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賃貸事例 1610-R-0166
賃貸借契約における更新後の保証人の責任

 賃貸借契約で、更新時に保証人に保証の意思確認をしなかったときは、保証人には、賃借人の債務を履行する責任はないのか。

事実関係

 当社は、賃貸の媒介業者である。3年前、当社は期間2年の建物賃貸借の媒介をしたが、賃貸人から、賃借人が更新してしばらくしてから賃料を支払わなくなり、延滞賃料が5か月にのぼっているとの連絡を受けた。契約更新の際は、賃貸人と賃借人が直接更新合意書を交わしたが、賃貸人から保証人には、更新後も保証人が保証するかどうかについて、特段連絡せず意思確認もしなかったようだ。
 賃貸人は延滞賃料の支払いを賃借人に督促したが、賃借人が支払わないため、保証人に連絡して賃料を支払うよう督促をした。しかし、保証人は、当初の賃貸借契約に関しては保証人となることを同意しているが、更新後も保証することについては同意していないため、滞納賃料を支払う責任は、自分にはないと言っている。

質 問

1.  期間の定めのある賃貸借契約の連帯保証人は、賃貸人と賃借人との間で賃貸借契約を更新する際に、保証人として保証を継続することを承諾していなくても、賃借人の保証人として、責任を負わなければいけないのか。
2.  保証人が賃貸人から賃借人に賃料延滞があることを知らされていないうちに、延滞賃料額が過大になってしまった場合でも、保証人は賃借人の延滞賃料全額を支払わなければならないのか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 賃貸借契約の際に、賃貸人と保証人が賃借人の債務を保証する連帯保証契約をした場合、更新後は連帯保証人の責任を免れるとの約定がないかぎり、更新後も連帯保証契約の効力が及び、保証人は、更新後に生じた賃借人の債務を負う責任があると解されている。
 質問2.について ― 原則、保証人は連帯保証契約に基づき、賃借人の延滞賃料等の債務を支払う義務がある。しかし、賃貸人が保証人に対して、賃借人の賃料延滞の事実を長期間通知しないうちに、延滞賃料が過大となってしまった場合は、一定の額を超える賃借人の債務を負わない場合がある。
2.  理 由
について
 賃貸借契約における保証人の責任は、主たる債務者である賃借人がその債務である賃料の支払いを履行しないときには、その債務の履行の責任を保証人が負うという立場である(民法第446条)。連帯保証人となった場合には、主たる債務者と同等の責任を負い、債権者は、直接連帯保証人に履行を請求することもできる。なお、連帯保証人には、催告、検索の抗弁権がない(同法第454条)。
 賃貸借契約で、個人が連帯保証人となる場合、別書面(連帯保証人確約書等)によらず賃貸借契約書に連帯保証人も署名捺印することが多いが、保証期間については特に定めることはしない。更新時の更新契約書または更新合意書の保証人欄には、「原賃貸借契約同様」等と記載し、保証人の保証継続の意思確認をしない場合がある。このような保証人の保証継続の意思確認をしない更新の場合、更新後の保証人の保証は有効に継続するかどうかが問題になる。賃貸借契約の連帯保証を行った場合、特段の事情がないかぎり更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを負う(【参照判例①】参照)とされており、保証人は賃借人の延滞賃料を支払う義務がある。期間の定めのある賃貸借契約であっても、通常は更新を繰り返すことにより賃貸借期間が長期になる場合も多々あり、そもそも賃貸借は、期間延長が予定されているともいえる。更新時に改めて保証人の保証意思の確認をしなかったとしても、賃貸借契約に、更新後は連帯保証人の責めを免れるとの明示がない限り、保証人は更新後に生じた賃貸借に基づく賃借人の債務についても責任があると解されている(【参照判例②】参照)。
について
 保証人が、賃借人の賃料債務を支払う義務は、連帯保証契約により連帯保証人は賃借人本人と同等の責任を負っている。賃貸人の中には、保証人が賃借人に代わり賃料の支払いをすることを期待して、賃料滞納が続いても、保証人に対して通知も督促もしないことがある。確かに保証人は、賃借人が履行しない債務を代わって履行しなければならないが、社会通念に照らし延滞賃料の支払の請求が許容されない場合がある。賃借人が賃料を長期にわたり滞納しているにもかかわらず、賃貸人が保証人にその旨を通知せず、賃貸人が賃借人と更新を繰り返すなどした場合は、連帯保証人の保証責任が無制限となりかねない。判例では、賃借人の賃料の支払いがないまま、保証人に何らの連絡もなしに賃貸借契約が期間2年として2回も合意更新されることは、社会通念上ありえないとし、更新2回目以降に生じた滞納家賃分については保証人の責任はないとした(【参照判例②】参照)ものがある。このように賃貸人の保証人に対する債務の履行請求が、信義則上、容認されない(民法第1条第2項)場合がある。
 賃借人に滞納が生じたときは、賃貸人は保証人に通知し、家賃の支払いを賃借人と保証人の双方に促す等の早めの対応が求められる。賃貸人から管理を請け負っている宅建業者としても、賃借人の賃料支払いには注意を払い、滞納家賃が過大にならないうちに、保証人に対しても通知や支払いの督促をするなど迅速に処理することが要求されよう。

参照条文

 民法第1条(基本原則)
 (略)
   権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
   (略)
 同法第446条(保証人の責任等)
 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
   保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
   (略)
 同法第452条(催告の抗弁)
 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。
 同法第453条(検索の抗弁)
 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。
 同法第454条(連帯保証の場合の特則)
 保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。

参照判例①

 最高裁平成9年11月13日 判時1633号81頁(要旨)
 期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のために保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解するのが相当であり、保証人は、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れないものというべきである。

参照判例②

 東京地裁平成6年6月21日 判タ853号224頁(要旨)
 本件賃貸借は当然に更新が予定されていたもので、保証人においても、本件賃貸借が2年で終了することなく、更新されることを承知して連帯保証人になったものと認められる。とすれば、更新後は連帯保証人の責めを免れるとの明示のない本件においては、保証人は更新後に生じた本件賃貸借に基づく債務についても責任があると解される。もっとも、賃借人の賃料の支払いがないまま、保証人に何らの連絡もなしに賃貸借契約が期間2年として2回も合意更新されるとは、社会通念上ありえないことで、保証人がかかる場合にも責任を負うとするのは、保証人としての通例の意思に反し、予想外の不利益を負わせるものである。(中略)更新2回目以降の本件賃貸借に基づく債務について保証人は保証人としての責任は負わないというべきである。

監修者のコメント

 更新後の保証人の責任については、回答掲記の最高裁判例によって特に一定期間だけという特約がない限り、更新後の契約書を作成しなかったとき、あるいは更新後の契約書には賃貸人と賃借人が署名押印して、最初の契約書のときのよう保証人が署名押印していないときでも、保証人の責任は継続するという解釈が確立した。
 もっとも、このような責任の有無の争いを避けることは簡単にできる。最初の賃貸借契約書あるいは保証人確約書等に「本件(連帯)保証人は、本件賃貸借契約が更新された場合、更新後も保証責任を負うものとする」旨の条項があれば、保証人は争う余地がないものとなる。その1カ条によって裁判例のような争いは回避できる。

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