  理 由
 宅建業者の売買業務として、媒介取引のほか、宅建業者自らが不動産を購入することもある。宅建業者が不動産を購入する目的は、建物を買い取ったのちにリフォームして転売したり、土地を一括して買い取ったのちに分割して販売したりということもある。これは、いわゆる買取転売(買取仲介、買取再販ともいう)である。買取りは自ら買い取るケースと、同業の宅建業者や宅建業者であるリフォーム業者が買主となる場合がある。宅建業者が媒介したものを、いったん別の宅建業者が買取業者として間に入り、その業者が再仲介をして売却する、いわゆる業界で転がしと言われるものもある。かつてバブル時には、このようにして購入価額と売却価額の利ザヤを抜くこともあった。
 宅建業者が売主から売却依頼を受けた不動産を宅建業者みずからが購入して転売することは、売主である不動産所有者にとっては、早期に売却可能で確実性も高いというメリットがある。特に中古住宅であれば、建物の傷みが目につくようであれば、消費者にはなかなか売りづらい面もあるため、売主にとってリフォーム等の手間がなく確実に売却できる買取転売は、必ずしも違法とはいえない。実務で多くの宅建業者が商行為として買取転売を行っていることからも、自明である。
 しかし、違法とはいえないまでも、業者の購入価額と転売価額の差額があまりにも開きすぎている場合は、その妥当性が問題となることがある。媒介依頼された売主から宅建業者が依頼物件を廉価で買い取り、即日、隣家を買主として高値で転売したことが妥当であるかが争われた裁判において、「(売買契約は、)媒介契約によらずに売買契約によるべき合理的根拠を具備する必要」があるとし、「これを具備しない場合には、宅建業者は、売買契約による取引ではなく、媒介契約による取引に止めるべき義務があるものと解するのが相当である」との判断を示した。また、この裁判で、宅建業者が媒介ではなく売買契約にした合理的根拠として主張した、①スピード(契約から決済までの時間の短縮)、②確実性(代金一括支払い。解約リスク等の低さ)、③安心感(瑕疵担保責任等売却後の紛争発生リスクの低さ)は、それまでの宅建業者の仲介行為の経過等の事実関係により退けられた。宅建業者が媒介依頼に対し売買契約したことで本来の仲介手数料額(宅地建物取引業法第46条)を超える販売差益を得たことに対し、信義誠実義務違反(同法第31条)にあたるとし、不法行為に基づく損害賠償(民法第709条)の支払いを命じた(【参照判例①】参照)。
 また、他の宅建業者を買主兼売主として転売に介在させることで、両取引の仲介報酬を二重に利益を得ようとした宅建業者が、買主兼売主となった宅建業者に対して報酬を請求した裁判において、その行為に対し、「信義に反し、権利の濫用として許されない」と支払いの請求を棄却した判例(【参照判例②】参照)がある。
 いずれにしても、宅建業者が買取転売をする際には、買取価格の妥当性はもとより、依頼された物件の市場性、買取りの相当性、依頼者の事情や状況、業者が買い取ることに依頼者の十分な理解・納得があるかなど、合理的根拠を具備していることが必要である。依頼者へは、価格水準を十分説明し、依頼者の了解を得る必要がある。
 また、他業者との共同で中間業者となる場合も同様であり、ひとたび問題が起これば共同不法行為者にされてしまう危険性もあるので、注意が必要である。宅建業者による買取価格に近い価額まで媒介での売却価額を下げることを依頼者が了解するのであれば、買い手がつき、媒介で売却できる可能性はずいぶんと高まるであろう。ゆえに、媒介依頼者に対しては、媒介を基本に業務を進めてゆくことが、宅建業者にとってもトラブルを避けることにもなり、それが本筋であろう。

参照条文

 民法第415条(債務不履行による損害賠償)
 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
 同法第703条(不当利得の返還義務)
 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
 同法第709条(不法行為による損害賠償)
 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 宅地建物取引業法第31条(宅地建物取引業者の業務処理の原則)
 宅地建物取引業者は、取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行なわなければならない。
   (略)
 同法第46条(報酬)
 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
   宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。
  ・④ (略)

参照判例①

 福岡高裁平成24年3月13日 判タ1383号234頁(要旨)
 宅建業者が、その顧客と媒介契約によらずに売買契約により不動産取引を行うためには、当該売買契約についての宅建業者とその顧客との合意のみならず、媒介契約によらずに売買契約によるべき合理的根拠を具備する必要があり、これを具備しない場合には、宅建業者は、売買契約による取引ではなく、媒介契約による取引に止めるべき義務があるものと解するのが相当である。

参照判例②

 浦和地裁昭和58年9月30日 判タ520号166頁(要旨)
 不動産仲介業者が転売利益と仲介報酬の二重の利益を得る転売の方法によって仲介依頼者に法定の仲介報酬以上の負担をさせ、よって、仲介業者が同業者に利得させることは、仲介依頼者の犠牲において不動産仲介業者相互間で利得を図ることを許容することになりかねないのであって、それでは宅地建物取引業法第46条1、2項の規定の趣旨が没却されることになる。

監修者のコメント

 宅建業者に不法行為責任を認めた回答にある【参照判例①】は、媒介依頼を受けた宅建業者が売主と協議の上、売却価格を1,500万円と決定したが、その検討と併行し、買主を探索していたところ、隣地所有者が2,100万円で買いたい旨の申出があったため、売主と購入予定者にその全容を明らかにしないで、媒介依頼を受けた宅建業者が自ら1,500万円で買い取る契約を締結し、同じ日に2,100万円で隣地所有者に売却する契約を締結したという事案であった。この判決も、業者の買取仲介が一切違法だとしたわけではなく、媒介契約によらず売買契約にするには、そうすべき合理的根拠が必要とし、この事案はその合理的根拠がなく、差益の600万円から媒介報酬想定額である72万4,500円を控除した527万5,500円の損害賠償を不法行為を理由として認めた。
 質問のケースも、依頼者が媒介業者に買い取って欲しいとか、媒介業者の買取希望を依頼者が承諾し、その価格が相場からみて不相当でなければ問題はない。ただ、このようなケースで、何らリフォーム工事をしないまま、転売した場合、あとでその転売価格を知った元の売主からクレームを受け、トラブルになることもあるので、買取りに当たって合理性をもった十分な説明が必要である。

より詳しく学ぶための関連リンク

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